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トピック08|2050年の「都市構造のビジョン」はどうなる?

村山 顕人
東京大学 大学院工学系研究科 都市工学専攻 都市計画研究室

都市構造を再考する契機

現在、多くの都市は「コンパクト・プラス・ネットワーク」の実現を目標としています。スマート技術・システムの普及や新興感染症の拡大によって、こうした「都市構造のビジョン」はどう変わるのでしょうか?

まず、自動運転、テレワーク、移動代替サービスの普及により、「コンパクト」でなくても都市生活サービスが維持できるかも知れません。

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自家用車による移動が中心の都市部における2030年の将来像(出典:高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議:官民ITS構想・ロードマップ2020(案),2020.7)

また、COVID-19パンデミックを受けて分散型の都市を目指すべきだとの主張がありますが、「密度」や「距離」については様々な側面を適切に検討する必要があります。詳しくは次の2つの記事をご覧ください。

都市構造を再考する際の視点

スマート技術・システムに支えられ、新興感染症ともうまく付き合っていく「新しい日常」の中で、ライフスタイルやワークスタイルが大きく変化し、結果的に、土地利用や建物用途が調整(fine-tuning)される可能性は高いと思います。ただし、これまで長年に渡って整備してきた都市基盤施設(道路、鉄道、上下水道システム、公園など)はそう簡単には変わらないので、土地利用や建物用途の調整はあっても都市構造が大きく変化することはないのではないでしょうか。

大きな都市構造は変わらない中、ゆとりのある郊外住宅地や都市農地が残る「緑農住」複合市街地が再評価されています。拠点とその周辺の市街地に都市機能や居住を誘導することだけでなく、より密度の低い周辺の市街地の将来も前向きに考え、多様なライフスタイルを選択できるような土地利用・都市デザインを目指していくべきではないでしょうか。


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