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~死闘の末に掴んだもの~ 浦和レッズレビュー8 2022年8月25日 ACL2022準決勝 全北戦

 レビューも第8回となりました。今回は死闘となったACL2022準決勝 全北戦です。私も現地で参戦しました。観戦ではなく参戦です。やはり声出し応援は闘っているという感覚になりますね。北にはもちろんかないませんが、今回南もすごいことになっていました。みんなチャントを歌っていましたし、後半終了間際からは跳ねていました。誰かから強制されたものではなく、自然とそうなっていきました。周囲ではおそらくレッズ戦を初めて観戦する学生の方も見られましたが、最後の方は赤き血のイレブンを全力で歌っていました。こうやって、新規のサポーターがまた生まれていくんだなと感じました。
 ノックアウトステージ、中立地(という位置付け)開催の一発勝負。ACL準決勝、アジア東地区の決勝戦。これほど緊張感高まる試合はなかなかないでしょう。中には、サッカー人生の中で最も緊張感が高まった試合だった選手もいるでしょう。戦術・戦法あるいは技術を超えた魂のぶつかり合いのような試合だったと感じる一方で、だからこそ体に染みついた戦術が体現された試合だったように感じられたので、この試合も敢えてレビューを起こすこととしました。課題や選手の成長含め、得られたものは計り知れないものだと思います。
 翌日以降DAZNで見ながらちょこちょこ書きました。一歩引いて見て文字に起こしてみると課題も挙げてしまいました。相手も強敵でしたので仕方ない部分と、どうしても決勝を見据えると手放しで喜べない部分もあると思ってしまい、あまり触れたくなかったのですが課題も含め書き連ねてしまいました。書いておきながら矛盾しますが、そもそもこの闘いは勝つことが全てに優先されます。内容は二の次、1点取ってドン引きサッカーでも良い。リーグ戦はそれではマズいですが、一発勝負のトーナメント、それもACLですからともかく勝つことが正義です。ですので、まずこの大一番に勝ったこと、それだけで選手やスタッフ、チームは称賛されるべきだと思います。じゃあなんでレビューなんてするんだという話なんですが笑、そもそもあくまで私個人のサッカー観戦力向上が動機でやっていますのでその点はご容赦いただければと思います。矛盾のようで何と言うかうまく言えませんが、課題は今後の伸びしろとして生かしてほしいと思いながらも、この試合についてはとにかく選手は誇りに思ってほしいです。全選手がそうあってほしい。反省は二の次で良いです。それほどの試合でした。なるべく現地で感じた空気感も大事にしながら書いたつもりではあります。あれだけの激闘でしたので、文量も必然的に多くなってしまいました。なお、試合中は絶叫・悲鳴・ブーイング・声にならない声しか発しておらず、感情もジェットコースターとなり、疲労もあって試合後は燃え尽きた灰のようになりました。感動や勝利の実感は翌日の起床後でした。なので観戦中にこんな冷めた視点で見ていません(見られません)のでその点もご理解をいただければと思います。また、現地観戦したジョホール戦、惜しくも行けなかったパトゥムユナイテッド戦も順番前後しますが簡単に振り返ります。

韓国王者にも有効だったビルドアップからのチェンジオブペース


 現地でも何となく感じていて、改めてDAZNで見返しても感じたこととして、率直に浦和の戦術が全北現代のそれを上回っていたかなと思います。特に前半開始からしばらく、攻撃・守備両面で浦和のやり方に対して手を焼いている様子でした。後方からは非常にうまくビルドアップし、相手の中盤を抜けると一気にスピードアップします。好調の要因である「速攻」が韓国王者相手にも威力を発揮しました。特にビルドアップのゆっくりとしたボール回しと中盤を抜けた後のスピードアップ、いわゆるチェンジオブペースで相手に混乱を生じさせるのだと思います。
 全北現代もビルドアップに対して全く制限を掛けていなかったわけではありませんが、限定的でした。その対策はシンプルに岩尾にはマークを付ける、です。この試合、ビルドアップで岩尾には誰かが必ず見るようにしていました。岩尾には自由にやらせないことにより、効果的な展開を抑止しようという狙いでしょう。ただ、ショルツや岩波には制限を強く掛けなかったため、ショルツは何度も持ち上がり、岩波は何度も鋭い縦パスを入れられました。また、下りてくる佳穂にもそこまで強くは当たりませんでした。なので佳穂もターンして前を向くことができていた。

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ビルドアップ時の全北の対応

 この様子を見て全北現代に対して「緩い」イメージを持たれた方もいるかもしれませんが、全北現代は中2日、2試合連続120分試合をした後の3戦目です。リトリートしか採りえなかったというところでしょう。ビルドアップの制限は最低限に留めた。また、解説の水沼さん曰くグループステージの横浜FM戦でもリトリートだったということなので、ビルドアップの上手いチームに対してはそもそも深追いしない方針ということもあるでしょう。特に一発勝負の中で相手の土俵で闘うのは大きなリスクですから、体力面、戦術面両面で賢明な選択だったと思います。
 当然、中盤から後ろは強度の高い守備が待っていましたが、これも比較的うまく躱しながらゴールに迫っていました。前述しましたが、ビルドアップからスピードアップ、チェンジオブペースが効いていました。得点シーンも、話題となったボールボーイの素早い「パス」もあり、相手の隙をついた形で先制点を奪うことができました。

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11分先制点

 最もデリケートなエリアであるペナルティエリア横にフリーで進入させてしまったことは全北現代のミスと言えるでしょう。浦和は戦術でしてやったりというゴールです。この時間帯に得点を奪えたことが非常に大きなポイントとなりました。

 もう1点、良いシーンがあって、もしかしたら既に練習している型なのかもしれませんが、偶然のようにも思えて判断がついていません。もし偶発的に表れた形なのだとしたら、今後ぜひこの形を決まった型として練習した方が良いのではないかと感じたものがありました。19日のジョホール戦の3点目と酷似しています。36分、松尾からのクロスが流れて大外の佳穂に渡るシーンです。この前もダイナミックな攻撃を見せ(松尾の縦パスからモーベルグがミドルシュート)、クリアボールを岩尾が競り勝ち関根が回収します。関根が右に開いた松尾に展開し、松尾が縦に仕掛けながらアーリークロス。これが奥の小泉への絶好のパスになります。速いクロスですが、パスのようなイメージです。

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36分の松尾のクロス

 ジョホール戦でもそうだったのですが、DF、GKとも完全に佳穂を見失っています。恐らくクロスに佳穂が飛び込むイメージがなく、完全に視界から消えているのだと思います。逆サイドからですが、昨年、敦樹が横浜FM戦で決めたゴールにも似ていますね。これはJリーグでも使える型で、現在の上背がない浦和のFW陣でも決められるパターンで得点量産の形となる可能性を秘めています。ですので、是非この形を突き詰めていってほしいなと思います。クロスによる得点がなかなか望めないのが現在の布陣の弱みではありますが、工夫次第で強みにできるのではないかと感じられたシーンでしたので取り上げました。

大舞台と強敵に打ち克つ精神力


 前述の通り、戦術面では浦和が上回りました。ですが、個人の能力では全北現代に分があったかなと見ています。だから同点に追いつかれ、一度は逆転されてしまった。松尾や佳穂から始まる効果的なチェイシングで追い詰めても、ひらりと躱されてフリーのスペースに展開されるシーンが幾度もありました。個人個人のスキルやスピード、球際の強さはJで見れば屈指のレベルと言えるものでした。Kリーグ5連覇ですので、それも当然と言えば当然ですが。1対1の局面では相手に分があるシーンが多かったですが、それでも球際で浦和の選手たちは一歩も引かないメンタルを見せてくれました。例え相手が上手でも気持ちでボールを奪い返す気迫がこもっていた。その闘いで一歩も引かなかった点も勝利の要因だと思っています。球際というのは、チキンレースのようなものだと現役時代に感じたことがあります。相手に気迫を見せつけながらも、どこまでやったらファールか、自分や相手が怪我
をしてしまうか、どこか頭の中は冷静であり、「熱く冷静に」ファイトしなければなりません。相手は韓国王者です。いわずもがな、日本のチームに対する気迫は煽る必要なく燃え滾っているでしょうし、王者としてのプライドと巧さがある。球際の観点で言えばアジア最強の相手でしょう。そんな相手を前に堂々と闘った浦和の選手たちを本当に誇りに思います。球際というのは不思議なもので、ここで負けるとセカンドボールも相手側に転がってくるようになります。本当によくぞ闘ってくれた。戦術で上回ろうと、いくら外国人選手のクオリティが高くても、球際で負けたら流れが相手にいってしまうのです。勝利は球際で怯まなかったことも大きな要因であると思います。
 もっと言えば、メンタルの部分では相手だけではなく状況にも打ち克ちました。ACL東地区決勝、一発勝負、異常なボルテージの埼玉スタジアム、浦和サポーターという舞台の上でも全く臆することなく立ち向かいました。序盤で主導権を握れたことは、前述の通り戦術面で上回れたことのほかに、この大舞台にいつも通り入ることができたことが大きなファクターでしょう。逆に、全北現代の選手は観客数の点から言ってもなかなかない経験と振り返っていたので、雰囲気に呑まれたのは彼らの方だったかもしれません。
 8分にグスタボが西川、ショルツと激突したシーンは相手の覚悟の度合いを測ることができました。グスタボは1瞬気絶したように思えましたが、全北現代の選手たちの落ち着いた立ち振る舞いを見る限り、球際で負けない覚悟がチームにあったのでしょう。怪我をさせようという意識は感じませんでしたが、危険なタイミングでの激突であり、ああいうシーンを見せられると対戦相手は萎縮したりするものです。ですが、浦和の選手はその後も怯むことなく球際で闘っていた。
 精神力で言えば、「諦めない」メンタリティも随所に見えました。例えば、60分の佳穂のスライディングによるカウンター阻止は、佳穂が諦めていれば確実に1点でした。

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佳穂のスーパーなカウンター阻止

 なお、このシーンは佳穂はもちろん、一発で躱されてしまった大畑、そして関根が必死に戻っています。全力疾走です。この3人は一瞬もスピードを緩めていません。全速力で全力で戻ったからこそ防ぐことができた1点でした。
 何といっても延長後半の同点ゴール、残り4分で逆転を許し、絶体絶命の状況でも、サポーター含め決して諦めなかった。北はチャントを途切らすことなく歌い、南でも一瞬で切り替えてまたチャントを歌い出しました。サポーターを含めた「諦めない」メンタリティが埼スタを包み、失点直後のムン・ソンミンの1対1のシーンで西川のセーブに繋がった。ここで仕留められていたらさすがに厳しかった。このセーブもあり、皆が「まだある」と更にボルテージを上げることができた。
 先発に大久保ではなく関根をセットしました。これも球際やファイトできるところを考えてのものでしょう。大久保の個人技は相手の組織を破壊する威力がありますが、守備面ではフィジカルでやや難があり、関根の計算できる頑張りとフィジカルに重きを置いたということになります。関根は恐らく指示された通りだと思うのですが、まず守備からというボランチの選手のような意識が感じられました。実際、インサイドハーフのような振る舞いだったと思います。ポジションからすれば自己犠牲とも思える姿勢ですが、強敵相手の一発勝負では割り切りも必要だし、こうしたフォアザチームの精神で行動できるところが、今の関根の良さだと思います。若いころのイケイケなプレーからすると想像できなかったですが。改めて映像を見返すと、相手のキープレーヤーである8番のパク・ソンホを相手に球際の部分、ファイトする部分で本当によく闘ってくれていた。先ほど図で紹介したシーンもそうです。観戦中は関根に物足りなさも感じましたが、まだまだ見る目がないなと反省しました。
 大舞台と強敵に打ち克つ精神力は、選手やスタッフのみならずサポーターを含めた「浦和レッズ」というチームに宿っているのだと確信しました。だからこそ、ACL通算4回目の決勝に進むことができた。こうした経験を積み重ねて強さとなり、伝統が築き上げられるこ とを実感しました。ACLを罰ゲームと捉えていては、絶対にこうした経験値が得られません。浦和はACLに対しサポーター含め一丸となって全力で取り組んだ結果、他では経験できないものを築き上げているのです。ACLが浦和を特別なものにしていることは間違いないし、これからもサポーターも含め浦和はACLに全力で取り組んでいくでしょう。

さらに強くなるために、アジア王者に返り咲くために

 これまでに述べた通り、浦和は戦術的に上回っていましたし、選手のパフォーマンスも持っているものを最大限発揮していました。試合は浦和ペースで進んでいたと言って良いでしょう。ですが、120分を闘って一度は逆転され、ユンカーの劇的なゴールで同点に追いつくという展開でした。感情的には諸手を挙げて称賛したいところですが、戦術的には薄氷の勝利、崖っぷちの勝利であったことも事実として受け止める必要があります。決め切るという点も大事ですが、やはり失点シーンは同じ轍を踏まないようにしたいところです。
 まずPKの場面です。これはバーロウのダイアゴナルのパス、そして大畑の足が出てくることを見越して右足を外に出した相手選手21番を褒めるべきかもしれませんが、失点の確率の高いシーンなので、今後は何とかこのシーンを潰したいところです。

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 こうして図にしてみると大畑を責めるのは酷な気もします。もちろん前に入られないことは鉄則ではあるのですが、すぐにリカバリーに入っているし、そもそもPKかどうかというと笛を吹かない審判の方が多いでしょう。このシーンはダイアゴナルのパスを入れられた時点でかなりマズいです。なので、バーロウに中に進入させない、そして斜めのパスを許さないといった対応が必要だったかなと思います。
 続いて、116分の失点シーンです。実はこのシーンは布石があって、19分のショートコーナーの際にも誰もケアできていませんでした。これを全北にうまく使われました。土壇場で有効手を思い出し実践する抜け目のなさ、さすが韓国王者です。

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あそこまで余裕を持たせるとさすがに西川もノーチャンスです。ショルツも前に入られてしまった。ここは誰かが19分のシーンを思い出しショートコーナーのケアをするしかなかったのかなと思います。大久保がボールサイドにもっと近づいていくか、誰かが大久保に指示をするべきだった。
 これはミーティングで全員の共通認識として刷り込んだ方が良さそうです。恐らく、Jリーグでも真似をして試してくるチームが現れると思います。
 また、課題というか、正確に言うなら久しぶりに弱点が炙り出されたシーンが見られました。ムン・ソンミン、変なダンスをする人ですね、あの選手が入ってきて、かつ追加点を奪おうと浦和が前のめりになって攻撃に人を割いた場面で、ネガトラの速攻により大きなピンチを数回迎えました。特に116分に逆転ゴールを許してからは完全に前掛かりになり、それをムン・ソンミンに突かれました。失点直後の116分は西川の好セーブ、続いて118分はムン・ソンミンが外してくれたので事なきを得ましたが、ショルツ・岩波コンビの弱みが久しぶりに浮かび上がった場面でした。なお、誤解のないように言いますと、弱みと表現しましたがこれは批判ではなく得手不得手の話です。逆に、ショルツの持ち運び、岩波の縦パスはアジアでも無双であると思います。誰も持っていない強みもあるし、もちろん苦手な部分もあるよという話。全てを兼ね備えている選手など存在しません。
 ショルツ、岩波ともスピードで勝負するタイプのFWに相性が悪く、特に小兵タイプですばしっこいタイプに手を焼きます。今のJリーグで言うとマリノスのマルコス・ジュニオールや仲川みたいなタイプですね。ムン・ソンミンはまさにそうしたタイプで、彼が出場してから混乱を来していました。
 今シーズン、浦和の守備が安定しているのはご存知だと思います。2022年9月2日時点で総失点が24、J1で最も低い数字となっています。もちろん消化試合数が違うので参考値でしかありませんが、ショルツ・岩波の両CBは充実したシーズンを送っています。西川のハイパフォーマンスもありますが、一番の要因はチームとしてのリトリートのうまさだと思います。ネガトラ時に即時奪還を狙いつつ、難しいと見るやすぐに帰陣、陣形を整えます。この切り替え、スピードが素晴らしく速い。毎試合のように解説の方に褒めていただいている気がします。全員が一つの有機体のように意思を統一して組織的な守備を行っているからこそ、ショルツ・岩波の良さが活きてきます。攻撃が停滞していた5月頃に、私はTwitterで攻撃により人数を割き、アタッキングサードでのアクションを増やすように提言していましたが、この試合を見てこれは得策ではないと痛感しました。まさにミシャ時代と同じ轍を踏む破滅の道です。せっかくリカルドが構築してきたポジショナルプレーによる優位性を失ってしまう。バランスを崩して相手のファイナルサードに人数を割くことは、被カウンター時の危険度も相対的に増してしまうことになります。そして、ショルツ・岩波コンビの特性としてそこに弱さがある
ここまで考察してみて、改めてミシャ時代を考えてみると、最も隆盛を極めた時期、遠藤航が加入し3CBの真ん中を務めていました。きっと彼がラストピースだったのでしょう。精神的な支柱は阿部キャプテンなど別の選手が担っていましたが、戦術的な面においては前線での興梠慎三とともに後方では遠藤がキープレーヤーだった。遠藤が加入していなければシーズン最多勝ち点もルヴァンカップ制覇もなかったんだなと気付きました。スピードもあり、フィジカルも空中戦も強く、ビルドアップもうまい。平均点の高いプレーヤーで、その後の活躍も周知の通り。ミシャが2年連続のオファーを出し、鹿島との争奪戦となりましたが念願叶って獲得することができた遠藤。ミシャが遠藤にこだわった理由が分かった気がしました。そして、遠藤をもってしてもタイトルには手が届かなかった。悪夢のレギュレーションのせいではありますが、それでもあの試合に勝てなかった。ショルツが遠藤に劣るとは思っていませんが、偉大な二人をもってしても、矛と盾の組合せ次第ではやられてしまう。
 今のCBコンビは、スピードのあるタイプ、ユンカーみたいに直線でぶっちぎるタイプもそうですが、小回りの利く小兵タイプも苦手とします。そのため、遅攻でバイタルにどんどん人を送り込む戦術は残念ながら愚策です。現在の札幌のようになってしまう。守備面を考えたらその攻撃手法は取れないということです。攻撃と守備を2分化できない理由でもあります。

 しかし、今の戦術スタイルはリカルドが当初思い描いていたものなのか私は未だに分かりません。岩尾のインタビューなどを見るとシーズン当初にやりたかったこととは違うことは間違いなさそうですが、一方でFWの補強に関しては、頑なにスピードとアジリティ、走ることが特長の選手に拘りました。恐らくロングパス一本というのはあまり考えていなかった攻撃の形ですが、保持しつつ速い攻撃というのはやりたかった形の一つなのでしょう。あとはFWからのチェイシング。FWの選手が守備タスクをどれだけ担ってくれるかという点は、今シーズンのJの順位表にも現れている気がしますし、リカルドサッカーでは重要なポイントの一つだと言えます。先発でユンカー・江坂のセットではなく、松尾・佳穂のセットが起用されているのも、最終ラインの特徴も踏まえた上で、組織守備のクオリティを高めるためであると言えます。もちろん攻撃面での貢献も多大にありますが。
 話が少し逸れましたが、ショルツ・岩波のコンビ、犬飼が戻ってきても同じですが、CBの強みを生かすために、弱点を隠すためにリトリートは不可欠ですし、引き込んで速攻という武器も使用できるようになり一石二鳥の状態が今です。なので先制点を奪うと盤石の形で試合を進められるし、逆に先制されると前がかりかつ遅攻になり浦和の守備の弱点が表出します。先制されても今の浦和なら追いつけるし逆転も可能ですが、なかなかその経験ができていなかった。今回、土壇場も土壇場で追いついたことは自信になるでしょう。韓国王者相手に絶体絶命の状況でも追いつくことができた。この経験をすることにより、例えばJリーグで先制されても、あの時も追いつけたからと余裕を持てるようになる。若い選手も多い中でこれは非常に大きなことだと思います。この後のJリーグで、転勝利を収めることができると更に来期以降に期待が持てそうだと思っています。勝ち方にまで注文を付けるのはさすがに要求しすぎではありますが笑。ともかく、ACL準決勝全北戦との闘いは、ACLのタイトル獲得の挑戦権、そして何よりチームにとっても選手にとっても本当に大きな糧、何物にも代えがたい財産になったと思います。
 いかがだったでしょうか。魂のぶつかるような激しい闘いで、次の公式戦まで1週間超空いたことは、選手のみならずサポーターにとっても良かったのではないでしょうか。私も2日くらい抜け殻のような心境になりました。また気持ちを新たにリーグ戦に臨みたいと思います。なんといっても鹿戦、この試合も内容はさておき勝利だけが求められる試合です。また魂をぶつけて闘ってほしい。個人的には次回参戦はセレッソ戦かな。

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