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映画『Fate/Grand Order-神聖円卓領域キャメロット-前編』レビュー

【冬来たりなば春遠からじ、待つよ2021年春の後編を】

 マシュ・キリエライトは尻であり、玄奘三蔵は乳である。以上。

 それでアニメーション映画『Fate/Grand Order-神聖円卓領域キャメロット-前編』を説明してしまってはあまりに短絡が過ぎるので、もうちょっと説明するなら、マスターの藤丸立香を守って盾を構えてさまざまな攻撃を防ごうとして踏ん張るシールドのデミ・サーヴァント、マシュ・キリエライトを守られる側から見た時の、その力の張った尻はとてもとても丸くて素晴らしいものであった。

 そして、オジマンディアスの居城にたどり着いた藤丸立香やマシュ・キリエライト、そしてアーサー王の円卓の騎士だったベディヴィエールが、オジマンディアスの下僕となることを拒絶し、城から出て行こうとした場に居合わせて、アーサー王との対決を目的に山岳地帯にある何者かの拠点を目指す藤丸立香たちについていくことになったキャスターのサーヴァントであり、その真名を玄奘三蔵という人物の特徴は、どこまでも前に張り出して並んだガスタンクのような形状を見せる乳であった。以上。

 他にないのか。いや、あることはあるけれど、聖都なる場所を砂漠真ん中に作っては、押し寄せる難民の一部だけを救って、ほかは殺害する獅子王と円卓の騎士たちの蛮行を止めようと、かつて生前のアーサー王に付き従って最後を看取ったベディヴィエールが旅する過程で、世界が滅びるのを止めようとして、カルディアからやって来た藤丸立香やマシュ・キリエライトやレオナルド・ダ・ヴィンチと道連れになって、まずは聖都に行き、そこで変貌した円卓の面々に愕然としつつ命からがら逃げ出す展開は淡々として山場がない。<BR><BR>

 そして、ベディヴィエールたちが向かった別の王国で、玄奘三蔵とは対極的なスレンダーさがなかなか良いニトクリスらに案内されて、ピラミッドの中に入るもそこも放逐。玄奘三蔵も加えて向かった山でも一悶着の果てに、獅子王からの鉄槌が下ろうとするのを、どうにか防いでまずは前編が終わりとなってしまった内容だけに、2021年春の後編で本格的な戦いが始まるまでは、判断のしようがなというのが目下の気分だったりする。

 それでも言うところがあるとしたら、だからやっぱりマシュ・キリエライトは尻であって玄奘三蔵は乳になるけれど、ほかにあるなら絵はSignal-MDが携わって、黄瀬和哉が総作画監督に入っている割にはテレビ的といったシンプルさで、演出もクライマックスの絶体絶命ともいえる場面、空から巨大な三角錐が落ちてくる場面の壮絶にして壮大な感じが今ひとつ感じられず、それをどうにかした時の開放感も薄かったような気がしてならない。

 溜めて溜めてもう駄目かと思わせてぶわっと払うような感じにできなかったのか。やるだけの体力が伴っていなかったのかな。そこがやはり気になったけれど、それでもストーリー自体はいろいろと切迫しているし、ベディヴィエールと獅子王や円卓の騎士たちとの因縁も気になるところ。そこに、孫悟空でもないのに自身を分身させて戦う玄奘三蔵の可愛らしさがあったり、助けられた女性のアサシン、静謐のハサンのこちらもニトクリスくらいにスレンダーな肢体の躍動感もあったりするから、後半での活躍に期待がかかる。

 獅子王はどうしてあそこまで残酷になってしまったのか。付き従う円卓の騎士たちの胸中はどうなんだろうか。出落ち気味だったニトクリスやオジマンディアスも参戦しての一大バトルを期待して、2021年春の後編公開を待とう。今度はプロダクションI.Gがアニメーションも制作だ。言い訳はできないし、聞かないぞ。(タニグチリウイチ)

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