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【SNK】服飾問題【SNK】

 唐突にこちら、元祖といいつつ実はSNK格ゲー女子キャラ第二号、不知火舞(第一号はキングさんな)。

まあ、これでもまだ大人しめなほうだよな。背中バックリのもあるし。

 もし現実に、たとえば渋谷の交差点で、こんなカッコをした美女がいきなり目の前に現れたら、大半の人間は、
「え? この人ヤバくない?」
 と思うだろう。次いで多い反応は、
「え? 何かのコスプレ? 撮影?」
 かもしれない。今のご時世ならそれもなくはないと思う。ただ少なくとも、このファッションをTPOに沿った当たり前のものと流す人はまずいないだろう。
 もひとつたとえるなら、ジョーはトランクスだけ着用して上半身は裸(さらにいうなら裸足)なわけだが、舞にしろジョーにしろ、こんなカッコで現代日本の街中をうろついていたら、よくてヒソヒソ+SNSで拡散、ふつうは通報一択で即座に警察に職質されてしまう。常識に照らして判断するなら、これらのキャラがこういうスタイルでいるのは試合の時だけで、ふだんはごくごく当たり前の服装ですごしているのだろう。きっとそう。

あのパンツ男だって街中ではジャージを着るんです(少なくとも最近は)。

 ぼくがこういうことを考えてしまうのは、やはりノベライズやサイドストーリーなどの仕事をしてきたせいだと思う。一部エンディングで後日談が描かれたりすることはあるものの、基本的にゲーム中ではそのキャラの大会中の姿(=戦っている時の姿)しか描かれないが、ノベライズやサイドストーリーでは、そうではない日常の部分まで描く必要性がある。
 判りやすく舞やジョーでたとえるなら、あのカッコでごはん食べたりお茶飲んだり電車に乗ったりしているはずはないから、日常シーンではそれにふさわしい服を着せて登場させなければならない。
 問題は、その「ふさわしい服」である。

 前述した舞については、彼女の趣味を全面に押し出したヘビメタテイストの革ジャンスタイルや和服姿が、『餓狼2』の頃からたびたびイラスト化されているので、オフタイムがどんなスタイルであるかは想像しやすい。実際、2007年頃にSNKのケータイサイト上で公開されていた小説『餓狼伝説 StrayDog,StrayWolf』では、舞ちゃんは革ジャンスタイルでサウスタウンに出向いている(『Another Day』でもそうだったしな)。
 それでは彼氏のアンディは、ふだんどんな服装ですごしているのか? 静寂を好む彼の性格からして、舞とペアルックになるような革ジャンなどは着ないだろう。真面目なアンディのことなので、師匠から受け継いだ不知火流を次代へつないでいこうという意識は強いだろうし、さわやかさ満点のポロシャツ+デニムとか、もしくはいっそ作務衣姿で早朝から土鍋でごはんを炊いていたりするのでは? 金髪碧眼だが現代の日本人よりよほど日本人らしいのでは?
 ーーという判断から、『MIA』のサイドストーリー『難兄難弟』では、「暑い夏の日に、舞に仕立ててもらった浴衣を着て庭を掃くアンディ」というシーンを用意してみた。上述したようなアンディの性格にもマッチしているし、それまでほとんど活用されてこなかった舞ちゃんの設定にある「特技:和裁」を生かせると思ったからである。
 このサイドストーリー自体は、「テリーと舞は参戦しているのになぜアンディは参戦していないのか?」という、ユーザーからの当然の疑問に対する弁明というか、ゲームに登場しなかったキャラはこの時こういうことをしていましたよ、ということを提示する意味もあったのだが、特にアンディはこの頃、ナンバリングのほうでも『2003』、『XI』と連続して欠場していたので、もしかすると当時のぼくが、個人的にアンディをフォローしてやりたいと感じていたのかもしれない(基本、サイドストーリーで何を書くかはぼくに一任されていたので)。

 結局、アンディは『2002』での参戦を最後に、2009年稼働の『XII』まで欠場が続いた。
 世界線としては、『MI』は本家ナンバリングタイトルとパラレルな関係にあり、直接的な連続性はないのだが、そういうこともあったため、『XII』リリース前にケータイサイトで公開されたアンディのファイターズプロファイル(という名のキャラストーリー)では、『MIA』のサイドストーリーの時点で雌伏の時をすごしていたアンディが、ひさびさの大会を前に父の墓前で決意をあらたにするーーという具合に、何となくつながっているような気がする構成にしてみた。
『XII』は『98』や『2002』とはまた少し違った意味でストーリーがなく、なおかつナンバリングでは唯一明確なチーム分けがされていない作品だったせいか、各キャラのストーリーも、チーム参戦動機を描くようなお馴染みのものではなく、やっていてとても新鮮な仕事だった。これまでもたびたびいっている、ゲーム中では見られない各キャラのふだんの姿を描かなければならない仕事というアレなので、このへんについては、また別の機会にほかのキャラをダシにして書いてみたいと思う。

 で、とどのつまり今回ぼくがいいたかったのは、ぼくは意外にアンディ好きじゃん、ということ。
 どっとはらい。

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