やるんかゴラァ!の夢
先日、「先生って?」で書いた「夢」の書のお話の続きというか、結果報告である。
本日「夢」の書をご依頼頂いた企業様の30周年記念式典が兵庫県内で開催され、私もお招き頂き、式典に出席させていただいた。
社長さんのお望みのイメージの「夢」がどのようなものであるのか分からず、4種類のパターンの字体の「夢」を書き、お選び頂いたのがこちらの書であった。
やるんかゴラァ!の荒々しい野性的な書をお選び頂いたのが意外であったが、今日、式典での社長さんのご挨拶、各関係者様のご挨拶、社員の方々の様子を見ていて納得したのだ。荒々しいまでの勢いで筆を激しく払って書いたこの「夢」を選んで頂いたことに。
会社設立30周年を迎え、もっともっと攻める所は攻めの姿勢で挑み、守るべきものはしっかりと守るという熱い理念をお持ちであることがよくわかったのである。
会社の歴史などをスライドをもとに振り返りながらご挨拶される社長さんの姿は、この会社を背負ってきた、その重みと誇りを存分に伝えるのに説得力がおありであった。とても実直で誠実なお人柄を感じた。
何より、株主様、社員、社員のご家族の幸せなくしては、よい仕事は出来ず、よい企業とは言えないという一貫した姿勢がとても心を打つお話であった。
社員の方々も、この会社を愛しているのがよく分かり、とても和気あいあいとしていて、見ているだけでこちらも幸せのお裾分けを頂いたような良い気分であった。
その時である。
司会の綺麗な女性がこう言われた。
「ただいまより、当社役員、ご来賓の皆さんをご紹介いたします。」
そして、役員の皆さんとその奥様方が順次紹介されていき、続いて来賓の株主様のご紹介が済んだ。
へぇー。なんか「半沢直樹」の世界みたいやな。ご挨拶もご夫婦同伴、来賓の株主様もご夫婦同伴の出席なんや。みなさんすごくお金持ちの方って感じ。お着物とかブランドもののスーツとか質のよい生地の上品なものを着てはるなぁ。
そんなヨコシマなことばかり考えながら、その方々のお姿を拝見していた自分。
そんなときである。
「本日、大変急なお願いにもかかわらずお忙しい中ご出席くださいました、書道家の雲泉先生でございます!」と突然紹介されたのである。
えー!!!全く聞いてへんよ!ど、どないするねん!
めっちゃたくさんの人の視線が一気に自分に集まったのであった。
仕方ない。このおめでたい雰囲気を損なってはあかん!
その場に立ち上がったのである。近づいてくるカメラ、ビデオカメラが眩しい!美人司会者の方はさらにこう続けられた。
「雲泉先生には本日の式典のプログラムに書を書いていただきました。
8歳のころより書を学ばれ‥‥若干二十歳で書道師範におなりになった精鋭の書道家でおられます。現在はインターネット上のクリエーターSNSサービス、noteを中心にご活躍中でございます!」
ドヒャー!えらい売れっ子さんになってる!noteの書道家って!
noteを知らない方も多いのだろうが、皆さん、プログラムの背表紙一面に書かれた「夢」の書の下に書かれたnoteのアドレス、アカウント名unimamを雲泉先生プロフィールで見てくださっていた。
noteをたくさんの方々に告知できたことが嬉しかったが、自分自身については身の程よりも大それたご丁重なご紹介を受けたことにより、恐縮しきりであった。
その後は会食に切り替わり、美味しいごちそうが次々に運ばれてきてもう幸せいっぱいで食べて飲んでに夢中になっていたのである。
すると、先ほど紹介されていた役員の方が変わる変わるお酒をつぎに来て下さり、ご丁寧に書の感想や、感謝の気持ちを伝えてくださるのだ。
「そんなそんな!ありがとうございます!恐縮です!」
こればかりオタオタと繰り返していた自分。
すると、お一人の方がこうおっしゃったのだ。
「何枚か書いてくださったあの書ね、僕は一番にこの書がいいと言いました。社長、専務にも見せたら全員この「夢」の書がいい!と言ったんです。」
なんと!役員の方全員が、この、やるんかゴラァ!の夢を選んでおられたのであった。
なんだか嬉しかった。
自分の持ち味の筆は、荒々しい情熱的な運筆である。
まさに、やるんかゴラァ!の勢いで一気に書き上げるのが自分の姿そのものなのだと思うからである。
目は口ほどに物を言う、と言われるが、
筆はその人以上に物を言う、とも言える。
いくらええ格好しようとも、楚々とした姿を演じようとしても、自分の魂が入った筆が作品全体に乗り移り、ペラペラ全部喋ってしまうのである。
「この人なー勢いだけで人生乗り切ってきてるねん。慎重に、丁寧になんてこの人には無理なんやわー。石橋叩いて渡るなんてアホくさ!叩きすぎて壊れたらどないすんねん!ちゃーっと渡ったもん勝ち!はよはよ!みんなも一気に行きまっせー!って感じの人です、この人は。」
例えばこんなふうに。
だからこそ、その魂を選んでいただけたことが嬉しかったし、何より役員の皆さんが30周年に向けてふさわしいと選んだ書が、全員一致でこの書だったということに、皆さんの魂、心の繋がり、意思疎通の完璧さを感じたからである。
この会社は50年、100周年をいずれ迎える会社にきっとなる!
そうしみじみ感じた瞬間であった。
本日はとても素敵な一日を過ごせたおかげで、気持ちの良い夢を見れそうである。
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