見出し画像

#書く術 note 第6回 直塚大成 エッセイNo.3 『隕石回収メソッド』

こんばんは。
『書く術』製作委員会実行委員で、担当編集の小倉 碧です。

突然ですが、皆さんは、UFOを見たことはありますか?
私はあります。今までの人生で計2回です。

1回目は、幼少期。神奈川県は丹沢山・大山へ、
家族と一緒に行った時のこと。

夕刻になり、さて、そろそろ帰ろうとしていた時、
沈む夕日の方角に目を向けると、
はるか上空に、小指の先ほどの大きさの黒い逆三角形(▼)の飛翔体。

約3秒後、飛翔体は猛スピードで垂直に降下。
不規則な動きで宙を舞ったのちに、瞬く間に視界から消え去りました。

後から知った話によれば、大山はUFOが頻繁に目撃される、
知る人ぞ知る場所らしい。
細野晴臣さんとか、タモリさんもUFO観測に訪れたらしいですよ。

そして、2回目は小学生時代。
小学校の隣に森林公園があり、
放課後は友達と秘密基地を作って遊ぶのを日課としていた
低学年の頃の私。

その日もいつも通り秘密基地で遊び、
夕刻になったので、
さて、そろそろ帰るか、
と思い、何とはなしに空を見上げたところ、
薄い皿みたいな円盤状の物体が、超高速でジグザグ飛行しているのを発見。

あっと驚いた私は、少し離れた場所にいた友達を呼びにいき、
友達とともにもう一度同じ方角を見たら、その物体は消えていた。

以上が、私のUFO遭遇体験記です。
祖母・母・私と、実に親子3代にわたり、
UFOという未知との遭遇を積み重ねてきたDNAをもってしても、
これまでの人生で、隕石を拾ったことは1度もありません。

「隕石拾ったときに、どうすればいいか?」

皆さんは、この斜め上の問いに答えられるでしょうか?
直塚大成さんによるエッセイ、本日お送りする第3回は、そんなお話です。
それでは、直塚さん、お願いします。


『隕石回収メソッド』

直塚大成

たとえば石ころが宇宙から降ってきて、ベランダに落ちたとする。そして運よく衝突による家屋の破壊を免れ、大爆発で消し炭になるのも避けられたとする。無事だ。よかった。しかし近所一帯がみんなスマホに夢中で大爆発に気づかず、強烈な炸裂音もSONYのノイズキャンセリングイヤホンのおかげで誰一人聞こえなかったとする。その場合あなたはどうすればよいのだろうか。考えたこともないだろう。いま鼻で笑った人は正直に名乗り出なさい。これは由々しき問題だ。ママ友のいよちゃんに電話しても冗談としか思われないし、部屋にクレーターができたなんてレオパレスに言えるわけもない。カズくんは出張だし、ゆいの音楽教室のお迎えが1時間後に迫っている。ヤスケの散歩にも行かなきゃいけないのに。それに夕飯の支度だって。ああ、もう、なんで隕石なんて落ちてくるのよ!……ということだってあり得る。ありえない確率だが、ありえないことではない。落ちてからでは遅いのだ。

もしかするとあなたは忙しい家事に追われ、隕石の回収をあと回しにしたくなるかもしれない。しかし、それだけはしないでほしい。日本文化の発展のためだ。もちろん、あなたのクリームシチューがカズくんとゆいちゃんの発展のためにあるのは承知でお願いしている。ぜひご理解いただきたい。日本に落ちてくる隕石は極めて珍しく、その文化価値も高いのだ。表面から未知の鉱石を発見できたり、運が良ければ宇宙の起源に近づけるかもしれない! 家庭よりも文化か、だって? ああ、そう言いたい気持ちもわかる。しかしね奥さん。ここだけの話だが、隕石のなかには下手すると数億で取引される代物もあるんだ。……ええ、だからね、そう目を輝かせずに落ち着いて聞いてくださいな。

手順1.まずベランダに出て隕石を確認しよう。冗談だと思いたいが、頑としてかわいらしいクレーターがそこにある。現実から逃げてはならない。

手順2.外気を遮断しよう。隕石衝突の現場は殺人現場レベルで厳重に扱わねばならない。隕石を無菌の手袋で拾い、無菌の袋で清潔に保管しよう。絶対に素手で触ってはならない。これはあなたの手を未知のウイルスから守るためではなく、未知のウイルスをあなたの手の雑菌から守るための処置である。いや、別にあなたを傷つけたつもりはない。私の手も雑菌まみれだ。

手順3.近くの天文台に連絡しよう。気が引けるなら博物館大学など学術的な施設に連絡するのも良い。なんなら警察も拾得物対応をしてくれるだろう。それでも心配ならばこの記事で流れを確認しよう。冷静に対応すべきだ。あなたは奇跡の目撃者なのだから。

さて、これで完了だ。清潔な袋をコンビニで買っても1時間かからないだろう。隕石を施設に届けてほしいと言われるかもしれないが、家にクレーターがあることを告げれば間違いなく来てくれる。天文台に届けたらあとは待つだけ。鑑定結果が全てを示してくれる。間違ってもいよちゃんに隕石を拾ったなんて電話してはいけない。下手に広まったらとんでもないことになる。隕石ではない可能性を忘れるな。アンビリバボーに出たいわけではないのならやめておこう。

……ん? ああ、いくらになるのかって? ああ、えっと、実は、石ころサイズの隕石だったら1000円代で買える。いや、別に、騙したつもりはない。あなたは地球の文化に貢献したのだ。ほら、そんなに険しい顔なさらないで。ああ、そうだ。もうそろそろ一時間じゃないか。ゆいちゃんのお迎えに行ってきてください。それでは、さようなら。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?