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【SNK】コピペロス【SNK】

 令和を生きる若者たちには理解しがたいかもしれないが、30年前のゲームというのはとにかく容量との戦いであった。特に格ゲーというジャンルは1キャラあたりのキャラパターンが豊富で、そこに多くの容量をついやしてきた(と思う)。
 その一方で、プレイヤーたちはひとりでも多くのキャラクターを求めるものであり、そんな両者の妥協点に生まれたのがコンパチキャラ――すなわち元祖『スト』シリーズでいうところのリュウケン、もしくは初登場時のユンヤンのような、首から上だけ違います、色がちょっと違います、でもベースはいっしょです、みたいなキャラのことである。

 ひるがえってSNK。SNK格ゲーの始祖ともいうべき初代『餓狼』では、ムエタイ使いのジョーとホアがコンパチキャラとなっている。このふたりを嚆矢とし、続く『龍虎』ではリョウ&Mr.KARATE、『KOF94』ではラルフ&クラークなどといったコンパチキャラが続々と登場していくわけだが、SNKで特筆すべきは、容量節約を目的として生まれたはずのコンパチキャラに、設定面で特別なストーリーを添える双子キャラが多い点といえよう。
 そう――SNK格ゲーには双子キャラが多いのである。
 そこで今回は、SNK格ゲーにおける双子の歴史をひもといてみよう(勝手にな!)。

 SNK格ゲー界における双子の筆頭格といえば、平成キッズなら誰もが一度は触ったことのある良キャラ、『風雲』シリーズのゴズウ&メズウ! ……と思うかたがたもいるかもしれないが、まずここでみなさんに哀しいおしらせをしなければいけない。厳密にいえばこのふたりは双子ではなく、すでに故人となった末の弟カズウを含めた三つ子なのである。なので、この仮面の忍者兄弟は今回の企画趣旨に合わないから即退場。

 それではあらためて、SNK格ゲー双子キャラ筆頭といえば、もちろん『餓狼』シリーズ出身の秦兄弟――ではなく、王虎である(1993年登場)。もしかしたら知らない人もいるかもしれないので説明しておくと、王虎というのは『サムスピ』シリーズに登場する、デカい青龍刀やら石柱やら鉄球つきの棍棒なんかで戦う辮髪野郎である。

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見るからに真のすごい漢だ……!

 王虎についてはいずれまた触れる機会もあるとは思うが、この王虎には双子の弟(?)がいるという設定になっている。設定上存在するだけでゲームには登場しない、などということはなく、王虎でプレイ中に乱入してくる同キャラが弟ということになっている(名前はよく判らん。そもそも王虎という名前自体が偽名の可能性がある)。つまり、王虎兄弟の場合はコンパチキャラですらなく単なる1Pと2Pでしかない。

 そして1995年、『餓狼3』のリリースとともに秦兄弟が世に送り出される。ただ、この双子はもともと双子ではなく、
ラスボスの髪型、2種類作ったけどどっちにしたらエエか悩むわ……。しゃあない、双子ちゅう設定にして両方使おう!
 という、先に存在していたデザインに合わせてあとから双子という設定が作られた珍しいケースなのである。そのため初登場時には、カラーリングと首から上以外は完全に共通、必殺技もほとんど共通だった(のちのち差別化されていくけど)。

 そして『餓狼3』の直後に、平成キッズの9割がプレイ経験があるとウワサの『風雲黙示録』がリリース。ブッ飛んだ設定のまったく新しいキャラたちといっしょに参戦したニコラ・ザザも、上記の王虎と同様のパターンで、同キャラ対戦になった場合、(おそらく)乱入したほうが双子の弟パコラ・ザザということになる。どうでもいいがヒドい名前
 ちなみにこのゲームにはラスボスを含めて11人のキャラクターが登場するのだが、前述のゴズウ&メズウというコンパチきょうだいのほかにも、双子でこそないが、獅子王&真・獅子王というコンパチコンビがいる。コピペ地獄。そしてその続編となる『風雲STB』には、コンパチ兄弟ゴズウ&メズウのコンパチであるジャズウも登場。さらなるコピペ地獄

 そんな混沌とした20世紀末を駆け抜けたNEOGEO最後の『KOF』としてリリースされた『2003』に登場するのが、少数派ともいえるおにゃのこ双子、マキ&ちづるの神楽姉妹である。ただまあこいつらもホントに差がないというか何というか……ちづるとマキは特殊技や必殺技が違うだけで外見的にはほぼ同じ(額に垂れた前髪の本数が違うらしい)、デフォルトカラーも白地に赤いラインといういつものアレだし、ゲージ部分を隠したスクショを見てもたぶん区別はつかない。かぎりなく同一キャラに近いコンパチ女子。
 余談だが、『97』リリース時にはまだちづるの姉の名前が明らかになっていなかった(『96』神器チームのストーリーデモでは「ちづるの姉」と表記されている)。そこで、『97』のノベライズ執筆のためにスタッフに質問したところ、例の「鶴は千年で千鶴、亀は万年で万亀」のたとえとともに「まき」だという回答を得たので、下巻の中盤で「神楽まき」という名前を登場させたのだが、それから数年後、『2003』では「マキ」表記で登場したので、「え……? ちづる&まき、じゃなくてチヅル&マキ、でもなくてちづる&マキ……?」と思ったのは内緒。

 そして2005年。現時点でのもっとも新しいSNK格ゲー双子のメイラ兄弟が『KOF MI』で登場するわけだが、そもそもコンパチキャラというのは、キャラデータの流用によって容量を節約する目的で生まれたものである。DVDメディアによってソフトが供給されるようになったこの頃から、少なくとも格ゲージャンルにおいては容量不足に悩まされることはなくなり、コンパチキャラでキャラ数を水増しする意義も薄れてきた。
 そのため、ポリゴン星人のアルバとソワレも、双子といいつつ外見的にはこれっぽっちも似ていない。技のモーションも違うし格闘スタイルもまったく違う。おそらく今後は、ストーリー面での強い必要性でもないかぎり、双子という設定のキャラは減っていくのではないかと思う。
 双子キャラという体のコンパチキャラは、いわば20世紀末に咲いた時代の徒花なのであろう。

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