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はじめに

軽貨物業を営む車両にとって、ブレーキは安全運転を支える最も重要なシステムの一つです。特にブレーキパッドは定期的な点検と交換が必要な消耗部品であり、そのメンテナンスを怠ると重大な事故につながる可能性があります。この記事では、ブレーキパッドの点検方法と交換手順について詳しく解説します。


ブレーキパッドの役割

ブレーキパッドは、ブレーキディスク(ローター)に圧力をかけて摩擦を生じさせることで、車両を減速・停止させる役割を果たします。ブレーキパッドが摩耗すると、ブレーキ性能が低下し、停止距離が長くなるため、安全性が損なわれます。

法律に基づくブレーキパッド交換の規制

道路運送車両法の特定整備

道路運送車両法の第七十八条では、特定整備について規定しています。特定整備は、安全に関わる重要な作業を指し、地方運輸局長の認証を受けた整備工場でなければ行うことができません。これには、ブレーキパッドの交換も含まれます。

参照:道路運送車両法 第七十八条 | e-Gov法令検索

車の所有者の点検・整備義務

一方で、道路運送車両法の第四十七条では、車の所有者は必要に応じて点検・整備をしなければならないとされています。この規定に基づき、車の所有者自身がブレーキパッドの交換を行うことも可能です。

参照:道路運送車両法 第四十七条 | e-Gov法令検索

自分でブレーキパッドを交換する際の注意点

専門知識と技術の必要性

ブレーキは車の重要な安全装置であり、正しく作動しなければ重大な事故につながる可能性があります。そのため、ブレーキパッドの交換を自分で行うのは、自動車整備士並みに専門知識を持ち、車のメンテナンスに慣れている場合に限られます。

ブレーキパッドの点検の重要性

  1. 安全運転の確保
    摩耗したブレーキパッドは、十分な制動力を発揮できません。定期的に点検し、適切なタイミングで交換することで、常に高いブレーキ性能を維持し、安全な運転を確保します。

  2. コスト削減
    摩耗したブレーキパッドを放置すると、ブレーキディスクにもダメージが及び、交換が必要になることがあります。ブレーキパッドの適時交換は、ディスクの寿命を延ばし、結果的にメンテナンスコストの削減につながります。

オートマ車のブレーキパッドが減りやすい理由

軽貨物業を営む車両において、オートマチックトランスミッション(AT)車の普及が進んでいます。かつてはマニュアルトランスミッション(MT)車が主流でしたが、近年ではオートマ車の需要が増えています。しかし、ブレーキパッドの視点で見ると、いくつかのデメリットも存在します。

エンジンブレーキの使用頻度が少ない

マニュアルトランスミッション(MT)車では、エンジンブレーキを多用することで減速することができます。しかし、AT車ではエンジンブレーキの使用頻度が少なく、主にフットブレーキに頼るため、ブレーキパッドの摩耗が早くなります。

停車時のブレーキ使用

AT車は、停車時にもブレーキを踏んで車両を停止させる必要があります。このため、信号待ちや渋滞時など、頻繁にブレーキを使用することになり、ブレーキパッドの消耗が進みます。

重量の影響

一般的に、AT車はMT車よりも重量が重いことが多いです。このため、同じ速度からの減速や停止時に、ブレーキパッドにかかる負荷が大きくなり、摩耗が進みやすくなります。

ブレーキパッドの点検方法

必要な道具と材料
ジャッキとジャッキスタンド
ホイールレンチ
作業用手袋
懐中電灯または作業灯

  1. 車両を安全に持ち上げる
    平坦な場所に車両を停車させ、パーキングブレーキをかけます。ホイールレンチを使用してホイールナットを少し緩めておきます。ジャッキを使って車両を持ち上げ、ジャッキスタンドで安全に固定します。

  2. ホイールを取り外す
    ホイールレンチでホイールナットを完全に取り外し、ホイールを取り外します。ブレーキキャリパーとブレーキパッドが見えるようになります。

  3. ブレーキパッドの厚さを確認する
    懐中電灯を使ってブレーキパッドの厚さを確認します。パッドの摩擦材が3mm以下になっている場合は、交換が必要です。また、異常な摩耗やひび割れがないかもチェックします。

タイヤ交換・ローテーション時のブレーキパッド点検の有効性

タイヤ交換やローテーションは、車両のメンテナンスにおいて定期的に行われる作業です。このタイミングでブレーキパッドの点検を行うことで、効率的にメンテナンスを進めることができます。タイヤを外す際にブレーキパッドが露出するため、追加の作業をほとんどせずに点検が可能です。

ブレーキパッドの交換方法

必要な道具と材料

新しいブレーキパッド
キャリパーピストンリトラクター(またはCクランプ)
トルクレンチ
ブレーキクリーナー
高温グリース

  1. キャリパーを取り外す
    ブレーキキャリパーのボルトを緩めて取り外します。キャリパーを取り外す際には、ブレーキホースに無理な力がかからないように注意します。

  2. 古いブレーキパッドを取り外す
    キャリパーから古いブレーキパッドを取り外します。ブレーキクリーナーを使ってキャリパーとディスクを清掃します。

  3. キャリパーピストンを押し戻す
    キャリパーピストンリトラクター(またはCクランプ)を使ってキャリパーピストンを押し戻します。これにより、新しいブレーキパッドが正しく取り付けられるスペースを確保します。

  4. 新しいブレーキパッドを取り付ける
    新しいブレーキパッドをキャリパーに取り付けます。高温グリースをパッドの裏側に薄く塗布し、異音防止とパッドの動きを滑らかにします。

  5. キャリパーを元に戻す
    キャリパーを元の位置に戻し、トルクレンチを使って適切なトルクでボルトを締めます。

  6. ホイールを取り付ける
    ホイールを取り付け、ホイールナットを手で締めます。ジャッキスタンドを取り外し、車両をジャッキで下ろします。最後にホイールナットをトルクレンチで適切なトルクに締めます。

  7. ブレーキの確認
    ブレーキパッドを交換した後、エンジンをかけずにブレーキペダルを数回踏んでキャリパーピストンを正しい位置に戻します。その後、低速で試運転を行い、ブレーキの効き具合を確認します。

まとめ

ブレーキパッドの点検と交換は、軽貨物業を営む車両のメンテナンスにおいて欠かせない作業です。定期的な点検と適切なタイミングでの交換を行うことで、安全運転を確保し、コスト削減にもつながります。日常的なメンテナンスの一環として、ブレーキパッドの管理をしっかりと行いましょう。

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