映画『劇場版 ひみつ×戦士 ファントミラージュ!~映画になってちょーだいします~』レビュー

【ファンファンできたよ】

 『岸和田少年愚連隊』で監督をした三池崇史と、脚本のNAKA雅MURAがタッグを組んだ映画だけあって暴力的で猥雑的。そんな映画だったような気もしないでもないけれど、そんな映画ではなかった気もする『劇場版 ひみつ×戦士 ファントミラージュ!~映画になってちょーだいします~』。クマの着ぐるみが吹き飛ばされるは、美少女たちがちょんまげ姿で跳ね回るわと、暴力と猥雑がまじりあう画面に目が引き付けられて80分をまるでテレビシリーズを見ていなかったにも関わらず、スクリーンに目をくぎ付けにされてしまった。それも最前列で。

 というか、春先から映画館に行けば予告編が流れていたから何となく関係性とか分かっていたけれど、改めて見ると実写系の美少女戦士物として『アイドル×戦士 ミラクルチューンズ!』とか『魔法×戦士 マジマジョピュアーズ!』といった「ガールズ×戦士シリーズ」の第3作の掉尾を飾る劇場版は、アニメーションの美少女戦士物が日常はともかく戦いではどこまでも真剣さを保っているのに対して、実写としての生々しさを感じさせないようにとエロティックさはあまり前面には出さず、ローティーンのアイドルユニット的な健康さを見せつつギャグなども入れて笑えるような展開にしていた。

 ある意味で浦沢義雄脚本の「不思議少女シリーズ」に通じるところがあるかもしれない。それを監督するのがワイルドでバイオレンスな映画で世界に知られた三池崇史というのがまた驚きだけれど、シリーズ当初からパイロットを手掛けたりして携わっていたからこういうのも好きなんだろう。一方で暴力的で刹那的な物語も撮りつつ、こうやってバカバカしさ炸裂の映画も撮る才能を、日本はもっとしっかり支えないと、福田雄一監督に全部持っていかれているじゃないかとちょっと言いたい。原作物の脚色では確かに笑いを取れる福田監督だけれどパターンがちょい、決まってきている感じがあるからなあ。

 さて、『劇場版 ひみつ×戦士 ファントミラージュ!~映画になってちょーだいします~』は映画内で映画を撮るという入れ子のような内容で、中尾明慶が熱血監督役に扮してファントミラージュを誘い、映画を撮るとなってスタジオまで引っ張って来たけどそこに現れた敵の逆逆警察。監督を洗脳していけてない映画を撮るようにしてしまって始まる不思議展開は、いつもの活躍を理由をつけてギャグ化したものっていえば言えるだろうか。設定にかこつけてやりたいようにやったという感じでもあるか。

 途中で歌もあってダンスも見られるけれど、新型コロナウイルス感染症の騒動がなければみなで声援を送りペンライトを振って応援していたのかもしれない。そういう映画がどうしてアニメ専門のEJアニメシアターで上映されるのかといえば、KADOKAWAが配給しているから。イオンエンターテインメントもかかわっているけど都心だとないから仕方がない。そのせいか、平日夜ながら鑑賞者が2人しかいなかった。

 でも楽しかったから気にしない。キメのポーズを4人でとる時に前に出て座り片足を曲げ片足を伸ばすファントミスペードのポージングが、スパッツタイプながらもグッと迫ってくる感覚を大きなスクリーンで楽しめるのも映画であり映画館の醍醐味だから。あれを見にまた行って最前列で見たいかも。テレビでは絶対に味わえないものだから。

 が最後に出てきた謎の3人は『ポリス×戦士 ラブパトリーナ!』で本当だったら謎のままだったのが公開時期が今になって登場とほぼ重なってしまった。謎じゃないけど謎にしておこう。それが親切。(タニグチリウイチ)

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