スーパーまさおに寄せて(スーパーナトリ裏話)

 まさおに初めて出会ったのは小学5年生の時だった。
 皆さんは「スーパーまさお」をご存じだろうか。スーパーまさおはその名の通りスーパーマリオのパチモンゲームである。Flash全盛期に生まれた(かどうかは知らんけど)それは、他のパチモンゲームと大きく異なる点があった。スーパーまさおは、マリオメーカーよろしく自分でステージを作ってweb上に公開することができた。当時の俺はめちゃめちゃ衝撃を受けた。だってそうでしょ、小学生なんて自由帳に目が回るようなごちゃごちゃした迷路とか、自分で考えたマリオのコースとかを書いたりするものだ。それが本当のゲームを作れるとなったら…。
 このゲームの素晴らしいのは、ステージのみならずグラフィックも自分で編集できるという点だ。小学生ぼくはマウスでパックンフラワーを描いて自キャラとして動かしていた。拡張子の違い(bmpとかgifとか)や透過画像の作り方はこの時親父から学んだ。
 ところでこのまさおというゲームには問題があった。すなわち、まさおはクソゲーだった。いやクソは言い過ぎか。自分で作れるというのは画期的だったが、体力ゼロのオワタ式かつ中間地点などのセーブ要素なしというハードコア仕様で、すぐ敵にぶつかって最初からやり直す羽目になる。それに操作性もイマイチだ。ジャンプがやたら高いし、ボタンを押す長さで高さが調整できたりもしない。俺はいつの間にかまさおをやらなくなった。

 月日は流れて俺は中学生になった。ふと思い出したようにまさおの開発元のサイトを覗いたらめちゃめちゃバージョンアップされていて、新たな要素がたくさん追加されていた。それらをひとしきり堪能した後、俺はリンク集に「スーパーまさお3」なるものを見つけた。3……?
 スーパーまさお3は、スーパーまさおのファンが作った別ゲーだ。細かい話をすると、本家本元のスーパーまさおはjava appletを使ってるのに対し、"3"はexe形式だ!……え???よくわからんけど、要するにすごいのだ。一番の違いは、"3"は体力制を採用していた。もう一発アウトのストレスフルなゲームプレイをしなくていいのだ。他にも"3"ではプレイヤーキャラを5種類の中から選べたり、キャラ毎に足の速さやジャンプ力の高さ、さらに必殺技まで設定できた。しかも当時は開発真っただ中で日々新しい機能が追加されていく。なんだこれは!当然ハマった。

 んで、ドはまりした俺はステージやら自キャラやらをちまちま作り続けて、半年もすればそれなりの量になった。当時の"3"の公開元にあった掲示板では、自分の作品をサイトに乗せてもらう「代理公開」の波が来ていた。そこで中学生俺は「この作ったやつまとめれば一本のゲームになるんじゃね…?俺も代理公開いけるんじゃね…?」と気づいた。足りないものをまとめ上げて処女作を公開した。中2の夏だった。
 俺は相当マリオのゲームをやってきていたので、ステージづくりに関してはめちゃめちゃ丁寧だった。今プレイしてみてもセンスがあると感じる。少なくともその辺のキッズが作ったへなちょこステージよりはまともなものが作れていたと思う。掲示板ではそれなりに好評をもらえた、ような気がする(今はサイトが移転してしまい確かめる術がない)。ノリノリの俺だったが、掲示板のある住民と喧嘩して徐々にサイトに行かなくなった。まさおもあまり触らなくなった。
 とは言っても、折に触れてはサイトを覗いて更新状況を確認したりしていた。パワーを持ってゲーム作りをすることはなかったが、本当にたまにやる気になってちょびっとステージや自キャラを作っては満足していた。
 やがて"3"の公開サイトの更新が止まり、そのうち開発終了が宣言された。俺は大学生になった。管理人はサイトに全く姿を現さなくなった。もう機能が追加されることもないが、それでもたまーに触るぶんには面白いので、ちまちまとステージを作っていた。好きなエロゲのキャラを描いて、初めて人間の自キャラを作ったりもした。どっこい、今作ったこれらは一体どこに公開するんだろうという思いも抱えていた。


 んで時は流れて2018年。処女作を公開してから10年が経ち、俺はバーチャルYouTuberにハマった。最初は某委員長から入って、そんでTwitterで名取さなを知った(カウントダウン雑魚やユル様がめちゃめちゃヌォンタート描きまくってたのから興味を持った)。生配信でコメントとプロレスするのが面白くて好きになった。で、2018年はVの者のファンゲームを作るのが流行っていた。それらを見て、「あれ、俺昔こういうのやったことあるぞ」と思った。気づいたら名取さな.pngができていた。手元にはこの10年間で作ったステージたちが転がっている。やろうと思えばできちゃうよなぁ~…と思い、かつての古巣に顔を出してみた。するとそこには、「開発再開!」の文字が。なんと、かつての住民たちが管理人からソースコードを譲り受け開発を引き継いだのだ。掲示板には懐かしい名前が並んでいた。え、マジ?!こんなん作るしかないやん!!

 そんなわけで作りました。

 いや作りましたじゃないが。当時俺は大学で研究に追われて限界な生活をしていた。ウソですそんなに限界じゃないです結構サボってました。それでも学会前とかは間違いなく”限界”だったので、ゲームを作るモチベは安定していなかった。登録者10万人にあわせて公開してえよなあ…と思っていたが余裕で過ぎたし、なんならうだうだしているうちにバーサーカーせんせえがかの素晴らしい名取ゲーを公開してて「マジか…」となったりした。こんな神ゲーが世に出ているのに俺がゲームを作る意味とは…となったりもした。
 真にやる気になったのは2019年、俺が就職してからだ。メーカー特有のクソ狭タコ部屋にぶち込まれて俺は日々虚無な生活をしていた。そのときの同居人が、ノートPCで絵を描いていた。学生時代から延々と描いている超大作らしい。それを見て、俺も何かを成そうと思った。半年近く触ってなかったまさおを再びいじり始めた。
 ここからは結構虚無だった。だって一番面白い名取のドット絵作りは終わってるし、ステージを新たに作るにはその前に相応の敵キャラやブロックのドット絵を用意しなきゃいけなかった。面倒くさすぎる…。段々と作業感が強くなったが、他にやることもないので延々と作り続けた。
 結局敵キャラを作るのは途中で諦めた(しんどいしネタがない)。散り散りになったステージたちを集めて、ようやく形になった。テストプレイを頼んだTwitterのフォロワーには難しすぎると散々言われたが、それらを修正してなんとか公開にこぎつけた。スーパーナトリの誕生だ(これ→https://www.freem.ne.jp/win/game/21203)。

 このゲームは単に名取への愛だけで作ったんじゃないと思う。有名になってみんなからちやほやされてえ~~~~~~という思いや、このゲームでまさおがまた盛り上がればなあ、という思いがあった。でも現実というのはあっけないもので、名取にRTされることもなかったし、そんなにちやほやされなかったし、まさおが盛り上がることもなかった。まあ、そういうもんだよね。ちょっと舞い上がってたね。そういうわけで名取を"ダシ"にしようとしていたところは少なからずあるので、そういう点ではユルシテクレ…と思う。まあ公開してからこのゲームのことが愛おしくなり、引いては名取のことがめっちゃ好きになったんですが。

 話がとっ散らかった。ようするにこのゲームは10年来の創作の総決算というべきか、今までのすべてが詰まっているので、それなりに思い入れがありますよという話でした。みんなやってくれ!いや、めっちゃ難しいらしいからやらなくていいです…ごめんなさい…

 最後にスーパーナトリのあとがきに書こうとしてやめた感情を吐き出しておきます。

お~~~~いdare氏~~~~~~~!!!!!
見てるか~~~~~~~!!!!!
あんたのゲーム、いまだに遊んでるやつがいるぞ~~~~~~!!!
お~~~~~~~~~い!!!!俺、ゲーム作ったぞ~~~~~~~!!!
頑張ったぞ~~~~~~!!!見てくれ~~~~~~!!!
お~~~~~~~い!!
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