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家の鍵を探して

1年ほど前の話。

家の鍵をなくしました。

家の前で、リュックに触れて気づいたのだが、チャックが開いている。あれほど、バッグのチャックと社会の窓は閉めなさいと自分に言い聞かせてきたのに...。血の気が引くとはこういうことなのだと実感した。本当にサッと心臓から上が涼しくなった。人体の不思議である。人体はすごい。生を実感する。人体の不思議展に出品されたいと思った。(こういうのを逃避というのだろう。今回の現状に対してはよくないことだ。早く探しなさい。)

捜索方法は以下だ。

①歩いてきた道を徹底的に探す

不動産屋さんは既に連絡のつかない時間帯だったので、他の方法で捜索することに。まず、家から駅までの道を3回くらい往復した。夜の22時過ぎに道端の植え込みや排水溝をスマホのライトで照らし歩く様子は、近隣住民からすると不穏なものを感じざるを得ないと思うが、どうか許してほしい。
鍵をなくして思ったのだが、家があっても、鍵がなければ、その空間は存在しないのと同じなのだ。通りすがりの人の視線が痛い。光陰矢の如しだが、人の視線も矢の如しである。イマジナリーペイン。

②電車会社の忘れ物案内に電話をかける

なかなか電話がつながらなかったが、諦めずにかけた。繋がった時は心底ホッとした。まず、何を落としたか申告し、何時頃何駅から何駅まで移動したかを伝えた。

「少しお待ちください、調べて参ります。」

♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜

「お待たせいたしました、まだ届いていないようですね...これから届くということもあるかもしれませんが、移動の範囲もちょっと広いようですし」

「そうですか...ありがとうございます。」

めげない。しょげない。

③最寄駅の駅員さんに聞いてみる

ひょっとして落としたばかりで、忘れ物リストに上がっていないだけではないか?一縷の望みにかけてみることにした。本当は、出かけた先の駅にも聴きたかったのだが、時間が遅かったこともあり、最寄駅の駅員さんに尋ねてみた。

「鍵ですか?届いてますよ。忘れ物受付はあちらなので行ってみてください。」

「本当ですか!ありがとうございます!ありがとうございます!」

顔に血が回ってきたのを感じながら、案内された受付へ急いだ。しかし、受付の営業時間が終わっていたのと、私が落とした鍵の特徴とは一致せず、こちらも不発に終わってしまった。

④警察署に行ってみる

何も悪いことはしていないのに、敷地内へ足を運ぶときにはとても勇気を要した。発汗。緊張の面持ちで入ろうとする私に立番の警察官が「どうされましたかっ!?」と声をかけてきた。「遺失物がありまして...」喉がキュウと閉まるのを感じる。「それでしたら、あちらへ!」

家の鍵をなくしたこと、鍵の特徴、どこからどこまで移動したのかを聞くと担当の警察官は届けられていないかデータベースを丁寧に探してくれた。しかしながら、届けれられていないようだった。

「署の管轄を大きく跨いていますし、まだ届いていない可能性もありますから...」

落胆する私をみて優しく声をかけてくれた。とりあえず遺失物届けを提出して、私は警察署を後にした。(あの時の警察署の皆さん、とても親切に対応してくださって本当にありがとうございました...。)

⑤鍵屋さんに問い合わせる

ドア1枚...家と私を隔てるこの扉のなんと重く厚いことか。このドアの向こうには私の部屋があると言うのに。
鍵屋さんに連絡すればとりあえず開けてくれるのでは...それに家の中にはスペアキーが!これは勝てる!と考え、深夜でも対応してくれる鍵屋さんに電話をし、可能かどうか見積もりをしてもらうことにした。

問い合わせたところ、金額に関してはやってみないとわからないという答えだった。明日の朝になれば不動産屋さんでスペアをもらえるはずだし、あまりに高額な場合はお高めのホテルに泊まるのとあまり変わらないとのことなので、検討しますとお返事して電話を切った。
(場合によっては早急に、ホテルに泊まる以下のお値段で開錠してくれるかもしれません。あくまで私の家の鍵の場合の話です。)

その時点で23時を過ぎていたので、その日は親戚の家に泊めてもらうことにした...

結末

結局、鍵は出かけた先の建物の管理内に届いていた。即、五体投地した。(訳:よかった!!!本当に!!!)拾ってくださった方、ありがとうございます。どうか幸あれ...

まとめ

・バッグのチャックを閉めること

・特徴のあるキーホルダーや紐をつけておくこと。探すときに役立つ。

・根気よくあちこちに聞いてみること

・万が一落としてしまっても、焦らない

・親切な人もいるので諦めない!

いくら親切な人がたくさんいるからと言ってもう落し物はしないように細心の注意を払いたい。

今の所、バッグのチャックは閉まっている。(再確認!)


サポートの分だけ強くなりたい。 アスファルトに根を張る大根のように。