🍀地獄からの脱却🍀

　私は、おかげさまで幸せに暮らしている。と同時に、この世界が現在のところ地獄でもあると思っている。誰かが理不尽に不本意な目に遭っている限り、ここは地獄であり続ける。太極図の陰陽が同面積なんだから仕方がないね、とはならない。陰の部分に陽を当てることができたらどんなにいいかと思う。全部陽でいい。

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　けれども、私が光源になれるかというと、残念ながらそれはできない。ただ、光る存在はいて、なんとか陰を照らそうと奔走していることは知っている。私のライフワークは、そういう陽の存在に出来るだけ多く気づくこと、彼らが立てる道標を追っていくことだ。

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　陰の多くは、食物連鎖の頂点に立つ種の不遜が生み出す。他種に不本意を強い続けるとき、因果は応報する。他種へのとめどない拘束と殺戮が、翻って合意殺人のかたちで同種を迫害し、態々授かった子孫に奈落を用意もする。
　ネグレストや幼児虐待が、複数のこどもがいる家庭でたった一人を対象になされるケースがあることが知られている。集団におけるあらゆる疎外も、生理と我々が呼んでいる抗いようのない現象が要因の一つとなる。
　それは、食の好みと同様だと陽の存在は云う。我々は何故、特定の種の葉や肉を好み、選んで食するのか。その結果、それらにどれほどの不本意を強いてきたのか。そして当然と我々が贖わねばならないその陰は、平等では決してなく、特定の誰かの身を捕らえて離さない。

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　この世界に、個体や血統で完結する陰など何処にもありはしない。

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　陽の存在は、食を、味覚を、決して否定しない。ただ種全体として、恣意ではなく思惟をもって臨むことで、偏らない贖いとともに、太極図の円をカプチーノのように混ぜながら、陽を注ぎつつ限りなく白に近いグレーに変容させていくという選択肢があることに気づいている。

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　細胞培養によって、食材の味覚と栄養素を再現する技術が磨かれつつある。
　また、有機質にも無機質にもなる前のエネルギーを、直接取り込む機能によって生きる人々や、その機能を封じていたロックを外す技術を伝達する人々もいる。それは使わずにいて忘れてしまっただけの、あくまで標準仕様なのだと彼らは云う。

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　それなら私はハイブリッドを目指そうと思う。楽しめるものは楽しみ、取り込めるものは取り込む。そして、人種差別同様、別種差別もしなくていい、飢えと狩りから開放された新しい他種間コミュニケーションを体験したいと渇望する。

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　多くの種の陽の存在が、ありとあらゆる場所で道標を掲げてくれている。私はスタンプラリーに参加して、彼らの足跡でゴールまでの枠を順当に埋めていきたい。進化か退化かに興味はない。ただ、もう充分だ、もう変わりたい、もう変わった世界が観える気がして現在を生きている。