良い上司とは?

「理想の上司とはどんな上司ですか?」
よく巷で言われる言葉である。

自分にとって良い上司だったその人は、ものすごくいかつくて、ものすごく自由で、ものすごくわがままで、ものすごく繊細で、なおかつ押しの強い人だった。

大きな体に縦縞のブラックスーツを纏い、色眼鏡にアイパーヘアのどっから見てもサラリーマンには見えない外見とは裏腹に本当に素敵な上司であった。

この人の素敵なところは、なんといっても部下思いであったということ。
どんなに自分の部下が頼りにならなくとも、失敗しようとも全力で肯定してくれるのだ。まさに親が子にするようにである。

思い上がった態度をとったりする部下には、時たまものすごい雷を落として事務所が揺れるほどドスの効いた声で怒るのだが、その根本には必ず愛が感じられる叱責であったので、皆から愛される上司であった。

なにより、簡単なことを難しくネチネチ言う人種を嫌い、大変な状況に置かれればおかれるほど、明るく、簡潔にトラブルと向き合う姿勢が見事だったのだ。
難しいことを簡単に説明する天才でもあった。

ある時本社の総務部長から自分あてに電話があり、管理事務所が作成した書類が間違っていると言われた。この総務部長はネチネチネチネチ、たいしたことないことを難題のように説明しては自分がおまえらなんかより100段くらい上の立場の人間やねんぞ!俺は偉いねんぞー!ってのを言いたくて言いたくてたまらない、上司としては最悪のタイプの人だった。

はい、はい、と電話に向かって頭を下げながら謝る自分の姿を見ていた所長が、「ちょっと、unimam!電話変われ!」と言い出した。

「あー。やっぱり自分のミスやんな、絶対。どないしよ。所長も嫌味言われるんやろな、あの総務部長に・・・。」
暗い気持ちになりながら、「すみません。ではお願いします。」と所長に電話をまわした。

「もしもし?Oさんか?なんでっか?なんかうちのunimamがミスしましたか?ちゃんと確認したんでっか?ミスはうちがしたって証拠があっての連絡でっしゃろな?」

えー!!
驚く私に目配せしてみせながら、さらに彼はこう言い放ったのだ。

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