水本ゆかりと《賢者の石》
「なんだろうこのタイトル。ハリーポッターのパロディかな?」……そんな風に感じてこの記事に飛んできた方もいらっしゃるかもしれないので、念のため、冒頭から注意書きを掲げておこうと思います。
これは二次創作SSではなく考察です。具体的にはシンデレラガールズが誇るKawaiiアイドル・水本ゆかりを、グラブルのイベント『Astray Alchemist』の文脈で徹底分析してしまおう! というものです。
もっとわかりやすく言うと、この考察はグラブルのカリおっさんを特別講師にお迎えして、水本ゆかりの歩みを錬金術的な観点から眺めるという発想で書かれました。我ながらちょっと正気とは思えないですね。しかし最終的にはきっと「ホントかウソか、よくわからない話だった…!」という評価がいただけるものと自負しております(えー…)。
――――――――――――――――――――――――――――――
それではひとつ、のらりくらりと始めましょう。
グラブルのイベント『Astray Alchemist』には、賢者の石とゴーレムを一緒くたにしたような兵器が登場します。それは敵方の錬金術師・パラケルススが研究開発したもので、《ヘルメスの門》と呼ばれていました。カリおっさんの証言によれば、これは「白化・黒化・翠化・黄化・赤化」の5段階を経て完全なものになるようです。
賢者の石として完成してしまったら手の付けようがないが、今は未完成なものなのでギリギリ対処のしようがある――という感じで、グラン(ジータ)一行はこれに立ち向かうことになります。
しかし賢者の石というのは、そこまでとんでもない力を秘めたものなのか。これについて私の見解を持ち出す必要はなく、やはりカリおっさんの評価を提示しさえすれば、それで作中の位置づけはご了解いただけるでしょう。
こんな感じです。ビィくんは「それって無敵じゃねえか……」と震えていました。「トップアイドルになりたい」みたいな願いはもちろんとして「俺はガンダムになる」みたいなのも叶えるとしたら、確かに無敵ですね、これ。理論上ではゆるふわ無限力に匹敵するかもしれません。
――――――――――――――――――――――――――――――
《ヘルメスの門》は白化段階のアルベド、黒化段階のニグレド、翠化段階のアルフェウスという、三種類のボスで登場しました。そしてそれらの備える特徴=本質についても、カリおっさんの懇切丁寧な解説が付されています。
いわく、最初の段階である白化については――
この「白化」状態の水本ゆかりにあたるのが、[素顔のお嬢様]+です。なんでも吸収・複製ができる――その様子は、シンデレラガールズ劇場においても表現されていますね。「何かが混じった」というオチが印象的でした。
《ヘルメスの門》の場合は、その「何か」として星晶獣の核が組み込まれているのですが、ゆかりの場合は、さくらちゃんがきっかけになったものか、おいしいごはん――すなわち食への関心が組み込まれたようです。
ゆかりが法子ちゃんと食べたドーナツの数は、今いくつぐらいになるのでしょう。Pと屋台のおうどんをご一緒したりもしましたし、おいしそうに食べる表情が板についてきたところからか、最近ノーブルセレブリティで食レポに挑んだりもしましたね。
シンデレラガールズをはじめたばかりのPさんに、ゆかりの初期Nだけを見せて「この子、実はよく寝てよく食べる元気な子なんですよ」と説明したら、どんな反応が返ってくるでしょうか。それが昔の私なら「フルートを持ってるのに注目するのはそこなの!?」とツッコミを入れたかもしれません。しかし今の私なら「あー、わかるわかる」で済んでしまう気もします。
――――――――――――――――――――――――――――――
白化についてはこれぐらいにしておいて、そろそろ次の段階、黒化に進みましょう。再びカリおっさんの解説のお世話になります。
早速ピンと来た方もいらっしゃると思うのですが、この段階にあるゆかりがフェアヘイレンさんこと[ヴォヤージュヒーラー]です。「世界が悲しみに満ちているのならば、滅ぼしてしまいましょう」という台詞がそれっぽいですし、特訓前後で聖属性と闇属性に分離しているところも、あてはまっているように見えます。また、これらに加えてもうひとつ該当する現象が、やはりシンデレラ劇場で披露されていたと推定できます。
――そう。「このままだと」3Pシュートが入らないのです(うーん…)。
――――――――――――――――――――――――――――――――
賢者の石が黒化から翠化に至るには、正確にどのような手順を踏まなければならないか? ――カリおっさんは次のように述べています。
水本ゆかりのニュートラルかつ中庸を好む性格が分解されることで、「聖」と「魔」の特徴が現れたのが[ヴォヤージュヒーラー]です。この「聖」と「魔」がそれぞれ更に分解されることによって、翠化が達成されます。
「魔」を分解するにはフェアヘイレンさんの呪いを解かなくてはなりません。これにはお伽公演で赤ずきん(=よしのん)のご助力を賜ることができまして、解呪は無事完了いたしました。
解呪完了の証は3Pシュートが決まることで、これは『HARURUNRUN』のMVであるとか、渚キャプテンが木場さんとバスケを楽しんだデレぽの投稿などによっても、幾度となく観測されているとみなしてよいでしょう。あるいは[エフォートブリランテ]の玉入れなども、これらと同根の表現として関連付けることができるかもしれません。
次に「聖」を分解する手順ですが、こちらは[ヴォヤージュヒーラー]+の衣装から羽根が失われることによって達成されます。ヴォヤージュヒーラー+の癒しに満ちたかわいさが、ファンタジー要素抜きの[フルーティオータム]に受け継がれたことが、目標達成の証だったといえましょう。
なんだか強引だな――とお思いになったでしょうか。しかし、月末ガチャRであった[フルーティオータム]には、特別エピソードがついています。こちらをチェックしてみると、なかなか意味深なシーンが含まれているのです。
羽根なんてなくても、卵を抱いて温めることはできる――それは聖性を失ってなお、いたいけな命を慈しむ人間の姿です(言い過ぎかな?)。ゆかりはこの幸せのコツという考え方を母親に教わったと言っています。水本家において母から娘へと「幸せのコツ」が伝授された背景には「ウェディングアイチャレ以降、娘が家事を手伝うようになった」という変化があったことも、この場で指摘しておくべきでしょう。どちらの共演メンバーにも千枝ちゃんがいて、頼もしいですね。ゆっことの共演回数も、ひそかに増えてきたような気がします(むむむ~ん)。
こういった様々な出会いに学び、ついに水本ゆかりが到達した翠化の状態が、SSR[音色を抱きしめて]+であることになるでしょうか。
……ね、翠色でしょ?(ボブの絵画教室っぽく)
――――――――――――――――――――――――――――――――
ではいよいよ「翠化」状態の賢者の石について、カリおっさんの評価をお伺いしてみましょう。
水本ゆかりの「復活と再構成」――それは[音色を抱きしめて]特訓前において、まず「列車」や「夢」という暗喩によって示されます。
列車というものを仮に「始発駅と終着駅の間を往復するもの」と定義するなら、それは限りなく「生と死の間を往復すること」にも近づきます。つまり神話によく出てくる冥府行ともしっくり馴染みやすく、テーマとして復活を扱う際に有効なガジェットであるといえなくもありません。宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を読んで、そのようなことを感じた方は少なくないでしょう。また、夢は寝ている間に脳が記憶を再構成する作業と関わっている――という説が、現代では有力なのではないかと思います。
これらの暗喩は、[音色を抱きしめて]特訓後において、眠りから覚めた状態における表現に移行します。
「唇を離してから、歓声が聞こえるまでの、とても長い一瞬」は、死から生への移り行きそのもので、つまり復活です。これは過去の自分と言葉を交わし、現在の自分と過去の自分を再構成することによって成し遂げられます。
私自身の[音色を抱きしめて]に対する評価は、次のようなものです。まず第一に、見る人に合わせてさまざまなことを感じさせてくれます。そして第二に、それらさまざまな想いの一切を肯定してしまうのではないか――と。
たとえば、ここまで私が記してきたような内容は、他のゆかりPさんたちと共有できるものかどうかわからない――むしろ共有不可能なのではないかと思える程度には突飛なものです。私自身からして、作り手側が意識して数年をかけ、このような筋道を提示したものとはちょっと信じられないところがあります。しかしそういった非現実的な発想さえ、ゆかりは「ある日電車に揺られているうち、まどろみの中で見た夢」として受容してしまうかもしれないのです。
ですから、私の目に映る水本ゆかりと、私以外のゆかりP氏の目に映る水本ゆかりは、同じだけれど違うし、違うけれど同じなのかなと思っています。うーん。オクシモロンというやつですかこれ。界隈で大流行ですねー。
――――――――――――――――――――――――――――――――
さて。グラブルのイベント『Astray Alchemist』の展開はここで一段落して、後は続編待ちということになります。とはいえ翠化に続く諸段階については、既に言明されていました。つまり「黄化」と「赤化」です。
ゆかりで黄色といったら、どう考えてもイエローリリーやメロウ・イエローですね。たとえばイエローリリーに限っても「馴染の顔が5人揃ったよ!」という展開の他に、みんなで浴衣に着替えて花火を見に行ったり(ゆかりが初めて和風の装いをしたことになります)、妖精さん役でフローラル夕美に登場したりということがありました。このうえ更に、個々の成長を踏まえた表現が噛みあうようになるとしたら、五人はどんな題材を取り入れた姿をみせてくれるでしょうか。とても楽しみです。
そしてゆかりで赤といえば、夏島アイプロですね。こちらについては「水本ゆかりと《情熱の赤》」という考察の中で扱っておりますので、よろしければご覧ください。
・
・
・
ところで、ですね。ゆかりの出発点であるイエローリリーが第四段階の「黄化」に分類されるのは、この考察の致命的欠陥ではないだろうか――という異議申し立ての可能性に、私はふと気付きました。「どうしたもんだろう、この考察も没かしらん」とあれこれ作中の描写と照らし合わせてみたのですが、これはゆかり本人にとってたいした問題ではなかったようです。
少しグラブルの話をしますと、カリおっさんの敵対者としてのパラケルススは「白より黒、黒より翠の方が最終目的である賢者の石の完成に近い」というようなものの見方しかできません。彼の目に映る世界はどうしても直線的で、平板なものです。
しかしカリおっさんはそうではありませんでした。それはたとえば、カリおっさんがクラリスを教育するシーンをみるだけでも明らかです。まずは弟子の理解度をつぶさに確かめ、時には以前のステップに戻り、時には一か八かの試練を与えて飛躍を促す。そして自身もその中から貴重な気付きを得て、ついには最終的な問題の解決を目指そう――といった具合なのですから。
それは、誰にでもあてはまる効率的かつ画一的な成長の道筋を否定し、個性豊かな人々が互いの欠如を補いながら進んでいく姿勢を示しています。学びの階梯に先も後もなく、また真理の探究に師匠も弟子もない。それは二匹の蛇が互いの尾を呑みこんでいるというウロボロスの姿そのものです。
敵方のパラケルススは、カリおっさんの肉体と知識を《ヘルメスの門》に吸収させることでその完成度を高めようと目論むも、失敗しました。その一方で水本ゆかりという人物は、彼のような非道を必要とすることなく、既にカリおっさんと変わらぬ方法論を実践しているといえます。
以上の理由から、《ヘルメスの門》が完成して真理に辿りつく可能性はおそらくないでしょう。しかし、水本ゆかりについてはカリおっさんやクラリスと同じく、なんらかの真理へと到達する可能性があるものと考えられます。
多少うがった話になってしまいましたが、要約すると「夢の中でこずえちゃんがゆかりに伝えたメッセージはそのまま事実なのではないか」というあたりに落ち着く話です。世界はまだまだ、謎に満ちていますね。
・
・
・
およそ以上のような筋道を通って、私は今回想定していた内容を、無事に述べ終えることができました。錬金術云々についてはとりあえず脇に置いて、水本ゆかりがこの先どんなアイドルと仕事をして、どんな評価を得ることになるのか――ますます楽しみになってきたという方が一人でも増えたなら、私はとても嬉しく思います。
ご読了、ありがとうございました! これからも、まぶしい未来に向かって旅を続けるアイドル・水本ゆかりに、ぜひご注目ください!(了)