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輪廻独断の裁定とKONMAI語

 この記事を書いた日、つまり2021/06/12は遊戯王オフィシャルカードゲームの新パック、『アニメーションクロニクル 2021』の発売日です。つまり、収録カードの裁定が掲載される日でもあります。その中で、発売前から裁定が問題となっていたカードがあります。そう、『輪廻独断』です。

 遊戯王史上初の『起動効果で/自身以外の/墓地のモンスターの属性を』変更するカードです。しかも厄介なことに永続罠。その上テキストが短くていくつか解釈ができてしまっていました。

 それが確定したのです。

 この記事は以下の記事を前提に書かれています。単独でも理解できるようにはしているつもりですが、こちらを参照するとさらに理解が深まると思います。

1.裁定

 まずは裁定の確認です。公式ページを見ましょう。

https://www.db.yugioh-card.com/yugiohdb/faq_search.action?ope=4&cid=16408

輪廻独断裁定

 まずテキストと効果の解説です。重要なのは4つ目と5つ目の項目。

■『①』の効果の適用後ターン終了時まで、お互いの墓地のモンスターは宣言した種族になります。(この効果の適用後に墓地へ送られたモンスターも、墓地に存在する限り宣言した種族になります。

■『①』の効果の処理時にこのカードが魔法&罠ゾーンに表側表示で存在しなくなった場合、処理は適用されません。ただし、『①』の効果適用後にこのカードが自分の魔法&罠ゾーンに存在しなくなった場合でも、この効果の適用はなくなりません。

 はい。つまり『真竜皇V.F.D.』と同じく効果の適用が残存するタイプです。

 以前の記事では以下のように裁定が変わると可能性を出していましたが、②の方に収まったということですね。

①:効果の処理時に墓地に存在するモンスターにのみ種族変更が適用される(後から墓地に送られたモンスターには適用されない)
②:効果の発動後、そのターン中、墓地に存在する/墓地に送られたモンスター全てに種族変更が適用される

 まずは重要な問題が片付きました。

・『輪廻独断』の効果適用後に墓地に送られたモンスターも、種族は変更される。

2.種族変更の範囲

 次に、種族変更が適用される範囲について見ていきます。今度は各カード毎の裁定です。

輪廻独断裁定2

 ここでの問題は以下の2点です。

①:墓地で種族変更がされたモンスターが墓地を離れた場合、その種族はどうなるか?
②:効果処理中に種族変更が発生して、その後の処理が不可能になる場合でも、カードは発動できるのか?

 裁定は記述の通り。

①:墓地を離れれば種族変更は解除され、元の種族に戻る。
②:カードの発動はできるが、効果適用がされない場合は以降の効果処理は行わない。

 この2点は過去の裁定と一致します。以前の記事で紹介した、エレメントセイバーの属性や、エレメントセイバーと御前試合の関係。あるいはデビリアンソングと高等紋章術の関係。それらと矛盾しません。当たり前の裁定ですね。

・『輪廻独断』の効果を受けたモンスターでも、墓地を離れれば種族は元に戻る。
・効果の発動時に条件を満たしていれば、処理の途中で以降の処理ができなくなっても、効果を発動できる。

3.「このターン」と「ターン終了時まで」

 本題です。本記事の1で述べたように、『輪廻独断』は『真竜皇V.F.D.』と同じく効果が残存するタイプです。以前の記事では「このターン」と「ターン終了時まで」の文言は使い分けられているか微妙なラインだとして、きっちり分割できないと結論づけていました。それが『輪廻独断』の登場で変わるかもしれない、というお話です。

 遊戯王というゲームに於いて、テキストの違いは効果の違い、裁定の違いを意味します。テキストが同じなのに裁定が違うことは稀によくありますが例外として無視します。

 しかし、「このターン」と「ターン終了時まで」は、扱いが異なる、というよりも同じものとして使われていたようでした。同じ処理にどちらの文言がついていても処理・裁定は同じ、というカードが複数見られたからです。それでもぼんやりとした違いを見つけようとするなら、「効果の発動後にも残存する効果・適用される制約に「このターン」が多い気がする」くらいでした。

 では、両者がどのように違うのか。ここからはそれを考えていきます。

 まず、この2つの言葉の語源を考えると、遡れば「エンドフェイズまで」だと考えられます。現在は多くが「ターン終了時まで」に置き換えられた文言ですが、『エフェクト・ヴェーラー』による効果の無効化が切れるタイミングで有名になったでしょうか。まだ遊戯王用語が整理されていない時代は効果処理と制約の両方に使われていた、と記憶しています。

 つまり初期に於いて、両者は同じ文言で異なる意味が付与されていたと考えられます。

 しかし、効果無効化や攻撃力変動のリセットが「ターン終了時まで」に変わったことで、この意味も新しい言葉に変わった。内包する意味は同じまま、言葉が変わったのです。

 「このターン」については『バハムート・シャーク』が最初の衝撃でしょうか。攻撃宣言をした後にも効果を発動できる、効果の発動後に制約がかかるタイプ。「この効果を発動するターン」と「この効果を発動したターン」で違いが発生した要因みたいなカードです。

 両方とも同じようでいて内包する意味が異なる。「ターン終了時まで」が「このターン」の意味も持っていた、と考えられます。そして「ターン」の字が同じなもので混同も起こりやすくなった、のは妄想ですが。

 ここでもう1つ、この問題をさらにややこしくする文言があります。制約を表す文言、「この効果の発動後、(次の)ターン終了時まで」です。基本的に、後ろには「〇〇できない」という打消しがついています。なので「このターン」の亜種と考えることができるのですが、「次のターン」のようにターンを跨ぐ処理でもない限りは意味が重複しています。

 で、あるにもかかわらず、テキストが重複している。これもややこしさに拍車をかけたと考えます。

 このように、遊戯王では「このターン」「ターン終了時まで」「この効果の発動後、ターン終了時まで」が混在しています。それはもう、分類するのが面倒になるほどに。

 なのでこれらのカードでは効果が混在しており、個別裁定に任せるしか判別の手段は無い、と考えていました。

 しかし、『真竜皇V.F.D.』は再録でテキストが変わって分かりやすくなりました。効果の発動後にも効果が残存して適用されるという、『増殖する"G"』のような書き方に変わったのです。つまり、効果が適用されるかどうかをテキスト上で分かりやすく表現できるということです。"●"で区別して「適用」という文言をつけて、後出しにも処理が降りかかる、いわばウイルス地帯のような土地自体にデバフがかかるような処理だと。

 そして、『リプロドクス』や『帝王の轟毅』のように『ターン終了時まで』の場合はカード単位に効果がかかるんだな、と。うまく整理できてるんじゃないかと思いました。

 その上での『輪廻独断』ですよ。「このターン」しか無くて、なのに『真竜皇V.F.D.』と同じように適用される効果だと。その便利なテキストはどこへ行ったんだ。

 こんな短いテキストなんだから同じ形式にしてくれませんかね? それとも今後は「このターン」は「このターン(、以下を適用する。●)」の略として考えればいいんですかね?

 新たな謎も出てきましたが、とはいえだいたいの指標にはなりそうです。今後は「このターン」という文言が出てきたら『真竜皇V.F.D.』と同じように適用される処理かもしれない、と考えるようにしましょう。

・「このターン」は制約だけでなく効果の適用も残存する?

4.あとがき

 『輪廻独断』の裁定を見て、遊戯王用語について考えていきました。多種多様なカードの裏にも歴史と裁定とテキスト修正あり、それを踏まえて現代遊戯王を整備しようとすれば不具合も出てくるでしょう。とはいえ裁定とテキストの対応はきちんと整備してほしいなと思います。

 遊戯王の裁定は摩訶不思議、すべてはKONAMIの手の内です。同音異義語・異音同義語のようにテキストによって裁定が変わり、裁定によってテキストが変わります。カードを使う際はテキストと裁定とQ&Aをよく確認しましょう。


 そういや『ポールポジション』ってどうだったっけな……

ポールポジション裁定

 …………

 やめて! KONAMIの特殊能力で、Q&Aを焼きを焼き払われたら、裁定でカードと繋がってるポールポジションの利用方法まで燃え尽きちゃう!
お願い、死なないでポールポジション! あんたが今ここで倒れたら、遊戯王Wikiや過去の裁定はどうなっちゃうの?
 Q&Aページはまだ残ってる。これを耐えれば、コンマイに勝てるんだから!

次回『ポールポジション死す』。デュエルスタンバイ!

駄文を書くカボチャ。体験を徒然と