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茨城県自然博物館で開催中の「こけティッシュ 苔NEWワールド!」は控えめに言って最高です

コケのおもしろさに魅入られてから約5年、いまだにコケの何がいいか言葉にできない。自分の欲求としていろいろなコケを見たい、見分けられるようになりたい、コケがどのようなところに生えてどんな生態をしているのかを知りたい、のです。知ってどうなるものでもなく、シジフォス的な徒労でしかないのかもしれません。それでもそういう欲求がどうしても抑えられない。
この展覧会ではたくさんのコケを見ることができて、自然の中だけでなく人の生活にも利用されているコケの姿を見ることができます。博物学的な情報量が多い。展示を見るうちに、ますますコケの良さが言葉にできなくなったのですが、行く前より明らかにコケが好きになっていました。それはコケを愛する同行者のおかげでもあり、展覧会に関わった人たちの研究や努力が伝わってくる。
あと、パンフは必携です。絶対手に入れた方がいい。

立派なテラリウムがお出迎え。水槽下部の曲線が作るの難しいんだそうです

前半はレジンで保存されたいろいろなコケの標本が展示されています。前に八ヶ岳行ったときには観察できなかった、レア中のレア、ナンジャモンジャゴケもあります。思ってたより小さい。コケが小さいのは分かっているのに、博物館という建物の中で見るとひときわ小ささを実感します。
自然の中で見るときは、大きさももちろん、生息している場所や光や湿度や群落の大きさなど、コケ単体では見ていないせいかも。
ちなみに透明の樹脂レジンでの保存は、空気を抜くのが難しいらしく、ふさふさ系のコケがきっちり空気を抜かれているのはとてもすごいことらしいですよ。

日本とヒマラヤにしかいないナンジャモンジャゴケ

タイムラプスでコケがぐんぐん伸びていく様子や、ミズゴケの胞子体が音を立てて弾ける瞬間など、動画も盛りだくさん。

動物の糞や死骸にしか生えない変わったコケも特集されていて、先日富士山某所で発見したユリミゴケもいました。「知ってる知ってるー」ってなった。

こちらは標本
こちらが自然の中のユリミゴケ。時期的なせいか糞の臭いはしない

お忙しいところ、博物館の企画担当Uさんにもいろいろお話をうかがうことができた。行動力すごいなって感心したのが、ウイスキーを作るときのピートに本当にミズゴケが入っているのか確かめるために、ラフロイグを作っているアイラ島の工場から実際に使われているピートを取り寄せて、顕微鏡で確認されたという。

テラリウムゾーンもすごい。壁一面のコケ。
そしてみっしりと育ったコケリウム。わたしは絶対枯らすから手を出すつもりはなかったけど、こんなに美しいコケが家にあったら楽しいだろうな。

市販されているコケの本はそれなりに所有していても、知らないことばかり。最後に紹介されていた菌従属栄養植物のコケ「クリプトタルス」には、同行者一同めちゃめちゃ驚いた。ギンリョウソウなどの菌従属栄養植物は見た目が白くて葉緑素をもたず、光合成をしないことで有名です。ラン科に多い印象だったのに、まさかコケ植物でも光合成しないなんて、レゾンデートルの崩壊! 下のTweetの言うとおり、ブリリアントなチート植物です。

3時間じっくり見たけど、まだまだ見たりない。ずっと見ていたいし、なんなら住み込みでじっくり見続けたい。
こんな企画展が見られるなんてめったにないことです。コロナウイルスが落ち着いているとはいえ、外出が躊躇われる時期ですが、この展覧会だけはぜひ。できればコケに詳しい人を捕まえると、嬉々としてヲタ語りを聞かせてくれることでしょう。


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