【1】帰りたいスタジアム

皆さんは帰りたいなとふと思うスタジアムはあるでしょうか。

理由は人それぞれあると思います。
好きなチームのホームだから、印象に残る試合があった所だから、あの人と訪れたスタジアムだからなど。

僕にとって帰りたいスタジアムは、辛かった時の心の拠り所となってくれたからとでも言うべきでしょうか。

ベルリン中央駅から電車で一本、ベルリン中心部に位置するベルリンオリンピアシュタディオンが僕の帰りたいスタジアムです。

今から三年前大学に入学してすぐの頃、原口元気(当時ヘルタベルリンに所属)の試合を観たい一心で、向こうの語学学校に行くから！と親を説得して金を立て替えてもらって飛び込んだ初のドイツ。

「みんなドイツ語しゃべらないし、英語ばっかりだし、別にパーティーとか行きたくないし」

その当時、今以上に大人数とつるむのが嫌いだった僕は、学校のスタッフやよっ友オランダ人が勧めてくるアクティビティの誘いを全無視し、語学学校と牢屋みたいなアパート(ホームステイが嫌でAirbnbで適当に探した結果)の往復でベルリンでの1ヶ月のほとんどをやり過ごしました。

よく見る海外に行って国際交流サイコー！という絵とは程遠い生活です。

SNS映えする生活は諦めるしかないものの語学学校は大抵2コマぐらいで終わるので自由な時間は馬鹿みたいにあります。

選択肢は１つ。元気に会いに行くしかありません。

当時、試合日前後以外は基本的にヘルタは練習を見ることができました。ブンデス昇格後異例の躍進を遂げていたヘルタですが、ファンの数は少なく練習に来るファンとなったら更に少なかったです。父親が週末に子供の練習を見にきたレベルでの選手との距離感はとても驚いた記憶があります。

まぁ最初のウキウキ感も通うにつれて薄れていくわけで、今日もカルーは随所でサボってるし、元気は練習後ダルダイに絞られてるなぁ代わり映えしないなって。

ヘルタの練習場はオリンピアシュタディオンと同じ駅に位置するのですが、自然と練習帰りにスタジアムを通ることが楽しくなってきました。

何と言ってもこのオリンピアシュタディオン、とても趣きがあるんです。僕はこの建築から侘び寂びを強く感じました。今はなき東京の旧国立競技場のコロッセオ感を最大値にした感じとでも言えば伝わるでしょうか(伝わらない)

ベルリンには様々な観光スポットがありますが、オリンピアシュタディオンが僕的にはイチオシです。ドイツに行った際は是非訪れてみてください。

試合日は多くの人がいて賑やかですが、試合日以外の夏の夕暮れのオリンピアシュタディオンが僕の脳裏に焼き付いている風景です。

スタジアムの周りで若者がスケートボードなり水泳なり(プールが併設)思い思い遊んでいるのを横目にずっとスタジアムを眺めていました。

今振り返ると寂しいですがとても幸福な時間だったと思います。観光スポットを矢継ぎ早に巡っていく旅であったら発見できていなかった風景かもしれません。

それから余裕があれば最初のワクワクが通り越すぐらいの期間で旅行をし、そこで見える風景を楽しむようになっていきました。そんな体験をここで徐々に発信していければといいなと思っています。