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肩たたき券【詩】

せっかくもらった肩たたき券を
なぜ使わないのかって?
たしかに最近
ちょっと肩こりが辛いと思う時がある
しかし今この券を使えば
幼い子どもの力でたたいてもらうのだから
せいぜい気休め程度にしかならない
だが使わずに温存すれば
子どもの成長とともに
券の効果がぐんと増す
価値が上がるとわかっているものを
早まって手放すのは素人のやることだ
あと十年も待てば
野球部なんかで鍛えているかもしれない
今よりもっとたくましくなった
力強い腕っ節でたたいてもらえる
さらに数年待てば
スター選手になった彼の
一般人では考えられない猛打で
この肩こりを粉砕してもらえるかもしれない
ただ、もしスター選手になっているのだとしたら
やはり私は使わないだろう、と思う
その時こそまさに売り時
あの大スターに
肩をたたいてもらえるのなら、と
ファンはいくらでも出すに違いないのだ
いずれ見ず知らずの購入者が
肩をたたいてくれと
突然この子のもとに押しかけてくる
私は陰からそれを盗み見て
金歯を光らせるのだよ

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