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【UPF大阪裁判】大阪地裁の判決を受けて

2024年3月4日
一般社団法人UPF大阪 代表 永井博

一般社団法人UPF大阪が、大阪の3つの地方自治体を訴えた民事訴訟の判決が2月28日、大阪地裁で下されました。富田林市議会、大阪市会、大阪府議会が、2022年9月から12月にかけて、「反社会的な」旧統一教会(世界平和統一家庭連合=家庭連合)およびその関連団体と関係を断絶する決議を採択したことに対して、UPF大阪は決議の取り消しと損害賠償の支払いを求めていましたが、決議の取り消しに関しては却下、損害賠償の支払いに関しては棄却という、大変遺憾な判決となりました。

私たちは訴えの理由として、これらの決議が①憲法と地方自治法が保障する請願権の侵害である②憲法の保障する思想良心の自由と信教の自由の侵害である③憲法と国際人権規約が規定する法の下の平等に違背する差別的扱いである④憲法の保障する適正手続きを欠いた不利益を伴う処分である⑤国際人権規約が禁じている宗教的憎悪の唱導(宗教ヘイト)である⑥「反社会的団体」というレッテルを貼ることによって社会的評判を貶める名誉棄損である――と訴えていましたが、いずれも退けられています。

私たちは、本件決議がそれ自体の事実上の効果によって、直接的に家庭連合及びその友好団体に対する人権侵害を惹起するものであると主張したのに対して、裁判所は、決議は政治的な意思決定にすぎず、法的な効果はなく、行政処分に当たらないため、取り消しの対象にはならないとして、訴えを却下しました。これは決議によって具体的な被害を受けた原告の立場に寄り添うことなく、きわめて形式的な法律論によって却下する血の通わない判決と言えます。しかし、より問題なのは、これらの決議によって私たちが名誉を棄損され、差別を受けた人権侵害について全く認められなかった点です。

私たちはこれらの決議が原告に対して、関係を断絶すべき「反社会的団体」であるという汚名を着せるものであり、名誉棄損の不法行為が成立すると主張しました。私人同士で争われる通常の名誉棄損訴訟においては、たとえ名誉を棄損する発言を行った場合でも、公益性が認められ、真実性か真実相当性が立証される場合には違法性が阻却されるという判断基準があります。しかし、大阪地裁はこの一般的な基準を採用せず、国賠法1条1項に基づいて、議員の職務上の法的義務に違背して当該決議がされたかどうかを判断基準とし、議会の権限を逸脱又は濫用したとは評価できないと判断したのです。そして、安倍晋三元首相が殺害されたことを契機としていわゆる旧統一教会問題が社会問題となっていた当時の状況に鑑みて、議会の政治的な判断には「相応の合理性がある」と評価しています。

これでは、一般的な私人間の名誉棄損とは異なり、国や地方自治体などが他者の名誉を棄損するような表現を行ったとしても、厳密な真実性と真実相当性のテストを受ける必要はなく、「相応の合理性」があれば違法性を阻却されることになってしまいます。その根拠となるのが、「議会の自律的な権能」や「議会の裁量的な政策判断」を尊重しなければならないという論理なのです。

裁判所のこの判断基準は一般人の感覚とかけ離れています。市議会や府議会などの公権力が行う発言は、私人であるマスコミや特定のジャーナリストの発言とは重みも影響力も違うのであり、それ以上の公正・中立性が求められるのが当然であるにもかかわらず、それよりも緩い基準になってしまうというのはまったく納得がいきません。

残念ながら民主主義は完璧な制度ではなく、「政治の暴走」や「多数決の暴力」といったことが実際に起こり得ます。安倍元首相暗殺事件以降の家庭連合を巡る状況は、まさにそうした異常事態でした。その流れにブレーキをかけ、法に基づく正義の判断をするのが司法の役割ではないでしょうか。少数者の人権侵害がなされているときこそ、多数決の原理から独立した司法がその意義を発揮するのです。

裁判所には、権力機関が私人の法益侵害を伴う逸脱した表現行為をしたときには、事後的にチェックする役割があるはずです。しかしこの度の大阪地裁判決は、憲法が期待するその崇高な任務を自ら放棄してしまったという点で、非常に遺憾な判決と言えます。

以上の点から、UPF大阪は直ちに控訴し、裁判所が本来果たすべき責務を全うし、立憲主義が回復されるまで断固として闘います。


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