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トピック02|2050年の「宅配サービス」はどうなる?

伊地知 大輔
株式会社エイト日本技術開発
東京支社 都市環境・資源・マネジメント部 都市環境グループ

Amazonや楽天等のインターネットを利用した販売サービスは、豊富な品揃えと、自宅にいながら買い物できる便利さから、私たちの生活において欠かせないものとなっています。宅配サービスはこれらネットを介した消費を支えてきましたが、今後人口減少が進む中で担い手の確保が難しくなっていく可能性があります。今後の宅配サービスはどうなるのでしょうか。

人手不足が続く宅配業界

我が国では、宅配便の取扱い量が増加傾向にある一方で、対応するスタッフの人手不足が指摘されています。国の統計資料で2002年から2018年の推移をみると、宅配物取扱個数は約1.5倍に増えましたが、運輸業・郵便業の就業者数は横ばいで推移しています。従来の宅配サービスは、スタッフが注文した人の家まで荷物を運び、受け渡しをする形でした。人口が減少し、全体の就業者数が減る中で、今後もそのサービスを維持することは難しいのかもしれません。

トピック(宅配サービス)

新しい技術の導入に向けた実証実験

そうした中で、全国各地で自動運転、ロボット、ドローンを用いた宅配の実証実験が、行政と民間企業の協力により取り組まれています。例えば、藤沢市ではヤマト運輸と協力して、自動運転車両を用いた配送の実証実験が行われました。また、長崎県の五島市では、ANAと協力して有人島間でドローンを用いた物流の実証実験が行われています。宅配サービスにおいて、これらの技術の活用が一般化すれば、人手不足を解決するだけでなく、宅配の配送拠点から遠く離れた山間や島嶼部の集落に対して、宅配をしやすくなることも期待できます。

トピック(宅配サービス)2

将来を考えるためのヒント

宅配サービスにおいて、こうした新しい技術の導入が一般化するのはいつ頃でしょうか?日本ロジスティック協会JILS総合研究所のアンケートによると、2020年代にこれら技術の導入で人手不足が解消すると考える人は少数派であり、一般化するのはしばらく先のようです。当面は、大都市などの宅配の需要が高く、かつ配送拠点の密度の高いエリアを中心に導入が進み、その後、大都市の郊外部や地方都市にも普及していくのではないでしょうか。技術の普及に合わせて、都市空間側で対応すべきことが何かを見据え、対応を図っていく必要がありそうです。

また一方で、「自宅で受け取らない」という考え方、サービスも出てきています。自動販売機のようにいつでも利用できる宅配ロッカーや、実店舗の一部など、宅配の荷物を受け取ることができる場所を主要な生活動線上などに用意し、私たちが受け取りに行くという考え方です(松岡真宏氏、山手剛人氏の「宅配がなくなる日 同時性解消の社会論」(日本経済新聞出版)に詳しい)。特に、新しい技術の導入がしばらく期待できないと思われる地域(例えば、地方都市の郊外部、山間集落等)においては、荷物の受取のあり方を見直すことも必要かもしれません。

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