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【SNK】ケつお【KOF】

 ケつお=「ンカがい上に前」の略である。といいつつ白髪ゴリラの話題ではない。いきなりのタイトル詐欺。

 今は昔、『RB餓狼SP』の時のことだが、マリーが選ぶ世界三大ケンカつよつよ野郎は、ジョー、ビリー、山崎だった。ルール無用で何でもあり、殺るか殺られるかというレベルのケンカで本当に強いのはこの3人、というチョイスである。あくまで『餓狼』世界に限定してのことだが、何となくうなずける。
 ぼくの私見としては、何か明確な目標を持っていて、その実現のための手段として格闘技をやっているとか、戦いに何かしらのこだわりや美学を持っているようなキャラは、たぶんこの3人にはおよばない。この3人は、根っこの部分に「ボク戦うのだ~い好き♪」という思いがあって、今もその延長線上に立っている。ある意味で判りやすく暴力的な人間ともいえる。
 ジョーをこの中に含めていいのかという向きもあるだろうが、おそらくタイで修業していた頃の彼は、初代『餓狼』の時点よりももっと殺伐としていたに違いない。同じくムエタイで成り上がろうとする現地の少年たちにナイフで刺されたことくらいあるかもしれないし、マリーもそういうことをかんがみて、ジョーを3人の中に加えたのかもしれない。
 そして、山崎もまたナイフで刺されたことがあるのはもちろん、ナイフで人を刺したこともあるだろうし、ビリーもナイフで刺されたお返しに鉄パイプで誰かの頭をかち割ったことがあるに決まっている(断言)。マリーはちゃんとそういうことを踏まえて彼らをチョイスしているのである。……たぶん。

 では、彼らに対して明確な目標や美学を持っているキャラとは誰なのか、というと、判りやすいところではギースとクラウザーであろう。
 設定上、ギースは明らかにビリーよりも強いが、武術家としていかに強くても、おそらく、殺し合いまで発展するような喧嘩に本気でつき合うような人間ではない。ジェフを倒した時のように、必要ならみずから手を下すこともするが、基本、自分に死ぬ気で突っかかってくる連中をいちいち自分で始末するとは考えられない(そのためにビリーのような男をそばに置いているのだと思う)。
 みんな大好き天獅子版『龍虎の拳2』で、
「命まで懸けさせられてはゲームとはいえんな」
 といい残してリョウの前から姿を消したように、ギースにとっての戦いとは野望達成のための手段、あくまで武器のひとつであって、戦いそのものに固執しないというのが本来のスタンスのはずだった。
 ただ、『RB』ではそのポリシーを曲げてまでテリーととことんやってしまって、結果的にみずから死を選ぶことになった。これまた私見では、この時点でのギースは野望をほぼ達成しつつあったがために、野望<目の前の宿敵との決着、となってしまったのかもしれない。
 一方のクラウザーは、ギースとは逆に、戦いそのものを楽しむタイプ、戦いに美学や芸術性を見出し、追究するタイプの人間として描かれており、戦いは好きという部分は同じでも、ビリーや山崎のような人種とは正反対といえる。崇高な「戦い」は好むが下世話で下品な「ケンカ」はしない、しないというより大嫌いな人間なのだろう。
 だから、彼もまた、強さでいえば並みの格闘家たちよりはるかに上だが、さりとて泥臭いケンカにつき合うことはない。

 ――と、やや脱線したが、本題はここから。
 ケンカつよつよ野郎の選択肢の幅を、『RBSP』以降のシリーズ作、さらには『KOF』にまで拡大するとどうなるか。
 ケンカというのは、あくまで生身の人間が現実に足をつけてボコボコやり合うことをいうのであって、「ほうりゃあ!」とかカッコよく叫びつつ、地球意思を封印したりする古武術はちょっとその範疇からはずれている気がする。伝奇的すぎるというか……。
 また、いきなり強殖装甲よろしく胸のアーマーをがばちょと開いて極太レーザーを撃ったり、バトルスーツの裾をひらめかせて永パ決めてきたり、データをインストールしたから忍術使えます、みたいなSFめいた戦い方も、誰がどう見てもケンカではない。
 要するに、リアルっぽい格闘スタイルを持ち、なおかつバックグラウンド的に何でもありの戦いに対応できそうな、上記3人に続くキャラは誰か、という話である。

 まず、同じく『餓狼』では、『WA』の坂田冬次がそれっぽい。ギースの古武術の師である周防辰巳の宿敵で、いい年をして血の臭いを求めてうすうすとうろついているあたり、もはや強者をぶちのめす気まんまん。参戦理由がギース相手に「死合い」がしたいからという時点で、肩書こそ武術家だがケンカも好物です、という感じがする。何というか、ナイフで刺されたことがあるというより、ポン刀で斬られたことがありそうだし、そもそも戦いで片目を失っているし、これはもうつよつよランキングに名を連ねるのにふさわしいおじいさんと呼んでよかろう。

ほらね? 見るからにカタギじゃないでしょ?

 また、謎めいた部分が多いために「意外にそうかも?」と思えるのが、『KOF』ネスツ編のラモン。完全に肉弾戦オンリーのファイトスタイルでありながら、ネスツからは地上最強の人間のひとりとしてチェックされている上、何となく、メキシコの貧民街でナイフで刺されたり、荒んだ生活を送ってきた過去の上にルチャドールとしての成功がある気がするので、その意味ではメンタルもつよつよそう。ふだんは陽気な二枚目半を演じているが、実は……みたいな? 判りやすい弱点は人妻だけ。

 とはいえ、個人的に最右翼なのはやはり最強のチンピラ、『KOF』アッシュ編のシェン・ウーさまであろうと思う。

みんなほんわかしたイメージになる『キミヒロ』世界においてさえこの目つきの悪さよ……。

 緑の炎をあやつる小僧や怨霊を駆使するビジュアル系アサシンとくらべると、我流(ステゴロ)というのはあまりにリアルで泥臭い。突っ込んでブン殴る、襟首掴んで頭突きする、何のひねりもなく蹴飛ばすといった、あまりに原初的なファイトスタイルもそうなのだが、シェンの場合、何よりもそのメンタルがつよつよそう。山崎やビリーと同程度に人を殴ることに躊躇がない気がするし、たぶん上海の路地裏で何度もナイフで刺されたことがある

 もしかしたら「てめえふざけてるだろ」と誤解されそうなので一応いっておくが、どのキャラも「ナイフで刺されたことがありそう」とか書いているのは、要するに、そういうことを日常として生きてきた=それだけそういう命懸けのケンカに対応できる暴力的なメンタリティを持っている、という意味である。
 それこそラルフやクラーク、さらにはハイデルンなども、一度ならずナイフで斬られたり、ことによっては銃弾を浴びたりして、それが日常だったこともあったかもしれないが、彼らの場合もまた、戦いはあくまで作戦遂行のための手段のひとつであって、やはり血みどろのケンカに最後までつき合うということはないだろう。だから今回のつよつよ候補としてはプッシュしない(戦いそのものが目的ではないという意味ではギースに似ている)。

 ただ、ほんっとーに誰がケンカで一番つよつよかな? と聞かれたら、ぼくは山崎が一番で次点がシェン、ビリーやジョーは彼らには一歩およばないと思っている。
 理由は、ビリーとジョーにはリリィというアキレス腱があるのに対して、山崎にはそうした弱みが――少なくとも今のところ、設定的に――存在しないからである。その点ではシェンも同様だが、山崎よりはいくぶんマイルドな部分が残っていそうという、そのくらいの印象の差でしかない。
 どっとはらい。

え? ホントに俺の話題ないの? 1ミリも?

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