μ-210を双眼RFTにしたい(3)
ELSの登場
2017年になって笠井トレーディングからELSが発売され、状況が大きく変わった。光路延長は不要、さらに、専用レデューサ併用で焦点距離は0.66倍になるという。さらに、ペンタプリズム併用で正立正像にもなる。ニュートンにも使えるので、なかなか出番のなかったMT-130ももう一度活用できるかもしれない。これは試さないわけにはいかない。2018年の年末になってようやく購入した。
ただし、目安としてアイピースの焦点距離(mm)×見かけ視野(°)が1000以上になると蹴られるのこと。手持ちではLavendura 40mm (42°、1680)、Baader Classic Plössl 32mm (50°、1600)、Photon 25mm (60°、1500)では確かに全視野は確保できなかった。タカハシ Or 25mm (44°、1100)、笠井Plössl 20mm (50°、1000)、Baader Classic Ortho 18mm (52°、936)あたりは大丈夫。
ペンタプリズムで正立正像を得る
セットアップは以下の通り。最長焦点位置まで50mm以上の余裕があり、全てのアイピースで合焦はまったく問題ないだろう。
1) Low profileアダプタ (22mm)
2) TeleVue 2インチ - 31.7mmアダプタ(16mm)
3) Kasai ペンタプリズム(120mm)
4) Kasai ELS (0mm)
Total=158mm
これは標準焦点位置の158mm-105mm=53mm接眼側。53mm/16×48mm=159mm、2415mm+159mm=2574mm、F12.3。82%まで短縮。
アミチプリズムでさらに単焦点化
μ-210では焦点位置を前にすれば焦点距離が短くなるのだったから、倒立像さえ我慢すれば、アミチプリズムによってもっと明るくできる。最長焦点位置まで100mm以上の余裕があり、全てのアイピースで合焦はまったく問題ないだろう。このセットアップは以下。
1) Low profileアダプタ (22mm)
2) Baader T2 アミチプリズム (48mm)
3) T2 延長リング (10mm)
4) T2 - 31.7mmアダプタ(20mm)
5) Kasai ELS (0mm)
Total=100mm
これは標準焦点位置の100mm-105mm=-5mm主鏡側。5mm/16×48mm=15mm、2415mm-15mm=2400mm。スタートから76%まで短縮したが、ようやく標準焦点距離に戻っただけで、F11.4とまだまだ暗い。
×0.66レデューサを使う
ELSのもう1つの売りは0.66倍レデューサが使えることである。これを併用すると、計算上はペンタプリズム使用時でfl=1700mm(F 8.1)、アミチプリズム使用時fl=1584mm(F 7.5)となる。これくらいまで明るくなれば、ミューロンにすれば上出来、これで一段落、と思っていた。
ところが、これがうまくいかない。確かに、倍率はそれくらいまで下がっているようだが、片側の視野の鼻側の数割が垂直に切り取られてしまう(写真はBaader Classic Ortho 18mm、右眼側、網戸越し)。左右で影になっている部分の幅は違う。双眼視すると視野中央のいちばん大事なところの何割かに垂直の影が見える。この写真の様子なら、中央部分のわずかな垂直のエリアは左右両方側から光が届くのでそのような影は見えないように思えるが、実際には眼の位置が動くのに合わせて垂直の影が左右に行ったり来たりして、とても見ていられない。これは星像でも同じ。
アイピースの焦点距離を短く、視野を狭くすればこの影は消えるが、レデューサなしの状態くらいにまで倍率を上げないと、そうならない。ダイアゴナルを外しても結果は変わらないし、ニュートン反射で使っても変わらない。ELS用の純正オプションとして販売されているのだが…。他のネットの情報ではそのような報告も見つかっていない。いずれにせよ、ELS用レデューサの道は行き止まりになった。
とはいえ、ELSが画期的であることには変わりはなく、なんとかこれを生かしたい。2インチバージョンが出ればいいのに。