映画『RWBY VOLUME4 <日本語吹替版>』レビュー

【未来の奪還には到らずとも絶望からの快復を成し遂げチームRWBYは次へと進む】

 ハン・ソロを賞金稼ぎに奪われ、ルーク・スカイゥオーカーがダース・ヴェイダーに衝撃的な言葉を告げられ、混沌の中にエンディングを迎え、先への不安と期待がないまぜになった気分で続きを待つことになった「スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲」になぞらえて、「RWBY VOLUME3 <日本語吹替版>」を語っていた。

 ビーコン・アカデミーがグリムとホワイトファングに襲われ壊滅的な打撃を受け、シンダー・フォールによってピュラ・ニコスに悲劇が訪れそしてルビー・ローズの銀色の瞳が発動をして迎えたエンディングで、ワイス・シュニーは屋敷へと戻りブレイク・ベラドンナは姿を消し、そしてヤン・シャオロンは腕を失って呆然とした気持の中にあった。そこから想像できる未来は、絶望からの快復であり別れてしまった仲間たちとの再会であり仇敵へのリベンジであり、そして明るくて希望に満ちた未来の奪還だった。

 違っていた。「RWBY VOLUME4 <日本語吹替版>」に描かれるルビーたちの姿は、最初の3部作でラストを飾った「スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還」のようには丸く収まらず、英雄たちの帰還とは行かないまま、混沌を引きずって誰もが思い悩み、考えあぐねてその場から身動きできずにいる。

 まずワイス。シュニー・ダスト・カンパニーを率いる父にミストラルへと連れ帰られ、屋敷から外に出ることを許されない状況で、周囲がビーコン・アカデミーのあるヴェイル陥落を不備のせいにして真実に目を向けないことに憤っている。そしてブレイク。ホワイトファングの中心的メンバーだった過去もあって、常に身を危険にさらしていることもあり、ヴェイル陥落後は仲間たちから離れて故郷のメナジェリーへと向かい父母の下、ついてきたサン・ウーコンとともに停滞の日々を送っている。

 そんなブレイクがビーコン襲撃事件の際にアダム・トーラスと出会い、戦っている場面に割って入ったところで腕を切り落とされたヤンは、アイアンウッド将軍の計らいもあってか、精巧な義手を送られながらもそれを身に着ける気にならず、変わってしまって戻れない自分を卑下して沈んでいる。

 ひとりルビーだけがミストラルを目指し、チームJNPRの中からピュラ・ニコスを除いたジョーン・アーク、ノーラ・ヴァルキリー、ライ・レンとともに急増のチームRNJRを結成して街道を行き、村を襲うグリムを退治しながら進んでいる。落ち込まず逃げもしないでやれることをやろうとする、その前向きさはさすがヒロインといったところ。それでも、自分が放った不思議な力を狙う存在が現れ、いったい何があるのかを戸惑っていたりもする。

 ハンターになる夢を抱き高い可能性も持ってビーコン・アカデミーへと入学し、仲間たちと出会い語らい戦いもして実戦もこなしていくなかで、いつしか芽生えていたかもしれない無敵の感情があっけなく取り崩され、ただの学生に過ぎなかった現実を突きつけられるのは、この社会ではよくあること。幼くして大人を翻弄する天才などそういるものではない。

 それでも、安穏とした日々ではない苛酷な体験が学生であってもティーンに過ぎなくても、ルビーやワイスやブレイクやヤンに強さを与え使命感を与えていた。一時の挫折に身を縮こまらせていたとしても、いつまでもそんな弱者に甘んじているような少女たちではない。そう感じることで展開の中、ワイスやブレイクやヤンが留まっている場所から踏み出すことへの期待を抱きたくなるだろう。果たして彼女たちは動くのか? 見守って欲しい。

 チームRWBYだけではなく、ジョーンやローラやライらチームJNPRにとっても、挫折からの快復の道程となっている。淡々としているライやいつも賑やかなノーラが過去にどんな経験をしていたのかが描かれる「RWBY VOLUME4 <日本語吹替版>」。その怒りにも似た戦いぶりが見られるクライマックスはこの回における最大の見せ場かもしれない。

 今までにない凶悪な風貌をしたグリムは、ライとノーラの過去にも関わる存在。血気も走るけれどそこをジョーンが抑えルビーが引っ張るようにしてチームワークを取り戻し、スピーディーにしてパワフルな戦いを繰り広げる。「RWBY VOLUME1 <日本語吹替版>」にも登場した、試験の中で巨大な空飛ぶグリムをチームワークで倒した場面にも並ぶ集団戦の迫力を楽しみたい。

 ローマン・トーチウィックの退場と、ニオポリタンの行方不明で当面の敵も消えたかと思いきや、より強大な敵の登場によってルビーたちの戦いは苛烈さを極めそう。四季の女神を同化させていたとはいえ、あのピュラを追い込んだシンダーを同格かそれ以下と見做すような人物たちがセイラムの配下として登場し、中にはルビーたちの前に現れ手練れのハンターだったルビーの叔父のクロウ・ブランウェンと互角に見える戦いを繰り広げる者も現れる。

 他の2人もいったいどれだけ強いのか。いずれ激突するだろう時が楽しみだ。ちなみに日本語吹替版ということで、セイラムの下にいる者にも声がついた。ドクター・ワッツは大川透で、巨漢のヘイゼル・レナートは大塚明夫、クロウたちの前に現れた凶暴そうなティリアン・キャロウズは塩屋翼といずれもベテラン揃い。聞かずとも浮かぶ声がピタリとはまるキャラクターたちで、最初からこの声で作られたのではないかとすら思えて来る。

 そんな癖の多そうな奴らがルビーたちの前に立ちはだかり、死んだはずのオズピンと何か関わりを持っていそうな少年オスカーの横を通り過ぎていった先、どれだけの混乱が起こり戦端が開かれるのか。気になる続きは未だ見えずこれからの配信となりそうだが、誰もが懊悩を経て自分を取り戻し、旅路へと足を踏み出したからには再結集を果たしてチームRWBYとして戦ってくれると思いたい。

 その傍らにはチームJN“P”Rも……といけるかどうか。そんな奇跡は起こるのか。何より物語は「スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還」のように前向きなエンディングを迎えられるのか。そうあって欲しいと願いつつ、まだまだ少女たちの戦いを見えて欲しいとも思いつつエンドロールを眺めることになる。「RWBY VOLUME4 <日本語吹替版>」とはそんな映画だ。(タニグチリウイチ)

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