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【GAME】悠久の海【etc.】

 GWはもうとっくに終わったんだよ!
 ということで、GW中にしれっとリリースされていた『FOREVER BLUE LUMINOUS』の話(以下、『FBL』と略す)。本当はストーリーモードをクリアしてから記事にしようと思ったのだが、不具合によって当面はクリアできないことが判ったのでもう書く。

 存じている人は存じているかもしれないが、これは、ARIKAがもうかなり昔から作っている『FOREVER BLUE』シリーズの最新作である。厳密にいうと、その前身に当たる『EVER BLUE』というシリーズもあるのだが、ぼくはこちらのシリーズはやっていない。
 で、ARIKAといえば? そう、『ファイティングレイヤー』だね! いやまあ、SNK民にとってはテリーが出稼ぎ出演していた『ファイティングEXレイヤー』のARIKAというべきか。最近はSNKの既存IPのリバンプのための業務提携うんぬんでちょっとニュースになったりもしていた。
 さてさて、そんなこんなで『FBL』の話。このゲームについて簡単に説明すると、主人公は海の環境保全、さらには地球全体の環境を守るために何やらやっている組織「AIGIS」所属の新米ダイバー。潜るたびに地形が変化する神秘の海ベールド海を調査し、お魚さんとたわむれたり海に沈んだ宝物を発見したりして、世海樹と呼ばれるド・ドデカいサンゴに輝きを取り戻すのがその目的である(少なくとも現時点ではそういうストーリーである)。

これが世海樹。無数のサンゴの集合体だが死にかけている。これが枯死すると世界が滅ぶらしい。

 具体的には、海の中を自由に泳ぎ回ってマップを埋めつつ、魚の群れに注目して写真を撮影したり宝物を見つけたりしていく。泳ぐ、捜す、撮影する――主人公は基本的にこれら3つのことしかできない。生物にしろ宝物にしろ、新しいものを見つければ図鑑に記載されていくので、そのコンプを目指すのもゲームの目的のひとつとなるわけだが……うーん。

 ストーリーモードが進められなくなっている現状、誤解を恐れずにいってしまうと、つまらなくはないが、前作、前々作のほうが面白かった、というのがぼくの正直な感想である。なぜそう感じるのか、まずは過去の2作品をざっと紹介してみる。

 初代の『FOREVER BLUE』は、南太平洋にある幻の島マナウライを拠点として、海の中を自由に探索するゲームだった。サンゴ礁のある熱帯の海が舞台であり、自由に泳ぎ、撮影し、海底に落ちている宝物を拾ってコレクションするといった最新作にもある要素は、この時点ですべて揃っていた。それらに加えて、イルカやシャチに掴まって高速で移動する、イルカを調教する、ツアー客のニーズに答えてダイビングガイドをする、水族館をプロデュースするなどといったサブの遊びも豊富で、当時のWiiのゲームにしばしば見られた、SDカード内に記録されているMP3形式のミュージックファイルをゲーム中にBGMとして流すようなことも可能だった。

 続く2作目『FOREVER BLUE 海の呼び声』は、前作よりストーリー性がかなり強くなり、登場人物も増えた(1作目は主人公のほかにはダイビングのツアー客くらいしか出てこない)。「竜の歌」と呼ばれる謎の音声、深海調査艇の事故、世界各地の海に沈む遺跡――などなど、ロマンあふれる題材が散りばめられており、終盤はかなりテンションが上った記憶がある。基本的に、1作目でできた遊びはすべて引き継がれており、今作ではさらに、弱っている生物を治療する、興奮して攻撃性が高まっている生物を鎮める、砂に埋まっている宝物をダウジングで捜すといった新アクションや、プライベートリーフを作る、主人公の外見をカスタマイズするといったあらたな遊びも追加されていた。削られたのはMP3プレイヤーくらいかな? ちなみに、主人公の性別が選べるのはこの2作目だけ。

海中探査を離れてもいろいろと遊べた2作目。Wiiがあるならぜひプレイしてもらいたい名作。

 ――という2作品のあとを受け継いで15年ぶりに登場した『FBL』はどうだったか。とりあえず「グラがよくなった!」とか「サウンドが!」とかいうのは、技術の進歩を思えば当然のことなので、そこはノーカンとする。というか、グラフィック面はまだしも、1作目はヘイリー、2作目はケルティック・ウーマンを連れてきているので、サウンド的にはこれまでのほうが金かかってる感は上だったわけだが……それ以外でよくなった点というとどこだろう?

 そもそも、今作の公式サイトが真っ先にアピールしている点が、最大30人のユーザーと同時にひとつの海域で(要するに同じマップで)遊べます、という部分なのだが、それが何か新しい面白さにつながっているのかといわれると、素直に頷くのは難しい。Wi-Fiコネクションを使ったふたり同時プレイは1作目から可能だったし。
 ユーザー同士というのは、つまりは海中にいるダイバー同士なのだが、プレイ中にできることといえば、なにがしかのジェスチャーをするとか、もしくは自分が発見した宝物や生物にアイコン(ゲーム中ではエモートタグと称している)をつけてアピールするくらいで、ほかに積極的に交流できることはない。Switchを持ち寄って声がけしながら遊べる状態なら、みんなで集まって撮影会みたいなことも可能だが、通常のオンラインではそれも難しい。
 まあ、マップ内を行ったり来たりして捜し物をする的なミッションをこなす場合(というかそれ以外のミッションは存在しない)、人数が多いほうが短時間ですむため、メリットがまるでないわけではないのだが、そのほかに多人数プレイで楽しいことがあるかと聞かれても、「ない……かな?」というほかないのである。
 また、主人公は海面に顔を出すことすらできないため、プレイ中はずっと海の中にいる。1作目のようにクルーザーの甲板でのんびりすることもできないし、2作目のようにビーチで花火を眺めることもできない。メニュー画面を出ればそこはもう海の中。拠点も何もあったもんじゃない。また、「〇〇に沈んでるお宝をサルベージしてくれ!」とか「△△の撮影スポットに案内してくれ!」みたいなガイド的な遊びも完全に削除されているし、水族館プロデュースもプライベートリーフ作りもイルカの調教も全削除。削除削除削除
 主人公はヘルメットをはずせないししゃべれもしないので、素顔はおろか性別も不明。つまりは髪型を変えるとか肌の色を変えるとかの要素もオミットされた。一応、ダイビングスーツやフィンなどの色は変更できるし、ステッカーを貼って個性を出すことは可能だが、それをいうなら2作目では、購入した装備を組み合わせることで潜水時間が伸びるなどのカスタマイズ要素があったのに、今回はそれもなくなった。
 要するに、最大で30人同時に遊べますよ、という微妙な新要素を追加し、登場する生物を約300種から約550種に増量した代わりに、前作に実装されていた遊びの8割くらいが奪われている感がある。幕の内弁当がリニューアルされたと思ったら、多様なおかずが軒並み削除され、代わりに白米と卵焼きときんぴらが増量されたというか……こう書くと何かヒドいな。もちろんその卵焼きやきんぴらはおいしいんだけどね。
 でも実際、これなら『海の呼び声』をリマスターしつつ、Wiiリモコンでの操作をSwitch仕様に変更+生物やお宝の種類を増やすだけのほうがはるかにまし――というより、よほどよかったと思う。

暗い海の中、ライトの光に不意に照し出される巨影の怖さは今作でも健在。巨大シーラカンス。

 ……何だろう、これに似た失望を半年くらい前にも感じた覚えがある。
 そうだ、『GIRLS MODE5』こと『フシドマ』、『Fashion Dreamer』だ! あれも3DS版の『4』をSwitch基準で移植するだけで神ゲーが約束されていたというのに、オンラインで世界中のユーザーをつなぐという点だけに注力してしまったのか、肝心の遊びとしての面白さをばっさばっさと削ぎ落としてしまっていたが、今回の『FBL』にもそれと似たものを感じる。ストーリー面が薄すぎて、プレイ開始してそうそうに同じような作業の繰り返しになってしまうあたりなんかもそっくり。いや、『フシドマ』はパブリッシャーも違うしよく似た別タイトルだから仕方ないかもしれんが。
『フシドマ』にしろ『FOREVER BLUE』にしろ、ぼくが過去作をあまりに気に入りすぎていたために、最新作でガックリしてしまった部分はあるのは否めない。ただ、そこをフラットな目線で判断したとしても、今作はやれることがあまりに少なすぎる。最初からこれしかできませんといって出されたのならここまで落胆はしなかったかもしれないが、どれも15年前の過去作ではやれていたことなので……みたいな不満を感じるのも、これまた『フシドマ』と同じだな。

 とはいえ、現代には、Wiiの時代にはなかったアプデという概念がある。もしかしたら今後のアプデによって、『FBL』も『海の呼び声』を超えるゲームになるかもしれない。まあ、かもしれないかもしれないと期待しつつ、『フシドマ』はいまだに『ガルモ4』を超えないままだが。
 とりあえず、今月中には不具合解消のための更新データが配信されるようなので、その後、ストーリーモードをクリアしてから、このゲームについてはまたあらためて触れようと思う。

 ……ところでリバンプってどういう意味?

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