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関係のない特別なこと.

多分絶望ではない。
今この瞬間にも人が死んでいる。殺されている。生まれている。自分がこの世に生まれ落ちたことも、流れる歴史の一瞬の出来事だったし、死ぬこともまた同じこと。

あの人が撃たれた、最悪なニュースを見た。
その後すぐに仕事があり、正しい情報を知ったのは数時間あとだった。私がどう思おうが何も関係できることはないのに、重大なことを遅れて知ったことで自分がとてつもなく最低な人間のように感じた。本気で仕事をしていたことが余計にそう思わせた。自分がやっている仕事って意味ある?ということはよく思うが、その時ばかりはまざまざと感じた。驚きもしなかった。


自分が言葉を発することも、綴ることも、全く何の意味もないことに気付いてしまった。物理的に言葉を失って、がらんどうで過ごしていた。ずっと部屋がきたない。何にも関係ないのに、何も関係できないのに、眠らずにまた意味のないことをしている。

「憤りを感じる」「信じられない」「かなしい」「大好きでした」「良い人だったのに」「許せない」「日本じゃないみたい」「自分の無力さを実感して」「優しい人だった」「忘れません」「忘れません」「忘れません」「忘れません」

宙ぶらりんに見える。
知っている言葉なのに本来の言葉に聞こえない、ちぐはぐな記号に見えて気持ちが悪い。

映像をみた。「こんなこと起こるはずがなかった」
起こるはずがなかった?私が生きてきて、起こるはずがないことなんて今まで一つもなかった。わざわざ言おうとすれば、起こるはずがないことが起こるのは「平和に呆けていた」というだけだ。平和に呆けた言葉を散々綴って、忘れるべき時間にきちんと忘れていく私たちの愚かなこと。

人は必ず死ぬ。どこかで生かされたとしてもゆくゆくは死ぬ。考えることが"意味のないこと"だとは思わないけれど、常に何かに安心しようとしている自分がばかだと感じることがとても惨めだ。どうでもいいけど。

当たり前の今が当たり前じゃないことはみんな知ってる。大切な人が死ななくても、震災が起こらなくても、全てを失わなくても、知ってる。分かってない人はいるかもしれないけれど。知ってるんだから今更、託けたように言わないでほしい。人の命を抽象的にするの不自然じゃないか。

今この瞬間の意味のないことを知りながら意味のないことをして意味のない言葉を綴って、同じことを繰り返していくのだろうか。

絶望とか言っている場合ではないことは確かだ。喪失しても多分絶望ではないと思っている。思うしかない。
自分に関係のないことが特別なことだったなら。

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