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大学卒業したばかりの自分へ

 6年後の僕から、6年前の自分へ。
まずは卒業おめでとう。コースで優秀卒論の認定を受けて、度肝を抜かれたね。君は物珍しさだけで到達したと思い込んでるけど、いやそれは確かに半分以上正解なんだけど、結構いい卒論だったのも確かだよ。誤字が4か所もあったのは大問題だけどね。先行研究の背後にある意図、要するに中露関係に踊らされたのは苦い経験だと思うけど(『歴史とは何か』をしっかり読んどかないといけなかったね)、悔しさをばねにして、相手の背景を探るようにしようね。ちなみに僕はこの6年間、それをほとんど生かせなかったよ。院進した同期のE氏に「あなたも院に行くのだと思っていた」という一言は、いまでも僕の誇りだよ。うれしかったね。他人を特別視して自己卑下する癖は改めた方がいいとは思うけど、尊敬する人に認められた時の喜びはすごいよね。ちなみに君は2年後、神様と敬う先輩と出会うよ。3年後は仏と出会う。マジ。

 ところで、6年後の君が何をしてるかというと、びっくりするよ、モスクワの大学院に進学するんだ!いやごめんちょっと盛った。最初に準備学部っていうところでロシア語のレベルを上げないと、院に進学できない。頑張って進学するから、とりあえず進学するという仮定で話をさせて。
 え、お金はどうしたかって?仕事が先じゃね?まあいいや、お金はね、これまた信じられないことに、じいちゃんが出してくれるんだよ。ばあちゃんも出してくれるって。びっくりだよね。いまはまだ、愛情がうまく感じられないかもしれないというか、二人とまともに話し合いができるということが信じられないかもしれないと思うけど、できるようになるんだよ。いい子でいなくても、強い意志と、信じる気持ちがあれば、それに応えてくれるんだよ。本当なんだって。怖いとは思うけど、一回でもいいからチャレンジしてみて。もっと早くこういう話をしておけばよかったと、いまの僕でさえ思っているから。
 あと、誰よりも心強い味方が、そばにいてくれています。強い意志と、深い愛情を持った、笑顔のすてきな人。せっかくだし内緒にしておこうと思うんだけれども、一言だけ言わせてくれ。安心していい。君のことを、特に飾っていない比較的ありのままに近い君のことを、大切に思ってくれる人は、この世にいる。
 学費の方は、実は奨学金プログラムに合格したからタダなんだよ。なんで合格できたのかって?ロシアがウクライナと戦争を始めて、誰も生きたがらなくなったから、応募する人がそもそも少なかったのと、君が4年間頑張って築き上げた輝かしい(もっと英語とドイツ語を真面目に勉強しなさい。あとベトナム史はレポートちゃんと書け)成績のおかげだよ。そう、成績表だけで判断されたの。マジで本当にありがとう、頑張ってくれて。

 仕事はね、残念ながら、辞めてます。君もすでに薄々気が付いてると思うけど、君、向いてなかったよ。もともとコミュ障でこだわり強いでしょ?しかも自分勝手というか、我流でやりたがる。それが災いしてね、社内での評判も悪いし、2年目から上司にいじめられ始めるよ。いじめは一年半続いて(どんどん悪化して)、追い詰められた結果、抑うつになって休職する羽目になります。やばいね。ちなみにその上司は辞めたけど、奥さんは辞めなくてその人からは冷遇されることになるよ。やばたにえん。これらの未来を避けるためのアドバイスなんだけど、①わからないと思ったらすぐ聞く、怖がらないことが大切。➁できそうにないことは、はっきりと「できないので助けていただけますか?」と相談する。➂相手の事情は、とりあえず無視していい。向こうは後輩を見る分も給料に入っているので。とにかく、報告連絡相談をすれば大丈夫。これでうまくいかない職場だったら、そもそも職場を変えた方がいい。とにかく一人で抱えがち、誰にも相談しない・頼らない、ってことが災いになりまくるので、気を付けてね。
 ちなみに、同期は全員すばらしい人ばかりです。苦手意識感じる人も数人はいるし、どう頑張ってもほら、僕が抱くあの特有の疎外感、他人と気持ちがつながっていないような感じ、はぬぐえないけど、大丈夫だよ。本当にいい人ばかりだから。それに、仕事先の人にもたくさんいい人がいて、悪い出会いが気にならなくなるくらいに、すてきな人とたくさん出会える。辞めたことを後悔していないのと同じくらい、入社したことを後悔していないから、そこは安心してね。君は根性を見せるし、それを認めてくれる人もいる。

 いまたぶん、いろいろ、大学時代の人間関係に関してとか、卒論に関してとか、授業受ける態度についてとか、なんかいろいろ後悔してると思うんだけど、それは全部肥やしにしてほしい。罪悪感を抱いて、それは絶対に一生抱いて、忘れずにいなければならないけれども、それとは別に、僕は幸せにならなくちゃいけない。幸せを願ってくれる人がいる。愛してくれる人がいる。だから、僕は幸せになる責任がある。ならないといけない。そして、いずれか来る最後まで生き抜かないといけない。絶対に「死」なんて甘えに走るなよ。そんなことしなくても、君は5年後、すい臓の病気にかかって、すい臓半分と脾臓全部を失うことになって、寿命が縮むから安心しなさい。
 持たないものを見るのではなく、持っているものを見て、それを最大限生かしなさい。理想の自分を掲げるのは悪い事じゃないが、それじゃ地に足がついていないよ。いまの自分を見て、しっかり見つめて、苦しみ方を変えなさい。「どうあるか」に悩むのではなく、「どうするか」で悩みなさい。偉そうにいってるけど僕もできてないよ。決してあきらめず、うまくいかなかったくらいであきらめず、とにかく継続しなさい。継続すること以外に、目的地に辿りつく方法はない。焦らなくていい、休んでもいい、ただ、歩みを完全にやめきってしまうのだけはやめなさい。これからの僕は、そうするから。

 君がこれまで頑張ってくれた22年間が、今の僕のすべての幸せにつながっています。これだけは確か。僕は今、これまでの人生の中で一番楽しいし、一番充実しているし、一番幸せだよ。それは君のおかげ。君が頑張ってきてくれたおかげ。頑張り続けてくれたおかげ。マジでしんどかったと思うし、正直嫌な思い出の方が多いと思うんだけど(ちなみにそれは僕が好んでそういう思い出に焦点を当てているだけです。反省してくれよ)、本当に、頑張ってきてくれて、ありがとう。特大のハグを送ります。ほーんとによく頑張った!あっぱれ!
 君に恥ずかしくないよう、僕はもっと楽しく元気よく頑張って、残りの人生を駆け抜けて行こうと思う。調子乗らないように、焦らないように気を付けます。君の未来は任せてくれたまえ。その代わり、そちらの6年間は任せました。

 それじゃあ、お互い体と心に気を付けて、ままならない自分を、ままならないなりに使いこなして、楽しく終わりまで生きていきやしょう。

心より愛を込めて。

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