言葉の壁

夕べ、あるハリウッド映画を見た。英語は分からないから、吹き替え版で見たが、あいにく、僕は、翻訳という文化を、あまり信用してないから、吹き替えだろうが、字幕で見ようが、セリフの一つ一つに。「本当に、そんな事、そんな風に言っているのだろうか?」と疑念を抱きつつ、真に受けず聞き流しながら、画面を追った。

英語と日本語という、違う民族の育んだ言語を正しく翻訳するなんて、出来る訳がない。英語と日本語で、大雑把な意味が同じ言葉でも、微妙なニュアンスは、かなり違う筈だ。例えば、英語のサンキューと日本語の「ありがとう」は、意味は一緒でも、ニュアンスは、決して、同一ではない。欧米は「個人主義」で、胸を張る文化の国だ、自分の非を認める事を嫌い、頭を滅多に下げない。と聞く。

一方、日本は、村社会だから、協調性を重んじ、すぐ頭を下げる。
そこまで、文化風習の違う民族の言語を完全に訳すなんて出来る訳がない。

話は変わりますが、僕は齢のわりには、若く見えるようで、「いつまでも、若々しくって、羨ましい」等と、言われる事がよく有る。誉め言葉のつもりだろうが、言われて、あまり嬉しい言葉ではない。「貫禄がない」とか「内実に乏しい」と、卑下されているように感じてしまい「お若いですね」なんて言われると「なめんじゃね~ぞ!」と思ってしまう。
「お若いですね」と言った方は「若い=良い事」というイメージから、「羨ましい」とおっしゃってくれたのだろうが、言われた僕は「若い=取るに足りない若造」とのイメージが有り、その価値観の違いや、イメージのギャップは、ほど遠いから、会話が噛み合ってない

価値観が合わなきゃ会話は成立しない。

例えば、同じ日本語でも、まだ日本が武士社会だった頃と、平和な現代では、「死」という言葉のイメージやニュアンスはかなり違う筈だ
切腹が当たり前の社会で「死ね」とは「腹を切れ」を意味するから、それは、規律・規範を保つ倫理観に基づく言葉だが、
現代ではその言葉は、倫理的にアウトだ。
そんな風に、言葉は、よほど整った条件の下でないと、意味を通わせない。
字幕を目で追ったり、
吹き替え聞いたりして、本当にその映画を理解出来ているだろうか?
言葉は、つくづく難しいね。

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