20240915:10代のわたしが見たかった「きみの色」

映画はすごく良かったし、すごく好き。個人的にはトツ子の色以外満点です(しょうがないんだけどあんな論理的な回答なら最後まで分からなくてよかった)。
好きなんだけど、今の世の中だとこのくらいのはみだし方ってなんかふつうというか、アニメ好きな人にはカタルシスがちょっと足りなくて、昔のBS12で深夜にやってた不条理さのある洋画好きな人にはアニメってことで届かなそうで、人には勧めづらい。
この映画を思い返すたびに美しい絵を見たあとのような寂しさ、絵は外部でしかない疎外感が染みてくる。

物語の中心になるトツ子がキリスト教系の女学校に寄宿舎から通ってる時点で、吉田玲子さんの『草原の輝き』で読んだやつ! ってなって、ちょっとテンションが上がる。
一方で、寄宿舎を舞台にする物語って最近はあまり見かけないというか、規律が大きな力をもつ環境って共感されにくいかも。不登校だってそれなりに認められる世界になったし。
作中でルールを破る場面があるのだけど、キリスト教徒として十字を切る時と切らない時がある。切らない時はトツ子が「悪い」と感じていない、純粋な善意による行動なのだと思う。
トツ子は100%善意というわけではないけれども、学校でも寄宿舎でもちょっと浮いている。突然踊り出したり突飛な行動を取りがち。髪型も含めて大島弓子先生「ダイエット」の標縄福子を思い出す。

「ダイエット」は幼少期に複雑な家庭で食べすぎるようになった福子と、なかよしの同級生女子カズノコと、カズノコの彼氏のカドマツ君、と女女男という構図が同じ。
福子はダイエットしたらめちゃきれいになって、なぜかカズノコとカドマツ君のデートについていこうとする。カドマツ君にやさしくされた福子は太っても同じ待遇なのか確かめるためにまた暴食にはしる。
福子の長くて細い三つ編みがトツ子と一緒だったり、映画の方のきみとルイがちょいLOVEだったりと、個人的にはいろいろ共通点を見出してしまう。

映画は色だけじゃなく、円・球もモチーフになっていて、
・ドッチボール
・レコード
・惑星の授業
・バレエの回転
などなど、回転と衝突が至るところで示される。
あと、合宿の蝋燭シーンは、高島野十郞を思い出してこれもまた絵画の美しさが呼び起こされました。

総じてファンタジーなので、現実と付き合わせてリアリズムがないという人がいそう。
小さい街に書店がいっぱいあったり、自撮りしつつカセットテープに録音したり、ノスタルジアがふんだんにちりばめられた楽園の物語なので、浮世の細かいことはあんまりつつかなくていいんじゃないかなって。
苦悩はあっても挫折はない。
わたしは好きだけど、これがヒットするかな?という気持ちもある。

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