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生家と当主

家の処分をどうするか、
家主も気になっていたことから、
お試し活用という申し出を
あっさりと許可して下さった。
ご自分が愛している生家の行く末は家主も気になっていたのだろう。

ここの家は当主で四代目。
初代が分家して建て、家の基礎をつくった。
二代目が鉱山投資で失敗した。
三代目が財産を処分して満州へ渡った。
四代目が当主で、満州で生まれた。

戦後、引き上げて移り住んだが、
高校を卒業すると東京の大学に進んだ。
卒業すると新潟鐵工に就職、
すぐに38豪雪に遭遇する。
前代未聞の豪雪のために、
新潟駅から上野駅まで約一週間という時間を要した。

除雪態勢の整備が叫ばれるなか、
会社から除雪機の設計を託される。
雪の質や重さ、ひと口に雪といっても毎日異なる。
除雪機の設計は雪との戦いだったという。
そして、ディーゼル除雪機が国内で初めて誕生した。

それから設計者として、忙しい日々が始まる。
国内はもとより海外へも出向いたり、
大学で教鞭をとることも・・・・
家は親の棲み家にはなったが、
当主はついに住むことは叶わなかった。



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