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音楽コンテンツの寿命について考えてみた

 下記の記事を読んだ。そもそもコンテンツの命って何だろうと思ったのが最初の印象だった。ハードに関しては、物理的な劣化などが命=寿命とも考えられるが、ソフトに関しては、あまりピンとこなかった。
 しかし、コンテンツがこれまでどのように消費されてきて、今どのように消費されているかを考えてみると、コンテンツの命が何となく見えてくる気がした。

<ポイント>
 1.CD黄金期~買い切り型の消費~
 2.iPodの登場~アルバムの解体~
 3.YouTube、ストリーミングの台頭~再生回数という概念~

 まず、音楽の消費の歴史を少し紐解いていくと、19世紀末に蓄音機が発明され、そこから音楽が産業化したといわれている。その後、1910年頃にレコードが生まれ、1920年代後半にはラジオ放送が開始された。ソフトとして音楽はその命を伸ばしてきた。1982年にCDが生まれ、それまでのレコードからCDという風にメディアは変化した。しかしこれは単にソフトを定着するものが変わっただけで、音楽産業にとって革命的な存在だったのが、カセットテープポータブルプレイヤーの登場だ。ダビングして、いつでもどこでも音楽を聴くことができるようになったのだ。しかし、それで音楽産業が低迷するのではなく、むしろその影響により、CDパッケージがより売れる時代、所謂CD黄金期の時代に突入していったのだ。

 パッケージメディア= 
 「音楽を聴く習慣」と「音楽ライブラリー」の役割

 このように、パッケージメディアの【買い切り型】の消費が1980年代~1990年代に起きた。しかし、その時代も永遠ではなかった。その契機となったのが、2001年にAppleが発売した、iPodだ。iPodがこれまでの音楽産業にもたらした大きな革命のひとつに、アルバムの解体というのが挙げられる。これまでは、聴きたい音楽(ライブラリー)があった場合、そのパッケージメディアを変えて再生する必要があったが、iPodの登場で、「CD100枚を同時に持ち運べる」(当時のキャッチフレーズ)にもあるように、メディアを変えずにこれまで以上の音楽(ライブラリー)を聴くことができるようになった。そうなると、アルバム単位で聴くこと、最新の音楽を聴くことの習慣は薄れてくる。逆に、昔から好きな曲を聴き続けたり、ランダムに再生された中からのセレンディピティが生まれたりする。

 iPod登場以前=決められた音楽ライブラリーを聴く
 iPod登場以後=自分で決めた音楽ライブラリーを聴く

 しかし、それでもまだ【買い切り型】の消費は変わらなかった。CDパッケージでもiTunesでダウンロードでも、買い切りであることは変わらなかったからだ。そんな中、これまで以上に大きな革命が起きた。それが、ストリーミングによる再生だ。そして、その契機となったのが、YouTubeの登場だ。これまでは【買い切り型】での音楽ビジネスだったのが、ストリーミングになると【再生回数】が音楽ビジネスに直結するようになった。CDなりダウンロードなりで音楽を販売して終わりというビジネスから、いかにユーザーに音楽を聴いてもらう/再生してもらうかが音楽ビジネスの中心になってきたのだ。ユーザーにとっても、いちいちCDやダウンロードで買ったりはめんどうだったりお金を払うまででもと思ったり、だったらYouTubeでいいやとなってきた。それでも、音楽ビジネスとしては、再生されたら収益をあげられる構造になっている(そのためには、YouTube/Google ときちんと契約を結んだり、そもそもの再生回数により収益構造を理解する必要がある)。

 【買い切り型】の消費=1回で収益につながる
 【再生回数型】の消費=時間軸で収益につながる

 音楽の聴き方が変わってきて、音楽そのものの価値が変わってきた中で、音楽コンテンツの命=寿命を考えてみると、これまでのパッケージメディアとして売っていては、短い命となる(もしかしたら、命も宿らず消えてしまう可能性感じる)。一方で、過去の音楽にとっては「命の再生」のような時代になってきているのかもしれない。
 そんな中でも、やはり、ヒットコンテンツというのは、どの時代においても欠かせないものだ。では、どのようにヒットコンテンツを生み出すのか?それが、現在そしてこれからの音楽の聴き方、音楽の価値を考えながら、試行錯誤の中見つけ出していくことになるだろう。

 ヒットの創出は、昔より容易になった部分もある。
 しかし、ヒットの価値/定義は、昔よりも難しくなったと感じる。