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【SNK】平仄が合わぬじゃろ【MI】

 唐突だが、日本でも海外でも波動拳は波動拳である。同じように昇竜拳は昇竜拳である。昔はFIRE BALLだのDRAGON PUNCHだのといった英語表記もあったが、現在はHADOKENで統一されている。とまあ、これは『ストV』の話。
 ひるがえって『KOF』はどうか。さすがに近年では、日本語版の必殺技の読みで統一しているようである(百式・鬼焼き→100SHIKI ONIYAKI、みたいなカンジ)。ただ、ここにいたるまでにはすさまじい紆余曲折があったようで、たとえばぼくが持っているヨーロッパ版『MI』のコマンド表を日本版とくらべてみると、思わず「はァ!?」と驚きの声が出るレベルですごい。
 たとえば京の必殺技でいうと、

 百式・鬼焼き→FIRE BALL

 はァ!? FIRE BALLっちゅうんは昔の波動拳のことじゃなかったんかい!? そもそも弾も飛ばんとナニがFIRE BALLじゃ、こんボケがァ!

 ハァハァハァ……あぁあ。

 のっけから血圧が上がるこの仕打ち。そしてさらに納得がいかないのが、庵の鬼焼きは、なぜか「DEMON SCORCHER 100」という名前なのである。「悪魔を焦がすもの・100」である。……まあ、百式・鬼焼きをどうにか英訳しようとした形跡が見えるので、FIRE BALLよりはましといえよう。
 もうひとつ鬼焼きで謎なのは、京の毒咬み連携で出せる鬼焼きには、これまた「DEMON INCINERATOR 100」などという謎の英語名がついている。つまり……「悪魔焼却炉・100」? 日本語だとどれも鬼焼きなのに、なぜ英語表記は3種類もあるのか?
 また、同じ虎煌拳でも、リョウの場合は「TIGER FLASH BASH」、ユリは「TIGER FLASH BLAST」という具合に表記のぶれが見られる(ちなみに虎咆は「TIGER BLAST」)。必殺技の翻訳というのがどういうふうにおこなわれているのか知らないが、担当者はこれを不自然だと思わなかったのか。あるいはキャラごとに翻訳担当者が違ったりした結果がこれなのか。
 まあ、表記面での平仄が合わないという事態がなかったとしても、ぼくたち日本人の感覚からすると、飛燕斬は飛燕斬、もしくは「HIENZAN」であるべきで、決して「FLYING SWALLOW SLICER」ではない。っていうかこれ、漢字を1文字ずつ直訳しただけじゃん。
 とまあ、こういう感じで日本語から英語に変換する過程でわけの判らないスパイスが振りかけられてしまっていた時代をへて、現在では日本語表記をほぼそのままローマ字に置き換えて英語表記としている模様。今のご時世、世界中のファンがネットを通じて交流することも多いわけで、そこで国によって技名が違ったりすると、

「今回の鬼焼きなんだけどさあ」
「鬼焼き? 何だそれは?」
「は? 京サマの対空技っていうか」
「FIRE BALLのことか。ならそういえ」
「は? FIRE BALLって何だよ、鬼焼きだろ?」
「いやいや、DEMON SCORCHER 100でゴザルよ」
「違いマース、DEMON INCINERATOR 100デース!」
「だから鬼焼きだっつーの!」
「もう全部DPでよくねえ?」

 などという不毛な論戦が交わされかねなかったわけなので(本当か?)、まったくいい時代になったものである。

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