うえだくん

近所にあるコンビニにうえだくんという店員さんがいる。

彼は非常に機転の利く優秀なバイトくんなのである。

客が店に入った瞬間からの彼の動きは機敏そのものなのだ。

「いらっしゃいませー!」と言いながら、すでに右手は煙草の棚にかかっているのである。

私も夫も愛煙家なのだが、二人とも好みの銘柄が違う。


うえだくんは初めてこのコンビニに煙草を買いに行った日から
私の煙草、夫の煙草を記憶しているようで、その後いつ行ってもこの動作をしてすぐにレジをできるようスタンバイの姿勢を崩さないのである。

68番、42番と煙草に番号が付けられているのであるが、こちらが番号を言う前にすでにその位置でスタンバイしているのだ。

ある日夫が「ちょっと試してみるわー!」と言いながら店に入っていった。

いつものようにうえだくんは煙草の棚に右手をかけてスタンバイしていた。

いつもは68番の煙草なのにあえて違う番号を言ったらうえだくんはどうするかを見てみたいと前から言っていたのだ。

そこで夫が「61番1つ!」と言っていつもの煙草と違うものを注文したところものすごく悲しそうな顔をされたという。

「なんてかわいそうなことをおもいつくんや!性格悪いわ!」ドカ弁が夫にプンプン怒りの言葉をぶつけていた。

ドカ弁もこのうえだくんの大ファンでいつもチョコデニッシュとホットケーキはここで買うと固い決意をもって店に足を運んでいるのだ。

そんなわけでuni家では大絶賛のうえだくんの接客ぶりなのだが、先日ふらりとおひるごはんを買いに立ち寄ったときのことである。

いつもように店に入った瞬間スタンバイするはずのうえだくんがなにやら深刻そうに店主の奥さんと思われる人と話し込んでいたのだ。

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