絵が動く

久しぶりに美術館で絵に向かいあったら、動いて見えました。アニメーション。
視界では動いていなかったけれど、脳内で動いていました。
最近アニメをよく観ていたからでしょうか。

すこし首をかしげている人物の絵がありました。わたしの頭の中で、その人は首を傾けたりまっすぐにしたりをハイスピードで繰り返していました。どうやら現実的な動きではありません。
次に、ゆっくりと、悩ましげに首を動かしたこともありました。こちらは「うーん」と悩む声も聞こえるようでした。

なにか(わからないもの)が密集している絵もありました。それらはわたしの頭の中でうごめいていました。
ものが動き、もの同士がぶつかるならば音がするはずです。ものが柔らかいか硬いかが気になります。さわさわと音がするのか、ガチャガチャと大きな音が鳴るのか。どちらも再生してみました。どっちもありです。

帰宅して、いくつか展覧会図録を見ました。どの絵も、動かそうと思えば動かすことができます。
上から垂れ下がった細い布のようなものが描かれた絵がありました。これはどう動いているのでしょう。そして、それをどう捉えたのがこの絵なのでしょう。
写真の感覚を持ってくると、大きくふたつが考えられました。
1、長い布がそよそよと吹く風に揺れている。速めのシャッタースピードで撮ったものがこの絵。
2、なにかが上下方向に動いている。それを長時間露光で撮ったものがこの絵。
こんな感じです。絵には人々も描かれていました。彼らは止まって見えるから、前者でしょうか。
写真黎明期の頃の作品だから、描いた人には写真的な意図はないかもしれません。ただ、わたしには、そう捉えることもできます。また、写真に依らない見方をすればもっといろいろなパターンが考えられそうです。

こんなふうに、突然絵の中が動いて、風が吹き、音が聞こえてきたわけですが、逆に、いままでは絵をどう見ていたのでしょうか。思い出してみます。

どんなに写実的な絵でも、頭の中で動かない上に、時間の感覚、「前から後ろに向かって流れ続ける時の一瞬を切り取ったものが、この絵である」という感覚すら、あまりなかった気がします。作品によりますね。たとえば液体を注いでいる絵ならば一瞬を切り取った印象は受けそうです。ちなみに、短歌や詩でも同様に、”時間を切り取ったもの”として読み取ることが少ないかもしれません。
時間が存在しないから、”止まっている”という感覚もないまま、”そこにある”、と捉えていた気がします。絵の具で描かれた作品なら、絵の具の溜まったり、かすれたりを見ることもとても好きでした。
それに、「絵は静かで好き」と感じていたので、少なくとも音は鳴っていなかったと思います。
自分の感覚がちゃんと書けているかよくわからないけれど、そんなところです。

みなさんは絵に対してどういう感覚を持っているのでしょうか。わたしは絵を描かないので、描いている方の感覚がとくに気になります。

新しい感覚への驚きと、「どうしていままで動いてなかったんだろう?」という驚きが一緒にやってきた経験でした。これからも時々動かしてみようと思います。


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