【SNK】どうでもいい話【餓狼】
あかんのか? あかんかったんか?
来年(2025年)には『餓狼伝説CotW』が出るというこの時期にいうのも何なのだが、あの頃ぼくはいつもそう思っていた。そう、あれはもう四半世紀も前のこと……。
初代はともかくとして、システムや人気という面で見れば、『餓狼』シリーズの基礎となっているのは『2』もしくは『SP』であろう。弱強パンチ(A&Cボタン)、弱強キック(B&Dボタン)の計4ボタンという構成で、ライン移動やライン飛ばしなどはあったものの、非常にシンプルで判りやすい操作系だったことは、このシリーズが広く遊ばれるようになった理由のひとつだろう。ぼくにとっても『餓狼』=4ボタンという認識だったし、SNK自身も、のちに新しく『KOF』シリーズを立ち上げるに当たって、ユーザーに馴染みやすいこの4ボタン構成をベースにしたのではないかと思う(あくまで個人の感想です)。
がしかし、時代は格ゲー戦国時代。各社から新しいタイトルが次々にリリースされ、システムが複雑化の一途をたどる中、このシリーズは1995年3月リリースの『餓狼伝説3』で盛大にやらかした。『SP』で2本だったラインを3本に増やした結果、何かもうやたらと操作が複雑になってしまったのである。
具体的には、中央にあるメインラインから手前のラインに移動するにはAB同時押し、奥のラインに移動するにはBC同時押しをしなければならない。まずここで最初の「あかんのか?」である。
手前移動は2+AB、奥移動はABじゃあかんのか? 『KOF』だって緊急回避はだいたいABもしくは4+ABじゃん? 回避方向を決めるのにレバー入力は必要だけど、押すボタンそのものは同じじゃん? そのほうが絶対に判りやすいじゃん? 同じ「ライン移動」という動作をするのに、同時押しするボタンを微妙に変えなければならない合理的な理由があるとは思えないじゃん? じゃんじゃん?
『3』はこれ以外にも、『2』から存在していた避け攻撃に加えてクイックスウェー、そこから繰り出すクイックスウェー攻撃、小ジャンプ、コンビネーションアーツなど新要素がてんこ盛りだった。極めつけに、今ではお馴染みとなっているフェイント技もここで搭載されたのだが、これがまたAC同時押しやBD同時押しを多用するため、余計に操作が複雑になってしまった。
まあ、外から見ているだけなので断言はできないが、『3』が今イチ人気が出なかったのは、こういう操作系の複雑化と無関係ではなかったと思う。新キャラやBGM、それにグラフィックもよかったし、テキスト量も多く、ぼくのようなキャラ萌え勢は大歓喜だったが、対戦勢には受けがよくなかったのではないか。
そもそもちゃんと人気が出ていたのなら、年に2本も『餓狼』の完全新作を出したりはしないだろう。……まあ、もしかすると舞の露出度が下がったことも一因かもしれんが。
ということで『3』から9か月後にリリースされた『リアルバウト餓狼伝説』は、同時押しを多用するわずらわしさを軽減し、もっと積極的にライン移動やライン間の攻防を楽しんでもらおうという意図があったのだろうが、攻撃ボタンはパンチ(Aボタン)、キック(Bボタン)、強攻撃(Cボタン)、ライン移動(Dボタン)という構成に変わってしまった。初代や『龍虎』に近いシステムといえなくもないが、とにかくこの大改革の結果、一部の必殺技に強弱の区別がなくなってしまった代わりに、奥ラインにはD、手前ラインには2+Dという簡単操作で移動できるようになった。
……やっぱ『3』はABと2+ABでよかったってことじゃねえか!
まあそれはともかく、操作系を大胆にシンプル化したおかげか、『RB』は(おそらく)『3』よりも人気が出て、キャラを追加した『RBSP』がリリースされた。システム的には、メイン+奥&手前の3ラインあったフィールドが『SP』に似た手前と奥の2ラインに変更されてさらにシンプルに。だが、やはりライン移動関連がDボタンひとつに集約されているため、攻撃はABCの3ボタン構成のままだった。鳴り物入り(?)で追加されたクイックスウェーは早くも削除され、代わりに通常ジャンプ中にDボタンを押すことで空中振り向きができるようになり、大雑把にいえば全キャラに百合折りが追加されたような空気感になっている。
でまあ、その後『リアルバウト餓狼伝説スペシャルドミネイテッドマインド』(以下『DM』)が発表された時、またぼくは思ったのである。タイトルが長い! と。
「あかんのか? 攻撃ボタンを4つに戻しちゃあかんかったんか?」
と。
『DM』には複数ラインがなく、要するにふつうの格ゲーと同じになっている。ひるがえってみれば、『RB』で攻撃関連のボタンが3つになったのはDボタンをライン移動に回すためだったわけで、ライン移動自体がなくなったのであれば、パンチとキックを2種類ずつ用意する本来の操作系に戻しても何の問題もない。
……と思うじゃん?
実際の『DM』のボタン構成は、ほぼ『RBSP』のままだった。プラットフォームがPSなので、A=✕ボタン、B=◯ボタン、C=□ボタン、D=△ボタンに相当するわけだが、これまでライン移動に使われていたDすなわち△ボタンは、新システムのクイックアプローチ(相手の攻撃を1ヒットぶんだけ無効化しつつ接近する特殊移動)に割り振られているのである。操作としては2+△な。
……それは2+□△じゃあかんかったんか? そしてふつうに4つのボタンを2種類ずつのパンチとキックに割り振っちゃあかんかったんか? そんなに必殺技に強弱つけたくないんか!?
……という亡魂の呻きが届いたからというわけでもなかろうが、その後、『MotW』リリース時には馴染み深いパンチ&キックが2個ずつのボタン構成に戻っていた。ライン移動もないわけだし、通常技、必殺技を使い分ける上でも、やはりこの構成が一番しっくり来る(当社比)。
がしかし、だからこそ思うのである。『RB』当時、あそこまで妙な同時押しにこだわる必要はあったのか、と。
4ボタンのままじゃあかんかったのか、と。