キャピタルゲイン・2話

「えっ、ええ、そう、頑張って」

そう言われて気まずい雰囲気になった。
これから一緒に生活するのだから、このままじゃまずい。

「ご、ごはん!私作りましょうか?」

「ご飯作れるの?ほんと!ありがとう!」

とても明るく笑顔になったお姉さんがいた。
そんなに他人が作ってくれるのは嬉しいものなのかな?
私は小さい時から自分で作ってたからわからなかった。

そのあと夜ご飯を私が作ったら。凄い喜んでくれた。何年振りにこんなに美味しいご飯を食べたことか…と感動していた。
お風呂に入るのはどこか友達の家のお風呂に入る感じで緊張した。

「いつかこれも慣れるよね…けど頑張る!」

私はほっぺたを叩いて奮起した。

緊張しながらも夜はぐっすり寝れた。
この逞しさは、少しはママ譲りなのかも知れないとも思った。
次の日土曜日で特にすることもなく、益田市を見て回った。
駅周りはプチ都会と思う感じはあるけれど少し慣れるとザ田舎っていう感じだった。
海も近いとは聞いてたけど、歩くにしてはちょっと遠いとも思った。

「でっ学校には行ったの?」

「忘れてました。」

すっかり忘れていた。編入の手続きをしていると言っていたけどママのことだ。少し怪しい。

「一応明日学校行こっか?美祐は手続きしたって言ってたんでしょ?」

「したとは言ってましたが、ママのことだから」

「じゃあ大丈夫そうね。」

えっそうなる?ママだよ?自分のこととその場のノリで生きてる人間を、そうも信じれるものなのかな?流石姉と言ったところなのだろうか?
なんかこれからの生活が心配になった。

………

「シートベルトした?」
「しました!」

次の日お姉さんの運転で、学校に行くことになった。

「ちゃんとしてるね!よし!」

お姉さんは後部座席を覗いてまで見てきた。

「そこまで確認します?お姉さんの運転もしかして…」

「違う!違うからね!ほんとだよ!」

フラグにしか思えない慌て振り。

「この時代さ、シートベルトしてなくても普通に警察に捕まるから。都会じゃもしかしたら見つかる可能性低いのかも知らないけど、田舎だと、ね」

本人は濁したように思ってるだろうが、昔は良かったけどこのご時世、捕まっちゃうと言いたいのだろう。

車が走り出したけど、お姉さんの運転は本人が言ってた通り、安全運転だった。ほっと肩を撫で下ろした。

「あの〜1ついいですか?そういうば聞いてなかったのですが、お姉さんの名前って何ですか?」

「あれ?言ってなかった?」

流石ママの姉、同じ反応をしている。

「霊 結だよ。幽霊の霊でみたま、髪を結ぶの結ぶでゆいだよ」

「変わった苗字ですね。」

霊という苗字初めて聞いた気がする。昔はあったけど無くなっていったのかなっと思った。

「まあここら辺じゃ霊って聞くと有名で、びっくりすると思うから、お姉さんでいいよ」

「はい…分かりました」

有名?ってそんなに苗字少ないのね。聞いたこともないはずだわ。地元でも少ないのだから。

そうこうしながら、話してるとすぐについた。

「車だと近いですね」

「えっ?10分は走ったよ?」

どうも田舎の10分は長いらしい。ママよく電車とか乗ってたと思った。

「じゃあ、終わったら電話してね。あっそうか電話番号教えてなかったね。これ連絡先、私はカフェにでも行ってるよ。」

「わ、分かりました。」

連絡先も交換してないことに気付いてない私。
ママと言い、お姉さんといい、私。

学校は特に田舎も都会も変わらないと感じた。

校舎に入って事務室があったので、転入してることを伝えると。
ああそう言えばっと思い出した顔をして来客用名札とスリッパを貸してくれた。

そのまま職員室に向かっていった。
コンコンと一応ノックをして入って誰かを呼ぶことにした。

「すみません。編入手続きできたのですが?」

部屋に聞こえる声で言うと、男の人が来た。

「ああっ話は聞いてるよ。担任の先生はいないけど名前教えてもらえる?」

「あっはい、種崎スミレです。」

そういうと種崎種崎と連呼しながら調べ物をしている。

「種崎スミレさん?っで本当にあってる?東京からだよね?」

「はい。間違いありません。」

「んー。こっちの手違いかな?霊ってなってるんだけど…」

霊、みたま、みたま、今しがた聞いたことあると思った。

「あっ!」

ついそう叫ぶと、男の先生は目を丸くしてびっくりしてる様子だった。

「あっ、たぶん霊であってると思います。いえ、私は種崎なんですが、霊 結の姪です。」

「霊さんの…」

なぜか霊という名前を出したら先生の顔が引き攣っていた。

「そう、まあ手続きはされてあるけど、霊になってるのはどうする」

何故ママは霊にしたのかは分からなかった。捨てたから?分からない。
けど私は強くなりたいと思ったから。

「種崎に直してて貰えますか?家は霊結さんの家でお世話になっていますので、住所がそこなら問題ないです。」

私はそう伝えた。ママの考えに負けたくなかったそんなちっさな抵抗である。

「了解!じゃあ明日からよろしく」

「よろしくお願いします。」

深々とお辞儀をして部屋を出た。

けど1番気になったのは霊と名前を出した時の反応である。
私は霊という苗字が珍しいものだと思っていたが何か違う気がした。
それから校舎を見て回ってから、電話をして迎えに来てもらった。

「どうだった?」
「どうと言われましても」
「学校面白そうだなーとか田舎の校舎はセンスないなーとか」
「その反応なんですか?小学生じゃないですよ私」

なぜかお姉さんは娘が小学校に通う時の反応だった。
そんなに私子供っぽいかな?大人の女性には見えないと思うけど。周りよりかはしっかりしてると思うのだけど?

「あっじゃあ背の高い男性の先生いた?180〜185ぐらいありそうな先生」

「ああその人ならいたと思います。」

おそらく私が話した先生だと思う。

「まだいたんだ。そうなんだ~」

そこまで懐かしいと思うかな?大人になったらそうなるのかな?

「あっ1つ気になることがあったんですけど、手続きで私の名前霊になってたのですが、その時の先生の反応がちょっとおかしくて」

「おかしい?ってどんな感じだった?」

「関わりたくない人間の名前聞いた時の反応?ですかね」

「ははっなるほど。まあ特に何もないよ。私のこと苦手なだけでしょ」

お姉さんは笑って言ったたけど本当にそうなのだろうか?人があそこまで不味そうな顔をするってことは何かしたと思うんだよね。お姉さん。

話をしてたらあっという間に家に着いた。

それからは昨日と変わらない感じで過ごしたけど、変わったこといえばお風呂に入る時もう緊張はなくなっていた。
二日で慣れる。そんなものだろうか?

自室に入ろうとした時にお姉さんが声をかけてきた。

「明日、朝7時ね。」

「わかってますよ。頑張って働きますから」

「そう、それならいいわ。」

「それよりか、お姉さんの方が起きられるのですか?」
今日お姉さんが起きたのは朝の10時。3時間も早く起きないといけないとなるけど。

「問題ないよ。起きないと死だったからね。」

彼女が言った意味はあまり理解はできなかったけど。どうやら本人は余裕と言ったところがあるみたい。

「おやすみなさい」

「おやすみ」

そう言って自室に入った。

明日から仕事と学校か大丈夫かな?
いや頑張るんだ!勝つぞー?
誰に?っと思った。

…………

「おはようございます」

「おはよう」

そう挨拶をした6時半。

お姉さんは宣言通りに朝起きてた。多分私より早い。

「ごはん食べなくて大丈夫?」

「いまから食べようかと…」

「いまから!?むりむり。そんな時間ないって、7時にはみんな来るから、とりあえず早く着替えて!」

「ちょっ、どういう…」

「今日はご飯食べるならもっと早く起きないとダメでしょ。先に言ってたら起こしてあげたよ?私鬼じゃないから」

どうしてそこまで慌てるのだろう…
不思議でたまらなかった、お姉さんが私を自室に戻すように後ろから押されたから、そのまま着替えて出てきた。
髪は少し乱れてるけど、仕方ない

「おはようございまーす」

そう言って入ってきたのは小太り男の人だった。
時間は6時50分

そこからぞろぞろと何人か来て計3人とお姉さんと私。

「じゃあ揃ったね。今日は新たなメンバーというより私の補佐が増えたの紹介します。朝早くごめんね」

お姉さんはみんなに伝えていた。

「え、えっと、霊結の姪の種崎スミレです。よろしくお願いします」

そういうとみんな各々よろしくーっと言っていた。

「じゃあ自己紹介だけしときますか。私はもういいね。次、大輔。」

「えっと福田 大輔です。色々あって霊さんにお世話になっております。普段は仕事してますのでたまにしかここには来ません。」

さっきの小太りの男性だった。
仕事しながら投資家ってこと?けどたまにしか来ないとなるとどいうことだろう?

「俺は内田 渉です。普段はデイトレで生活してます。霊さんは先生ですね。お陰で今の俺がいます。」

若そうなで、派手な髪型だけど意外としっかりしてると思った。けど霊さんを先生と思ってるのは…

「私は門脇 サクラです。霊さんにはまだお世話になっています。いつか恩返しできるように頑張ってます」

来た人の中で唯一の女の人だ。
内気な感じはするけれど、見た目じゃ分からない。

「じゃあ今からちょっと早いけどミーティングするよ」
霊さんが声かけをした中でをあげた人が一人。
小太りの男性の福田さんだ。

「霊さんスミレさんって学生ですよね?」

「そうだよ。まだ15歳みたいだけどあんたみたいにはやらん!」

なぜか漫才をしている。

「いやそうではなくて、高校生ならデイトレ無理じゃないですか?9時には学校にいますよ」

「あっ」

やはりお姉さんはダメかもしれないと思った。

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