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トピック01|2050年の「シェアリングエコノミー」はどうなる?

松下 佳広
㈱国際開発コンサルタンツ 東京支店 計画・交通課

近年シェアリングエコノミーが急速に進んできましたが、コロナ禍のなかで他人とモノや空間等をシェアすることのリスクも浮き彫りになりました。2050年のシェアリングエコノミーはどうなるのでしょうか?

少なくともコロナ禍の直前まで、カーシェアリング、民泊、コミュニティサイクルなどのシェアリングエコノミーは急速な拡大、多様化が進んでいることは明らかでした。皆さんも、例えばコインパーキングで駐車マスの多くの部分がいつの間にかカーシェア用の駐車場用に確保されているのを目にしていると思います。

そのようななかで起きたコロナ禍により、訪日外国人の利用を見込んで多額の投資をして改修した民泊にまったくお客が入らず途方に暮れている、という趣旨の記事を見かけました。コロナ禍は特に空間やモノをシェアするシェアリングエコノミーにとっては晴天の霹靂なのだろう、急速に普及してきたこれらのシェアリングエコノミーは今後どうなるのだろう、と思い少し調べてみることにしました。

シェアリングエコノミー協会によると、シェアリングエコノミーとは「インターネット上のプラットフォームを介して個人間でシェア(賃借や売買や提供)をしていく新しい経済の動きです。シェアリングエコノミーは、おもに、空間・移動・モノ・スキル・お金の5つに分類されます。」とされています。

㈰シェアリングエコノミー領域マップ

出典:シェアリングエコノミー協会
https://sharing-economy.jp/ja/about/

市場規模の推移・予測をみてもシェアリングエコノミーは急速に拡大しており、2019年10月時点では今後もその傾向が続くと予測されていました。

㈪シェアリングエコノミー市場規模推移・予測

出典:矢野経済研究所 2019年10月現在

しかしコロナ禍の影響で、例えばシェアハウスや民泊といったシェアリングエコノミーには大きな影響が出ています。報道やweb記事等によると、コロナ禍のなかでシェアハウスや民泊などのシェアリングエコノミーでは以下のような変化が起きているようです。

「(シェアハウス)シェアハウスからアパート・マンションへの転入者が増加。理由は『自分以外の人と密室での生活をするため、感染を恐れてという理由がほとんどです。』」
(bizSPA!フレッシュ2020.05.11公開記事「若者のシェアハウス離れも。コロナ禍の影響を不動産会社に聞く」より要約整理)

「(民泊)札幌市では右肩上がりで増えていた民泊の届け出数が減少に転じており、インバウンドなどの外国人依存からの脱却を図る必要に迫られている。」
(出典:日本経済新聞2020.07.22報道記事より要約整理)

このまま「シェア」から「所有」への揺り戻しが起きてしまうのでしょうか?

この疑問についてはこれからの2050年都市ビジョン研究会でも議論していきたいと思いますが、将来のシェアリングエコノミーを考えるヒントとして以下のようなことがあります。

ひとつは前述のとおりシェアリングエコノミーにも様々な領域があり、おもに、空間・移動・モノ・スキル・お金の5つに分類されるとのこと。新しい生活様式との関係も領域によって異なりそうです。例えばリアルな場所や乗り物、モノのやりとりは、コロナ禍のような直接のふれあいが制限される状況下では難しくなりますが、スキルのシェア(クラウドソーシングなど)はむしろ直接のふれあいを介さずに多様なスキルを結びつけることができ、新しい生活様式で一挙に進んだテレワークなどの形態でより進化・発展しそうです。同様にお金のシェア(クラウドファンディングなど)も今後はより一層普及していくでしょう。

また、コロナ禍で一時的に制限を受けている空間のシェアなども、そもそもライフスタイルの変化に対応しやすい、災害時にも被害が少なく迅速に対応しやすい、環境負荷が小さいといった今日的なニーズに対応して発達してきたサービスです。アフターコロナの市場経済では今後も求められていくでしょうし、都市経営においても積極的に取り入れていこうという動きがあるようです。

㈫シェアリングシティ推進協議会

出典:シェアリングエコノミー協会
https://sharing-economy.jp/ja/20200714

2050年のシェアリングエコノミーは今よりもっと生活や仕事に溶け込み、都市や交通との関係も密接なものになっていることでしょう。こうしたライフスタイル・ワークスタイル・消費動向の変化も意識しつつ、引き続き2050年の都市ビジョンを議論していきます!

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