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怖くないわたしの顔

ねぇ、聞いてほしい。

あのね、今日わたしは眠れなかったんだ。
たぶん、きのうバイトに行くまでの間に何度も二度寝をしたから(何度も二度寝をしたらそれは二度寝とは言わないのかな?)。

まぁ、とにかく眠れなかったわけなんだけど。
午前3時、わたしはやることがないからシャワーを浴びに行ったの。
全身綺麗に洗ったあと、鏡の前に座って自分の顔をじっと見たんだ。

実は、わたしは自分の「顔」とは上手く付き合えてなくてね。
別に、嫌いって訳じゃないし、違う顔に生まれたいわけでもない。
でも、ここ1、2年自分の顔が怖かったんだ。
鏡を見るときは出来るだけ細かいパーツだけに注目して、なるべく全体像を掴まないようにしてた。
そんなふうにして化粧をするから、いつもパンダみたいになってたんだ。何かを消すように塗りたくられた色彩。
そうして出来上がった顔は記憶の中の自分像とは程遠くて、自分のくせに自らの顔から幼い頃のわたしの面影を見つけられなかったんだ。

まぁ、そんな感じだったんだけど。
どうしてか今日は、じっと顔を見つめることが出来たんだ。
そして、思った。
綺麗にお化粧してみよう、って。

まず、綺麗に下地を塗った。
これは母から買ってもらったDHC。BBクリームに日焼け止め効果がついてるやつだ。
それからTHE SEAMのコンシーラーを塗って、CANMAKEのフェイスパウダーをはたいた。
アイシャドウはexcelだ。普段よりもずっと、薄く、薄くのせた。
アイラインはラブライナー。いつもよりも目を瞑って、細く引いた。
ビューラーでしっかりと睫毛を上げて、ヒロインメイクのマスカラを塗った。それから、セザンヌの二重ライナーで涙袋を描いた。
シェーディングとハイライトを塗って、もう一度鏡を見た。

びっくりした。
びっくりしたんだよ。
わたしの顔は、全然怖くなかった。凄く綺麗だった。
こんなにお化粧が上手くいったことなんてなかったんだよ。いつもよりもずっと薄いメイクなのに、いつもよりもずっと顔がはっきりとしていて、統一感があった。

それから、成人式に買ったイヴ・サンローランの真っ赤なラップを塗ってみた。
すごくいい。

自分に向かってにっこりと笑ってみた。
わたしが、こちらに向かって微笑んでいた。

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