浦和レッズの分析と雑感2 2022年7月6日 J1第20節京都戦(H)

浦和レッズ分析第2回です。まだまだへたくそなのでご意見アドバイスいただけると大変ありがたいです。

アジェンダは以下の通りです。
・ハイライト
・明本FW、関根左SBの狙い
・両チームの狙い、松尾の優位性
・2失点目が許容できない理由
・2得点目の岩尾の好判断
・真にゴール期待値の高い攻撃

ハイライト

 アジェンダにもしていますが、今節は「真に」ゴール期待値の高い攻撃ができていたと評価しています。それはレビューの最後にまとめました。
 試合の流れを振り返ると、開始からPK獲得までは完全に京都ペースだったと思います。京都の走力、ウタカのキープ力によって自陣に押し込まれ続けました。8分にメンデスの軽率なファールからPK獲得、モーベルグが決め先制。PK獲得後もどちらかといえば京都ペースですが、浦和も触れば一点ものの敦樹のクロス、セットプレーから幻のゴールが生まれるなど、決定機は浦和の方が多い形勢となります。
 そして松尾の個人突破からPKを奪いますが、これはモーベルグが失敗。前半ロスタイムも大久保の決定機が訪れますが決めきれず。前半終了となります。
 後半開始も流れるような攻撃からチャンスを作りますが得点を奪えません。そして53分、京都のCKから武富に決められます。この失点はノーチャンスでした。54分、あってはならないミスから失点。この失点は完全に西川の責任で、やってはならないプレーでした。後で触れます。
 浦和はすぐに反攻します。江坂のスルーパスから松尾の決定機となりますが決めきれません。69分、岩尾の機転からFKクイックリスタート、モーベルグが個人技を発揮した同点ゴールを決めます。その後は浦和ペース。京都は散発的なカウンターを狙うものの、ボール保持する浦和がフィニッシュまで持ち込むなど追加点があってもおかしくなかったですが2-2で試合終了となりました。

明本FW、関根左SBの狙い

 この試合のスタートフォーメーションはこんな感じでした。

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先発フォーメーション

 関根がDF登録でスタメンということで驚きがありました。額面通りそのまま左SBなのか、3-5-2のWBなのか私も予想がつきませんでしたが、結果的には4バックの左SBにそのまま入りました。今シーズン何度か試合中にシフトしたことはありましたが、サイドバックからスタートさせるのは初めてでした。特に守備面において小兵の関根と大久保が同サイドで大丈夫か、心配しましたが、関根が原因で守備面が混乱することはこの試合なかったと思います。関根は元々守備面でもハードワークを惜しまない選手ですし、ミシャ時代に鬼のように走るWBを経験しているので、問題なくやれたのだと思います。今後もオプションとして関根のサイドバックは使ってくると思います。
 ここで当然の疑問が湧いてくるのですが、なぜ散々やってきた明本をSBにせず関根にしたのか。明本をSBにして関根と松尾の2トップも考えられるし、これまでの傾向ではむしろそうしていたはず。なぜ?
 理由としては、明本の収める力を前で発揮したかった、ということだと考えています。明本の特長として、体は大きくないですが、タイミングよく相手に体をぶつけることにより空間を作ってうまくキープするプレーがあります。純粋なCFが不在の中で、最も収めてくれるのが明本です。その次に松尾でしょう。松尾もうまい。関根は縦の突破は得意ですが背負ってのプレーはそんなにうまくはありません。江坂もボディコンタクトを嫌う傾向があります。ユンカーは純粋なFWですが背負ってのプレーは苦手です。現チームで一番収めるのがうまい二人をリカルドは2トップに据えたのではないかと思いました。松尾起用は別の狙いもあったと見ていますが、この後で記します。ところで明本の体のぶつけ方って絶対痛いですよね。明本骨張ってる体してるし。

両チームの狙い、松尾の優位性

 浦和は2トップで収めてボールを保持する狙いをもって試合に挑みましたが、京都の強みである走力とピーターウタカのキープ力が生きて、開始から10分ほどは京都ペースで試合が進みます。

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2:00頃①

 2分の場面です。のっけからウタカのキープ力と走力が生きます。ビルドアップも素晴らしいシーンでしたが、ウタカに当てたところから振り返ります。ウタカがうまくCBとMFの間で受けて、ボール奪取しようとする浦和守備陣をうまくいなして向き直します。この辺りは本当にウタカの上手いところです。浦和に欲しい能力です…。この間に京都は次々と選手が前線に流れ込みます。

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2:00頃②

 ウタカは武富からボールの落としをもらうと右の白井に展開します。ここでさらに京都はギアをアップし、武富がダイアゴナルランでダイナミックな三人ワンツーで最終的にペナ内まで進入しました。浦和は何とか武富のクロスを防ぎコーナーに逃れましたが、ダイナミックで流麗な崩しだったと思います。ビルドアップから無駄な手数がないのもこの攻撃の良かったところです。武富は前半かなり躍動していました。武富、もっと浦和で見たかった…。
4分にもウタカの収めから流れるような展開で麻田のフィニッシュで持っていかれています。ボランチ含めた浦和の守備陣はしっかり陣形を保っていましたしアプローチにもいっているので、それでもなお2回深く攻略されたということになります。
 ところが、7分のファールで浦和にPKが転がり込みます。FKは一度弾かれますが、もう一度ゴール前にラフに上げたボールへの対応でメンデスが岩波の顔面に手を入れてPK。審判よく見ていたなと思いましたが、静止してみると思いっきり正面から審判が見ていました。発端となったFKの場面もメンデスが後ろから明本を倒していたもので、レフェリーの心証も悪かったのかもしれません。これをモーベルグがしっかり沈めて先制。
 その後は一進一退の攻防となりますが、浦和が意図的に裏を狙う場面が出てきます。これが松尾起用のもう一つの狙いです。松尾はスピードがあります。ドリブルスピードもそうですし、単純な短距離走としての速さも備えます。この点が江坂にない松尾の強みです。松尾起用によってユンカーでやりたかったことができるようになる、これが松尾の優位性です。そしてその強みを活かして単独突破によるPK奪取にいたります。このプレーは松尾の真骨頂と言えるでしょう。

2失点目が許容できない理由

 CKで同点にされた直後に失点、逆転を許します。この失点は完全にキャプテン西川のミスで、あまりにお粗末なプレーでした。厳しく糾弾する理由は2点です。1点目は、まずプレー自体がリスクテイクできていない軽率なものだった点。2点目は、彼がベテランでありキャプテンであるということです。

54:00

 状況としては、岩尾からボールを受けた西川は、寄せてくるウタカと逆の右を向くトラップをします。図の通りウタカにプレスを受けているものの、岩波とショルツはしっかりポジションを取っており、少なくとも西川で詰まるような場面ではありません。ですが、西川は岩尾にリターンという選択をします。全く準備ができていない岩尾はトラップできず、ボールを掻っ攫われてウタカに繋がれます。ウタカは冷静にショルツの股抜きでラストパス山田にニアを打ち抜かれて逆転。
 岩尾が準備できていなかったことを批判してしまいそうな場面ですが、それは酷です。ウタカのチェイシングのコースからすると、岩尾がパス出し後に瞬時に動き直すのは難しいです。むしろ、ボールをもらう動きをしてウタカに引っ掛けられることが恐ろしい場面です。なので、岩尾は敢えて「自分はもらえない」という意思表示で動かなかったんだと思います。岩尾がもらう動きをしていないのに西川は岩尾に出しますが、これは岩波に寄せようとする武富の動きが目に入り、ロングキックすると相手ボールになると見て、繋ぐためには岩尾に返すのがベストと考えたのでしょう。この判断が非常にまずいと思います。中央に返すというリスクがあるにも関わらず、岩尾の状況も良く確認せずリターン。最もリスクのあるところにパス。
 西川は失点によって冷静さを失っていたと思います。埼スタで、PK失敗後の失点。自身への批判の声も強まっていた中で、是が非でも勝利が欲しいと臨んでいた一戦。ここ最近はまだ余裕があるように見えても大きく蹴ってセーフティにプレーしていました。この時に限っては思いっきりリスクに振れたプレー。ダウンを取られて逆上してラッシュをかけるボクサーではないですが、相手にとって格好の餌食になりました。
 失点直後という最もナーバスな時間帯に、感情的になった挙句の判断ミス。ベテラン、しかもキャプテンのするプレーではありません。彩艶だったら、ミスを恐れずもっとチャレンジしよう!となりますが、キャプテンで大ベテランの西川が…このプレーは本当に猛省してほしい。
 ただし、今シーズンの彼はハイパフォーマンスを発揮しています。ハイボールの処理などは目に見えて良くなっています。正直、このプレーでレギュラーを外されてもおかしくないほどのレベルのミスだと思いますが、一時が万事ではないですし、今シーズン含めてチームに貢献しているのは事実ですので、反省を糧に今後のプレーに生かしてほしいです。

2得点目の岩尾の好判断

2得点目は逆に好判断による得点となりました。言わずもがなとは思いますが図を貼ります。



58:00頃


 これは一見すると浦和側のファールとされそうな場面でしたが、武富のファールとなります。京都側からすると異議を唱えたくなる場面で、実際足が止まってしまったような間がありました。この瞬間に間髪入れず岩尾がモーベルグにロングパス。モーベルグがフリーであることをよく見ていましたし、迷わずロングパスを放った判断も素晴らしい。モーベルグは得意な形でフィニッシュ。岩尾からするとしてやったりのゴールです。これは文句なしに岩尾の殊勲と言えるでしょう。
 当然ながら京都側、特に曺監督は猛抗議。気持ちは分かります。あの場面、浦和のファールとジャッジする審判が過半だと思います。ですが、瞬間の相手の気の緩みを逃さず急所に付けた岩尾の戦術眼は改めて素晴らしいと思いました。岩尾は尻上がりに調子を上げています。この場面以外にも、ゆっくりビルドアップで時間をかけたり、仕掛けたい場面ではワンタッチで大久保に預けるなど指揮の意図が伝わってきます。いよいよ夏に本領発揮しそうな予感があります。平野も悪くないですが不用意なファールが多く、当面は岩尾と敦樹がボランチの軸になると思います。



真にゴール期待値の高い攻撃

 最後に、この試合では特に後半、流れるような展開から幾度となくチャンスをもたらしました。それも、打つ手がなく放り込むような可能性の低い形ではなく、フィニッシュの形まで見えてくる「真に」ゴール期待値の高い攻撃でした。また、特に後半はチャンスらしいチャンスも作らせませんでした。失点のシーンくらいでした。京都は走力とウタカのキープ力、全員が高い共通認識を持っているという武器を全力で発揮していたと思います。非常に訓練されたタフな相手だったと思います。そんな相手に90分で見れば複数得点差での勝利に値するような内容を見せてくれたことはポジティブに捉えて良いと思います。

48:00

 後半早々、ピッチを広く速く使った大胆な攻撃です。岩尾から右サイドに展開、酒井が受けてライトレーンのモーベルグに預けます。同レーンに流れてきた江坂に預け、江坂はうまくターンしながらインサイドレーンを駆け上がってきた酒井へ。酒井のクロスは阻まれたものの、CKを獲得しました。


80:00

 80分の場面です。京都のビルドアップに対して効果的な圧力をかけ、岩尾がボール奪取します。岩尾は状況を見ながら江坂に展開、江坂はタイミングを計り、ボールにしっかり触れさえすれば1点もののラストパスをゴール前に送ります。しかし、このラストパスを松尾が感じ切れておらず、合わせるだけのボールはヒットせず…完全に1点ものの展開でしたが得点は奪えませんでした。これ以外にもチャンスはあり、アディショナルタイムの松尾のバー直撃のシュート含め、複数の「真の」ゴール期待値の高いチャンスを生み出しました。しかし、ゴールは奪えず…。
 複数の決定機を外した松尾ですが、シュートのフィーリングはかなり良いと思っています。継続してFWで起用すればガンガン決めてくれる予感もあります。1対1の場面でGKの肩口を狙ったシュートは惜しくもバー上でしたがシュートセンスを十分感じさせるものでした。仮に数試合無得点でもFW先発させる価値が松尾にはあると思います。

 選手個人個人を見ても好調な様子が見られ、本当に後一つ殻を破る、ピースがハマれば一気に連勝となりそうな気配があります。CF補強など改善はしてほしいですが、今の上向きな状態を手放すのはあまりに惜しいので、サポーターとしては辛抱強く応援していくことが一番だと思っています。

いかがだったでしょうか。ご意見、アドバイスなどいただけると大変嬉しいです。よろしくお願いいたします。

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