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【SNK】パンを食う【KOF】

 2023年4月19日、『KOF:サバイバルシティ』がリリースされた。
 ぶっちゃけよくあるタイプのゲームだと思う。いや、ソシャゲそんなにやらないからよく知らんが、まあ、ゲームジャンル、システム的に目新しさはない(と思う)。施設を作って自陣を発展させ、戦力を拡充させ、外に出て敵を倒し、また自陣を発展させ……みたいな、ビルド&バトル? RTS? ゾンビだとかマフィアだとか古代人だとか、モチーフが違うけど要は似たようなゲーム多いじゃん? みたいなゲーム。
 それをなぜ『KOF』というSNKを代表するタイトルでやる必要があるのか? という声はあるだろうし、かつてはぼくもそういう疑問を持ったことがなくもないのだが、それに対する明確な回答はすでに存在している。
 SNKのIPに潜在的な集客力、特にアジア圏でのネームバリューがあるからである。
 そもそも、「どうしてこのジャンル?」というファンの声はきのうきょうに始まったものではない。我々のような古代NEOGEO人は、20年以上前から本家SNKに対してそう叫び続けてきた。
 アドベンチャーゲームだったりロールプレイングゲームだったり、時には恋愛シミュレーションゲーム、なぜかシューティングゲームとかもあって、そのたびに「何でそのジャンルでやるんだよ!?」と叫んだり笑ったりしてきた。
 まあ、どれもこれも何だかんだ受け入れられてきた中での一番の黒歴史は「ジャンル:バンド」だったとは思うが。

 まあそれはともかくとして、『KOF:サバイバルシティ』である。

絵はいい。何か背景のモブにやたら違和感を覚えるが……。

 タイトル画面でけーくーが前面に押し出されているのは、世界観的にネスツ編を下敷きにしているからだろう。ネスツの科学力が産み出した改造人間や突然変異たちによって、世界は滅亡の危機にうんぬんかんぬん、そこに立ち上がったキャプテン(=プレイヤー)は、けーくーモミアゲをはじめとしたお馴染みのファイターたちと協力し、生き残った人類を守るためにネスツとの戦いを繰り広げる……みたいなストーリーが一応は用意されている。
 こういう時、オロチ一族とか彼の地の連中はあまり役に立たない。「かがくのちからってすげー!」的ジョーカーを切れるのはネスツだけ! ということは判るのだが、ただ、それを差し引いても、ゾンビ(に似た突然変異たち)があふれる荒廃した世界というのは、あまり『KOF』には馴染まない気がする。こんな終末世界の『KOF』、某おるすたくんのエピックストーリーでしか見たことない。
 やはり『KOF』には、その裏にどんな陰謀があっても、とりあえず「おーい磯野ー! 大会やろーぜー!」というノリが必要なのだろう。

 そんなこんなで、うじゃうじゃ敵がいてもおかしくない世界観のために悪役になってくれたネスツなわけだが、実際にプレイしている間は、相手がネスツだということをまったく感じさせない
 一応、初プレイ時のチュートリアルでは、ネスツ課長ことクリザリッドが登場するのだが、

気安いのか慇懃なのかよく判らん課長。口調ぶれぶれ問題。

 思わせぶりなことをいうだけいって、2度目の遭遇での戦闘後に消えてそれっきりになる。少なくともぼくは、すでに1週間は彼に再会していない。というか、この先また登場するのかどうかも疑わしいし、ストーリーが特に進展する気配もない(もし進展したという人がいたら教えてつかぁさい)。
 ならばこの先、ぼくたちキャプテン&お馴染みファイターズはどうすればいいのか?
 そんな時、

 ウレシーヌよ……絶望にうちひしがれた人々のためにパンを焼くのです……。

 といういにしえの女神のありがたいお言葉が聞こえてきた。
 そう、このゲームの基本はパン! 文明が崩壊しかけているわりにはなぜか札束も存在するのだが、それよりもやはり食料が大事なのだろう。本部を大きくするにも居住地を作るにもまずはパンが必要! パンを作る施設を作るにもパンを消費する!

現金の80倍のパンがないと本部をレベルアップできないってよ!

 端的にいうとこのゲームは、お馴染みファイターズをあちこちに派遣してネスツからパンを強奪するのが当面の目的になる。嘘でも誇張でもなく、だいたい真実。そう、ぼくたちはネスツが人々から奪った食料を奪い返しているんだ(モグモグ)。
 もちろん、勢力拡大のためには札束も必要だし、金塊も使う(札束と金塊は別アイテム)。ファイターたちを成長させるにはSDカード(にしか見えない経験値アイテム)も必要だが、何といってもまずはパン。人はパンのみにて生きる!
 これは終末世界での食料確保がいかに重要課題かを教えてくれるゲームである。

 とまあパンの大切さをさんざん力説しておいて、最後にこういうことをいうのもアレだが、何というか、「結局どうなのよ?」と聞かれると、非常に返答に困るゲームでもある。
 まず絵はいい(デザインそのものは『XIV』以降ではなく、オロチ編、ネスツ編のものをベースにしている)。ボイスもそういう時代のものを流用しているようなので、古代NEOGEO人にはごほうびである。がしかし、それ以外に何かほめるところがあるかと尋ねられても咄嗟に答えられないのが最大の困りポイント。

なかなかのハンサムボーイ。立ち絵は本当にいい。

 そもそもキャラが少ない。リリース時に20人+サービスインと同時にちづるが追加され、4月末現在で21人しかいないのである(『94』より少ないじゃねーか!)。また、育成システムを考えると、おるすたくんのように同キャラのバージョン違いを複数用意するのは難しそうなので、そのあたりを重視する人にはおすすめしづらい。
 それに、フレーバーテキストというか、各ファイターの装備品(的なアイテム)の説明などがなかなか怪しい。

リョウの帯。まあベルトといえばベルトだが、まだ総帥じゃなかろう?
設定うんぬんの前に、これはハチマキであってカチューシャじゃない。

「あー、やっぱ今のSNKは、こういうのあんまりぎちぎちに監修しないで、各メーカーにわりと自由に作らせてんだな。だからあんなに次々にソシャゲがリリースされるんだな」と再確認させられる仕上がりなので、そこも人によっては萎えるだろう。明らかに原作の公式設定にはないオリジナル設定っぽいことが書かれていたりするし。

 また、そういう設定面を離れて考えても、PvPが基本になるため、どこかのギルドに所属してほかのギルドを追い落とさなければならないというゲーム性も人を選ぶだろう。アプリを起動していないところでほかの勢力から攻撃されるのも当たり前だし、上を目指すためのノルマもなかなかきつい。圧倒的課金力があるなら別だが、そうでないならお気に入りのキャラを成長させていくこと自体、かなり難しいと思う。
 そういったゲーム部分の厳しさをキャラ愛でカバーできればいいのだが、上述したように(あくまで現時点では)、キャラが少なくテキスト面が怪しいため、キャラ萌え勢にもきつい。

 個人的な意見だが、せめて自勢力の施設にキャラを配置すると何かしらの変化が生じるような、コエテク系『三國志』的な要素があれば、もう少しのめり込めたかもしれない。
 たとえば広場(兵士を集めて訓練する施設)にラルクラを置いておくと兵士の能力が上がるとか、先頭に足の速いアンディや舞を置くと部隊の速度が上がるとか、食堂にチャンを配置すると食料生産にマイナス補正がかかるとか、庵は誰とも部隊を組めないとか、せっかくの個性豊かなキャラたちの活用法は、ほかにもいろいろある気がするんだけどなー、みたいに思った。

 まあ、こっちは無料DL&無課金で遊ばせてもらっているわけだから、ぜいたくはいえないんだけどね。
 というわけで、以上、あれこれいうからには1週間は遊んでからにしよう、と思ったぼくの個人的感想。

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