キングオージャーが刺さりすぎてやばい

王王

この単語のみで何を意味するかを理解できる人はいないだろう。
一見、中国産ののペットの愛称にも見えるが残念ながら関係はない。
現在放送中の番組名の略称である。

王様戦隊キングオージャー

12文字で3回も「王様」って言ってる謎文章ではあるが、紛うことなき実在する番組名である。これに今ドはまりしているので語りたい所存だ。

起死回生のジャンプ

キングオージャー語りたいと言っておいてなんだが、まず話さないといけないことがある。ちょうど前番組にあたる作品、暴太郎戦隊ドンブラザーズである。キングオージャーも大概だが、ドンブラザーズもなんの番組か一切分からない。人に説明してもタイトルの時点で十中八九聞き返されると思う。

そしてドンブラザーズはタイトル通り(?)、なにをやっている戦隊なのか一年を通して見ていても分からなかった。カオスな展開を、妙な説得力で視聴者に納得させる世界観と魅力あふれるキャラクター、強引な勢いで進む脚本と総ツッコミと化すネット民……毎週が謎回と言われても仕方のない作品を、一年間演じ続けた役者たちはこう語った。
「なんかよくわかんなかったね」
このように説明しようとしても言葉が出てこない、かと言って魅力のない作品だったのかと言われたらそんなことはない、語るには語彙力が足らない作品、それがドンブラザーズだったのだ。

作品としてのクオリティはともかく、そんな愛された作品の後番組というハードルは果てしなく高かったように思う。しかし反面、トンチキストーリーを2年見せられた(前前作も割とトンチキだった)視聴者としては、多少の王道展開であれば「やっぱこれだよな〜」と楽しむことのできる心持ちでいたはずだ。そういった意味ではハードルの低さも兼ね備えていたようにも思う。

魅力という高いハードルと、展開という低いハードルを構えられた状態で放送を迎えた作品、それが王様戦隊キングオージャーだったのだ。

君がすべてを変える王になる

向かえた第一話、仮面ライダーギーツ放送後の
素晴らしい第一話がそこにあった。
世界を支配する、邪悪の王を名乗るギラの誕生秘話としては完璧すぎる一話であった。
戦隊ものの第一話として異質だったのは主人公ギラ/クワガタオージャーが他のメンバーと一切顔を合わせていなかった事だろう。無論素顔を晒さず、敵と戦うときだけ共闘する展開は過去にも多くあったが、変身したあとのギラはすぐに巨大ロボット/キングオージャーに乗り込み巨大敵を相手にしたので、他のメンバーは誰がクワガタオージャーに変身しているか分からないし、ギラは他のメンバーの顔を一切知らないのである。他メンバーとの絡みがほぼ無いというのはかなり異質と言える。

そして他メンバーとの絡みが無いということは、ギラ本人のキャラクター形成に多く尺を割いていたということで。ギラの詳しい素性については第一話時点では一切触れられない。ただ子供の世話を見る青年という視点しか与えられないからだ。
子供の遊び相手をする、お腹を空かせた子供に自分の分を分けてあげるといった、どう考えてもいい人間であり、一見邪悪の王にはほど遠い。
だが中盤、帝国バグナラクが攻め込み、窮地に陥る国民を見捨てる王様ラクレスに直談判するシーンですべてがひっくり返るのだ。
「民は道具、私が国だ」と自己中心的な正義を掲げるラクレスに、ギラは失望し独り反旗を翻す。
「貴様の騙る正義など! くだらんつまらん気にくわん! 俺は正義をぶっ潰す悪になってやる!」
「貴様を打ち滅ぼすものの名は、ギラ!! 邪悪の王となる男!!!」
「俺様が世界を支配する!!!」

言ってしまえば、彼のしていることは気の狂った愚者そのものでしかなかった。しかし普段から子供らの遊び相手の中でやられ役を買って出ていたこと、自ら悪役を演じていたことが自然に彼をそうさせたのかもしれない。普段から邪悪の王に憧れていたかは知る由もない。
だが彼は不運にもバグナラクの進行に巻き込まれ、説得を試みたラクレスに掴みみかかった際に偶然剣を奪い取り、反逆者呼ばわりされたことに気が触れて悪役として名乗りを上げたら、運のいいことに王の素質があるものにしか使えない聖剣を起動することが出来たのだった。

かくして、邪悪の王ギラは世界を敵に回す極悪人となり、指名手配犯として名を知らしめる。また本人もその悪名を謳い文句にあちこちで名乗りを上げるが、その虚勢は誰の目に見ても明らかであり、みな相手にしないどころか、ギラの悪人の演技には誰ひとり触れないという始末である。実際、彼と関わった中で彼を悪人として扱っている人間は誰ひとりいなかったと言うのだから、滑稽と言わざるを得ない。

だが彼は紛うことなく王であった。
虚勢をはり、白い目で見られようが彼が成したのは、守護神を操り、国という国を救ってきたことだったのだから。
嘘と偽りから産まれた邪悪の王、その即興劇が今幕を開けたのだ。これが喜劇となるか悲劇に転ぶか、まだ我々は知らない。

未来が騒ぎたいと待ってる

ンコソパ国で総長ヤンマ・ガストの心意気を汲み、
イシャバーナ女王、ヒメノランの慈愛を知り、
トウフ国 王殿様、カグラギの謀略に乗せられ、
最果ての地ゴッカンにてリタ・カニスカに判決を下される。
この珍道中は視聴者の時間を忘れさせ、ひと月という時を一瞬で押し流してしまった。

どいつもこいつも魅力的のひとことでは表せないが、やはり外せないのは2023年NO.1おもしれー女(暫定)のリタ・カニスカだろう。
厳格、荘厳、無口、不動といういかにもカッコいい女剣士!といった様相で、公開直後から多くのファンを産んでいた。さらにメイン回以前に公開されたオープニングではギャップの存在も考察されており、目の離せない第5話だった。

そして公開された第5話では実際、多くのファンを生むこととなったキャラクターがこれでもかという程の活躍をしていたのだった……。
キャラの佇まいを裏切ることのない静かな言動……かと思ったら、事態が面倒な方向に向かっていると分かれば奇声を上げる、ぬいぐるみやグッズにまみれた汚部屋で可愛くままごとでもしてるのかと思えばすごく雑なアテレコをして、しかもダウナーなノリは変わらないという予想外の生態だった。
しかし二次元的なキャラ付けとは違い、如何にも実際に「ありそう」なリアルを急に突き付けられてときめいてしまったのは正直なところ。

しかもこのリタ・カニスカとかいう女王様、だるいとぬいぐるみに愚痴りながらも仕事はめちゃくちゃしっかりやるのである。ギラに無罪判決を下す結果になると途中から分かっていた筈なのに、それでも民の聴取を4国分行うなど、はちゃめちゃに働きものである。ここも魅力ポイント。

ついでに書いてて気づいたのだが、ヤンマ・ガストにはオージャカリバーの起動条件の確認、ヒメノ・ランには遺伝子照合を頼むために直接聴取をしたが、カグラギ・ディボウスキには何を聞く気だったのだろうか。
ホラ吹き悪代官であることはとうに見抜いてるであろうし、トウフ国民に話を聞けば仕事は終わりであることを考えれば、カグラギに話を聞く必要など無いと分かり切っていたのではなかろうか。
ではわざわざ城にまで出向いた目的は何だったのか?
答えは単純、リタ・カニスカの真の目的は城で振舞われる鍋だったと考えれば合点がいく。団子も食べてたのに食べざかりちゃんか??? 自分に下手に出れないカグラギならばもてなしがあるだろうという抜け目のなさ。ここも魅力ポイント。

話に出たついでに第4-5話で味のある演技と役を見せつけてくれたカグラギ・ディボウスキについても語らねばならない。
本作きってのスカポンタヌキ、オモテなしの王殿様である。
第4話の難解な立ち回りについてはもはや子供向けでないことは言わずもがなで、ラクレス、ギラ、ヤンマとヒメ、バグナラクまでも手玉に取りかねない大立ち回りに多くの視聴者の目が回ったことは間違いない。

そんな難しい話の上、更に巻きに巻いていたので、彼の目的がどこにあるのかがわからず仕舞いなところは否めない。だが、彼の立ち回りの答えはサブタイトル「殿のオモテなし」の言葉通り、上記の誰に対しても味方はしていない。徹頭徹尾、国のため国民のため、果てはチキューの未来の味方である。領土と国民の命、食を守れればなにも問題は無いのである。それ以上が必要ないのだ。
そのため人を信じないのか、道具としか思ってないのかはまだ掘り下げが無いので不明瞭ではある。現状平気で利用したギラを売ったり、ラクレスとの約束を有耶無耶にしたり、バグナラクに交渉を持ち掛けるといった、ある意味なんでもあり、とんでもないことをやりかねない立ち位置である。こういった危うさを秘めている所が見逃せない、魅力なのは間違いないといったところ。

最終的にギラの仲間として戦ってくれるかどうかは期待値低めで見ているが、第5話一斉変身前のやりとり、
カグラギ「この日が来るのを、ずっと信じておりました!」
3人「ウソつけ!!!」

これが最後まで見れるなら、もうこいつら一生味方じゃなくていいや、と言ってしまう。そんな魅力がこのカグラギ・ディボウスキにはあるのだ。

余談ですが、5人の中で最年長、唯一の三十路ということもあり、演技に深みあるのが更なる魅力です。味わい深い表情の演技も豊かですが、中でも非常に印象に残っているシーンがある。第5話のギラ無罪判決後、怒り心頭のラクレスが側近らと出ていくシーンのカグラギの表情である。

語りすぎ

僅か2秒に満たないシーンであるが、多くを語り過ぎである。表情だけで10分ぐらい喋っている。計算が狂ったなーとか、ゴマをする方間違えたなーとか、ここからどうやって白を切ろうかなーとか考えてるんだろうけどそれを全部表情で言ってる。なんだこの殿様。そして出てくるのが上のセリフなんですか!?

このシーンのカグラギだけでキングオージャーを語れるといっても過言では無い。というかリタのメイン回なのになぜ味を出してくる。そういうとこやぞスカポンタヌキ
みたいに情緒を壊してくる表情をされるので非常に困った第5話でした。
上の4人のやり取り合わせて第5話は10回ぐらいリピートしている。

You're King!!!

「えっ?この魅力的なキャラクターが活躍する話を一年間楽しめるんですか!?」
現状この一言に尽きる。
仮面ライダーやプリキュアもそうだが、キャラクターの活躍を1年ぽっきりしっかり見られるのはニチアサ帯の魅力である。短くなることも長くなることもなく、ちゃんと1年。きょうび少ないんですよね、しっかり期間が決まってるテレビドラマ。

さらに魅力的な点を上げるなら、オープニングがどちゃくそカッコいい。
クレジットが無いと物足りなく感じる演出、何?
あとまさかの全員分のキャラソンがある。それぞれ各国のテーマソングも兼ねているため、国歌とも言われていておりかなり人気が高い。
特にイシャバーナ国家の「World Is Mine!」が凄く良い。
平成アニメのOP感あってめちゃくちゃ刺さる。どっかで聞いたことある記憶がまさぐられて凄い。え?化物語のOPで流れてませんでした??

第5話で一旦冒頭の展開としては区切りとなったわけだが、ここからどうなっていくのか一切予想が付かない。ここから本当に5人一緒に戦っていくのか、なんなら5人で「王様戦隊!キングオージャー!!!」と名乗る未来が無いまである。そういう意味では名乗ることのハードルを著しく下げたドンブラザーズの功績が評価されることになる(ドンブラザーズは3回しか名乗りをしていない)とは……。

ともあれ、期待値しかなく、すでに120%楽しんでいる番組があと11か月も楽しめるのというのは幸せという他いうことが無い。
毎週の楽しみがあるというのはコンテンツとして最強だなというニチアサ特有のありがたみを再度実感するとともに、第6話への思いを馳せようと思う。

OPが見れる内に見ておくべき。


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