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アリコ・ヴェールのこと

まず最初に、アリコ・ヴェール(仏: haricots verts)とはサヤインゲンのことである。
私がパリに住み始めた23年ぐらい前、アリコ・ヴェールは、レストランやビストロで主菜(Plat)を注文するとビフテキの横だけでなく魚料理などなんにでも付け合わせに必ずついてきていた。
それも、これでもか!とお皿からはみ出す勢いのたっぷりの量で。
美大の一年生の頃、はじめて自分で稼いだお金でパリに旅行で来た時も、ビストロで食べたビフテック(Bifteck・ビーフステーキ)には、これでもか!という量のアリコ・ヴェールがついていた。

今はどうなったか、というとすっかりアリコ・ヴェールの姿は消え、フリット(frit・フライドポテト)にとって代わった。

一時は付け合わせを選べる方式でメニューにアリコ・ヴェールの文字も書いてある事があったが、今ではそれも珍しくなり、ほとんどが黙っていても山盛りのフリットが出てくるようになった。

アリコ・ヴェールはなぜ姿を消してしまったのだろう、あの頃はよく食べたなぁ、と思い出しながら、マルシェで久しぶりに大量のアリコ・ヴェールを買ってきたので茹でて食べてみた。

えっ!というぐらい美味しくて、何もつけずにむしゃむしゃと平らげてしまった。
これはマルシェのだから美味しいに違いない。

昔食べたビストロのアリコ・ヴェールは茹で過ぎなのか水っぽくて、味もしなかった、、と記憶にある味はあまりよろしくない。
そういう事か。

昔ビストロで大量についてきたアリコ・ヴェールは調理法が良くなかったのだが、それが皆んなが避けたくなる不味さとしてトラウマとなり、姿を消したに違いない。

それと、グローバル化も影響しているだろう。
通貨がフランからユーロに変わり、それまでアメリカンナイズされてると茶化されていた文化がどっとパリに浸透していった気がする。
代表選手はジーンズとハンバーガー。
フライドポテトといえばハンバーガーだが、ハンバーガーもジーンズもフランの時代にはほとんどなかった。
ジーンズなど履いてる人など、若者でもいなかった。履いているとアメリカンナイズされていると茶化されていた。 まして高齢女性などはみんなスカートだった。

それが、どうだろう、今や高齢女性でもジーンズを履いてるし、スカート姿の人はほぼいない。そして、街のあちこちにハンバーガーショップが出来、フランスらしく店ごとにバーガーに個性がある。
そのバーガーの付け合わせといったらフライドポテトがお決まりで、まさかアリコ・ヴェールをつける店はない。

でもね、とまたアリコ・ヴェールをひと口食べて思うのだが、こんなに美味しいのにもったいない! 
どう考えたってフライドポテトよりカロリーは低いし、身体の事を考えたらヘルシー。
肥満で不健康なアメリカ人みたくなりたくなかったら気をつけないと、と。
パリのバーガー流行りは少し前で、コロナ禍の今はBio流行りで、健康志向が高まってきているから今後ビストロが再開したあかつきには(今はロックダウン中で閉まっている)、もしかしたら、アリコ・ヴェールがバージョンアップして復活しているかも⁉︎
そしたら嬉しいなあ。
あ、でもバージョンアップしてないとダメダメ。笑

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