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神の話#3 有神論

3 有神論

 どうして人間が神ということについて考えるようになったのか、あたしの個人的な見解を述べてみようと思いますが。
 ある天才と言われていた大学教授は、仏教とキリスト教を徹底的に分析した結果、キリスト教に入信した。大学教授であり、徹底的な分析家と思われる彼なら、論理的なイメージのある仏教に入信する方が自然なのではないかと思うかもしれないですねぇ。しかし、実は違った。
 どうしてキリスト教が論理的なことが好まれる西洋にほとんどの信者がいるのでしょうかね。そして、日本にキリスト教徒は少ないのはどういうことなんでしょう。その結果あたしはね、こう思いました。
 「なんで」を繰り返すと、必ず分からないところに到達する。論理的に考えるとは「なんで」を重ねることですからね。
 なんで、このケーキは甘いのか。砂糖が入っているから。
 なんで、砂糖が入っていると甘いのか。砂糖は糖質が多く含まれているから。
 なんで、糖質が多く含まれていると甘いのか。糖質の中のブドウ糖が脳内の甘味に反応するシステムに反応して分解する過程で甘みを感じるから。
 なんで、甘味に反応するシステムが甘味に反応するのか。甘いとは何か。なんで甘味が必要なのか・・・・・・・・・・
 なんで、人間が甘いと知覚するものが存在するのか、なんで、知覚があるのか、なんで人間は存在するのか、なんで宇宙はは、なんで世界は、なんで、なんで、、。
 論理的な思考の先には「不明」がありますな。そして「不明=神」と言ったんじゃないかと思うんですよねぇ。あたしたち人類は、科学の進歩によって神を超越することはできませんな。むしろ、神に近づくことこそが科学的行為で、神の枠組みの中にしか科学は存在しないのかもしれないですよ。世界で最も有名な科学者でさえ「私は有神論者だ」と宣言しているんです。そういう理由で未だに有神論者、キリスト教徒は大勢いるんじゃないでしょうかねぇ。そう考えると論理的な思考を好む西洋人には「神」は親しい存在なのではないかと考えるようになっています。
 神様は、世界を創る前に誰かに言ったんですかねぇ。どうなんでしょうか。
「あのぉ、こういう世界を創ろうと思うんですけれども、、」とか言ってね、企画書を上司に見せたりして、
「おう! 見せて見ろ。」
 上司は数分その企画書を凝視する。そのとき、神様は思ったでしょうなぁ。
(こんな世界で大丈夫だろうか)
 いやぁ、頼りない。だってねぇ、世界って、あたしたちの住んでいる場所ですからねぇ。頼みますよぉ。
 上司はなんて言ったんですかねぇ。
「おい、神ぃ! 読んだぞ。」
「ありがとうございます。いかがでしたでしょう。」
「まあ、大体良いんだけど、ちょっと、赤でメモしといたから、見ておいて。」
「はい、ありがとうございます。」
 神様が赤で修正された企画書に目を通す。
 神様は、世界の材料費を五千兆円と書いていたが、「予算は二千兆円に収めること」と上司のメモ。さらに、神様が想定した世界のターゲットは、「全生命体」と書いていたのだが、「もう少し絞って。例えば、三十代後半のサラリーマンなど」という上司のメモ。
 神様は、二千兆円で、ターゲットを絞った世界を創ることになったから、あたしたちはなかなか貧乏から抜け出せないんですかねぇ。神様ぁ、もっと上司に反論してくれよぉ。予算を増やして、ターゲットはもっと広くって、ねぇ。それは世界を創る常識でしょぉ、ってあたしが神様の会社のこと何も知らねぇんですがね。。

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