生誕250周年「1か月でベートーヴェンの32曲のピアノ・ソナタと16曲の弦楽四重奏曲と9曲の交響曲をぜんぶ聴く!」⑧

8日目「ピアノ・ソナタ第11番変ロ長調から第15番ニ長調までを聴く!」

ピアノ・ソナタ、弦楽四重奏曲、交響曲の57曲を出版順に聴いていくこの投稿ですが、1~4日目は10曲のピアノ・ソナタ、5・6日目に6曲の弦楽四重奏曲、7日目に2曲の交響曲を聴いてきました。この1週間で、3つのジャンルをひととおり聴いて作曲家としてのベートーヴェンの魅力を味わうことができたと思います。8日目はふたたびピアノ・ソナタです。

1.ピアノ・ソナタ第11番変ロ長調作品22

みずみずしいメロディーが静かに始まって、快活に展開されていきます。この曲で特徴的なのは、両手を使ったユニゾンが多いこと。ユニゾンとは同じ音を同時に奏でることですが、この効果で音に厚みが増しています。第1楽章は16分音符が多く、早いテンポでさわやかに展開されていきますが弾くのがむずかしそうです(笑)。この曲も第2楽章が充実していて、美しいフレーズが連綿と歌われていきます。親しみやすいメヌエットの第3楽章、おだやかなメロディーの第4楽章と、全体として親しみやすい1曲です。

2.ピアノ・ソナタ第12番変イ長調作品26

第3楽章に「ある英雄の死を悼む葬送行進曲」という副題がつけられていることから、『葬送』と呼ばれることもある曲です。美しい主題で始まる第1楽章は、そのメロディーが5つに変奏されていくスタイルの変奏曲です。快活でリズミカルな第2楽章のあと、葬送行進曲の第3楽章になります。ヨーロッパでの葬儀の場面で、故人の死を悼みながら棺とともに歩んでいくような構成で厳粛な気持ちにさせられます。第4楽章は、跳ねるようなフレーズがめまぐるしく展開していきます。

3. ピアノソナタ第13番変ホ長調作品27-1『幻想曲風ソナタ』

この曲は、次に聴く『月光』と呼ばれるピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調作品27-2といっしょに出版されました。2曲ともにベートーヴェン自身が「幻想曲風ソナタ」と名づけたと言われており、ソナタよりも自由な幻想曲をめざしたように思われます。静かに始まって、おちつきのあるフレーズが次第に盛り上がりを見せる第1楽章、リズミカルでスタッカートが印象的な第2楽章と美しいメロディーの第3楽章はともに短く、いきいきと躍動感にあふれている第4楽章がつづけて演奏するように指定されています。ここでも瞑想するような第3楽章と第4楽章のコントラストが見事です。

4.ピアノソナタ第14番嬰ハ短調作品27-2『月光』(通称)

「ベートーヴェンの『月光』」として有名な曲で、曲に関する印象はいらないかも(笑)。聴いたとたん引きこまれてしまう第1楽章とおだやかでリズミカルな第2楽章、激情をそのままぶつけたような第3楽章と曲が進んでいくごとに展開が早くなっていく1曲です。印象的なメロディーが展開されるとともに、たたきつけるようなフォルテが混在としてドラマティックです。まさに、だれにも創造できない作品と言えます。この曲だけでもぜひ味わってほしいので、またYouTubeで公開されているヴァレンティーナ・リシッツァ(Valentina Lisitsa)というピアニストの演奏のリンクを貼っておきます。


5.ピアノソナタ15番ニ長調作品28『田園』(通称)

『田園』という通称はベートーヴェンの死後、出版社がつけたものと言われています。この通称どおり、全体としてヨーロッパの自然をそのまま音にしたようなおだやかさ、素朴さが味わえる1曲です。ヨーロッパの田園風景といえば緑ゆたかな木々や芝、おちついた色彩の花々とそれを照らすおだやかな陽ざしを思いうかべます。そして季節ごとに表情を変えていくさまをそのまま音にしたような1曲です。ここでも充実した内容の第1楽章と素朴なメロディーが印象的な第2楽章と、短く明快な第3楽章とおだやかなフレーズがリズミカルに展開されていく第4楽章とのコントラストが印象的です。

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