映画『『機動警察パトレイバー the Movie 4DX』レビュー

【上映が夏でよかった】

 夏でよかった。

 もしも冬だったら、吹きすさぶ風で降り落ちた雨滴に濡れた肌が冷えて、震えながら劇場を出たことになったかもしれない。ただし、心は見終わった楽しさでぽかぽかと温かくはなっているから、辛いとか苦しいといったことにはならなかっただろう。

 ましてや今は夏だ。外に出れば蒸し暑さに全身が浸されるようになる状況で、涼みに入った映画館で心躍る活劇を場面の中の雨や風とともに楽しめるのだから、これはもう極上のエンターテインメント。いやもはやアミューズメントだ。

 レイバーという架空の二足歩行ロボットとともに東京の街を、そしてバビロンという人工島の中を歩き回っては戦い暴れ回る興奮でいっぱいになれる。『機動警察パトレイバー the Movie 4DX』そんなコンテンツだ。

 作品についてはもはや言うまでもないから置くとして、4DXとしてさまざまなギミックや演出が乗った映画は、冒頭の帆場というプログラマーがバビロンに立ち飛び降りようとするシーンから風が吹いて、その現場にいるような感覚にさせてくれる。そして、自衛隊のレイバーが暴走するシーンへと突入して、激しい戦闘の場面で暴れ回る兵器や放たれる銃弾などの衝撃を全身で体幹できる。

 そうしたシーンがもっとあれば、それこそアトラクションにも匹敵する肉体への負担を得られたかもしれないけれど、押井守監督の映画はアクションの合間に哲学があって、今回も松井刑事が東京の待ちを歩き回るシーンが挟まるため、激しい動きはあまり感じられない。

 それでも、やがて工事中のレイバーが暴走して東京の街で暴れ回るシーンがあり、いろいろな探索を経てたどりついた方舟での激しい戦闘があって、そうしたシーンの中で動き揺れては背中に衝撃、両耳に風の噴出などが繰り出されては現場にいるような感覚にしてくれる。

 これが実戦の現場だったら、衝撃が命取りになる訳だけれど、そこは映画だから危険はないからご安心。クライマックスに戦闘シーンがある映画だけに、途中の休憩から一気に躍動へと引っ張っていってその衝撃がまだ体に残っている中でエンディングを迎えられたことも良かった。

 その意味では、『機動警察パトレイバー the Movie』は4DXに向いている映画かもしれない。二足歩行ロボットのガチバトルでは『パシフィック・リム』の4DXが初期に評判になったけれど、日本にあれだけあるロボットアニメでこうしたギミックが合わないはずはない。その証明をしてくれる企画だったと言えそうだ。

 個人的には、動きの激しさという意味合いから『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ 』のMX4D化におけるバルキリーでの戦闘シーンの、シート可動がなかなかに衝撃的だった。浮遊感から急制動してバトルへと行くギミックなり、お風呂シーンでの香りなりを味わえたという意味ですごく心に残っている。エンディングテーマのビートに合わせて背中がどんどんと動くギミックも面白かったので、機会があればまた上映されて欲しい。

 同じマクロスシリーズでは、『劇場版マクロスF 虚空歌姫~イツワリノウタヒメ~』や『劇場版マクロスF 恋離飛翼 ~サヨナラノツバサ~』のMX4Dバージョンで、バジュラを相手インしたバルキリー戦で振り回されるような感覚を味わって、相当に体力を消耗した。そうしたアトラクション性では『機動警察パトレイバー the Movie 4DX』はやや劣るが、自分がレイバーに乗っている感覚なら存分に味わえる。レイバー好きには堪らないギミックだ。

 同じパトレイバーについて考えると、『機動警察パトレイバー2 the Movie』も最初に激しいバトルがあり、最後のバトルがあってそれはそれで楽しめそう。ただ、間の探索とかが多くあって、ギミックの提供場所に欠けそうなのがちょっと難点かもしれない。いずれ企画として上がるなら、別のギミックを仕込むとか必要かもしれない。南雲隊長の香りなど。いったいどんな香りなんだろう。そこは気になる。(タニグチリウイチ)

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