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~理想的な大会リスタート~ 浦和レッズレビュー10 2022年8月19日 ACL2022ベスト16 ジョホール戦

 レビュー10回目です。今回はホール戦ACL2022ベスト16 ジョホール戦です。実は順番が前後し、全北戦や鹿島戦のレビューが先に出てしまっている状況で、いつもよりは簡素にまとめています。ご容赦ください。
この試合、久しぶりに現地参戦できました。南バックスタンドでの観戦となりましたが、声出し応援も可となり、南でもチャントを歌うような場面もありました。DAZNで見てみると空席が目立ちましたが、現地では結構多くの人が参戦していました。平日のACLベスト16で約20,000人の観客。本当に浦和のサポーターはACLが好きだな、と感じました。
 本当に素晴らしい、心強い同志たちです。この火を絶やさないようにしていきたいですね。私は家も浦和ですし、他人事にせず、この先何があっても、J3まで落ちるようなことがあってもずっと微力ながら支えていきたいと思います。不吉なことは口にするな、ですね。すみません。
 いよいよノックアウトステージです。前回のセントラル開催からしばらく期間も空き、どのチームもグループステージとは違う様相だと思います。何より一発勝負。埼スタでできることは大きなアドバンテージですが、内容よりともかく勝利が求められます。その点で、いつものリーグ戦より緊張感は増すかもしれません。その中でも結果としてしっかり大勝で勝ち切れた点は選手・監督・スタッフが称賛されるべきだと思いました。

勝負を分けた守備のクオリティ

 前半、いきなり相手GKのパンチングによるクリアが松尾に対するファールとなり、PKのチャンスを得ます。よくよくスローで見れば確かにボールに触れておらず、松尾をパンチしていましたのPK判定でおかしくないのですが、Jリーグの審判はなかなか笛を吹かないだろうな、という場面でした。また、順番が前後した全北戦のレビューでも書きましたが、基準に癖のある審判も多いACLでは珍しいタイプの主審だったのかなと思っています。ボールに触れないコンタクトには厳しく笛を吹くタイプの方でした。個人的には好感が持てるジャッジで、これが自軍に対してのものだったとしても、ボールに触れず顔面殴打したわけですから、よく見てたなと感想だったと思います。こういう審判が増えれば良いのにな、と思います。クリストファー・ビースというオーストラリア人の方です。覚えておこう笑。
 J1第28節の鹿島戦もそうだし、同節の福岡-名古屋戦もレフェリングについて論争が起こっています。非常に難しい問題ですが、そもそも論で言うと笛を吹く基準がハードになるほど(つまりなかなかファールにならないようなレフェリング)、怪我のリスクが増えてしまいます。一方、ファールを取りすぎるとシミュレーションが増えるわけですが、ファールはファールとしてしっかり笛を吹き、シミュレーションは必ずカードを出すなど厳しく対応すれば、スペクタクルは失わないのではないかと個人的には思っています。
 この後にも、モーベルグのスーペルゴラッソとなったFKを与えるなど、ジョホールは与えてはいけないところでファールを与えてしまいました。勝負を分けたのは守備面でした。

16分 2点目のFKとなるファールの場面

 この場面では、まず宏樹が持ち上がっている場面で一人プレッシャーに来ますが、簡単に縦に進みます。中を切っているつもりでも、縦に持ち運ばれ最終的には中の敦樹にパスを通されてしまっています。敦樹→佳穂と繋がれ佳穂のターンから間髪入れずにスルーパスが通されると走り込んだ大久保についていけず体当たり、イエローカード。おまけにモーベルグにスーパーなフリーキックを沈められるなど、散々なシーンでした。取りどころが明確でなかったし、プレッシャーもエクスキューズ程度で強度が足りない。
 攻撃面については、マレーシアリーグで圧倒的な成績を残している9番のベルクソンとスピードのある45番のフォレスティエリという選手はさすがという印象でした。その他の選手も技術やスピードがあり、ボールも収まるしビルドアップもしっかりしていました。個人技で大畑が躱されクロスを上げられるといったシーンもありました。
 反面、守備面はまだ粗削りな部分があるなという印象でした。前述のシーン含め、慌ててファールで止める場面が多く、組織としての守備と言うよりは即興の感が強かった。また強度も足りなかった。そもそも一人ひとりがボールを奪うという意識が不足していた感があります。ジョホールは国内に敵がいないほどの強さを誇りますが、逆に強敵に攻め込まれる経験が不足していたように思えます。そのため、組織的・個人的守備能力を磨く機会がなかったのかもしれません。
 前半終了間際の3点目は、完全にジョホールの心を挫くものとなりました。南だったので目の前でモーベルグのゴールが決まったのですが、ジョホールの選手の体から気力が抜けていくような、そんな意気消沈ぶりでした。完全に決定打となったゴールでした。

38分3点目①
38分3点目②

 西川から一気にモーベルグに繋ぎカウンターに。中から外に作り直し、松尾がファーの佳穂にクロス。佳穂はワンタッチでモーベルグに合わせ、モーベルグは流し込むだけのゴール。見事な連携のゴールでジョホールの戦意を削ぎました。
 これで前半終了。後半にも2点を決め、結果的には5対0の大勝でした。試合序盤を見る限りそこまでの力の差は感じなかったものの、埼スタの雰囲気もあり、3点目を決められて諦めてしまったことは、大敗の要因として挙げられるかなと思います。

理想的な大会リスタート

 点目は攻撃陣が多彩に絡み、右から左と揺さぶりをかけた非常に理想的なゴールでした。このゴールで勝負を決めた浦和は、後半から3人交代させることができました。集中開催、準決勝まで中2日で3試合を闘う強行日程ですので、理想的な展開となりました。
また、交代で出場した選手もしっかり結果を出した点もチームにとっては好材料です。ユンカーと江坂のコンビは、守備タスクの面とポジトラ時のパフォーマンスから控えに甘んじている状況ですが、こうして結果を出すことはポジション奪取のアピールにもなりますし、リカルド監督を悩ます好材料になると思います。
 4点目も素晴らしい形からのゴールでしたが、特筆すべきはやはり5点目でしょう。江坂、ユンカー、そして西川の特長によってもたらされた素晴らしいゴールでした。

90分 5点目

 西川のボールもそうですが、何より江坂のトラップが素晴らしいですし、その後関根に預けてまた裏抜けしているところが良い。この試合を見てつくづく感じたのは、江坂は走るファンタジスタだということ。パスミスなんかも含めて、何となく往年のロベルト・バッジョを彷彿とさせるところがあります。全然プレースタイルは違うのですが。この日もミスが多いけど決定的な仕事をする、ワンプレー、ツープレーで仕事をする共通点を見せてくれました。なので江坂についてはとても評価が難しい。ユンカーの場合は自分の形になれば仕留めてくれるし、そうでなければ奪われる、ある種「計算が立つ」のですが、江坂の場合は素晴らしいトラップの後にパスがズレたりシュートがあらぬ方向に飛んだりする。もう一時期の勤続疲労からは回復してコンディションも戻ってきてはいると思いますが、フィーリングの方がまだ万全ではないということなのでしょうか。しばらくは後半から使っていって、徐々に調子を上向きにしていくしかないんですかね。
 松尾と佳穂のコンビが攻守にわたってよいので、正直今は代える理由がありません。横浜FMのように極端なハイラインの相手などであればユンカー・江坂スタートでも良いかなと思いますが、基本は松尾・佳穂で行くでしょう。あとは、リンセン・シャルクが戻ってきたときに、一番良いセットはどれかまた模索していくのでしょうか。松尾と佳穂が計算立つので今は贅沢な悩みですね。初夏までの不振を完全に抜け出した感があり、本当に良かった。
 いかがだったでしょうか。パトゥム・ユナイテッド戦も簡易ではありますがこの後レビューに残していきたいと思います。ぜひ感想などいただければと思います。ありがとうございました。


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