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教習所

自動二輪の免許を取得して随分経つ。

教習所では実に様々な顔ぶれの方がいた。

強面な方、ケバいおねえちゃん、お上品な女性、チャラい学生、おじいちゃん。そしてよくわからない先生風な人。

特に印象に残っているこのよくわからない先生風な人のことを書こうと思う。

なぜかわからないがこの先生は教習所のいろんなことにやたらと詳しい。

教習所のスケジュール、コース上での注意点などやたらと色々アドバイスしてくれるのである。

実に顔が広く、教習所内では皆に声をかけ、幅広いジャンルの人たちと親しそうなのであった。

自分はといえば、当時は遊びに夢中で教習所の予約をキャンセルしまくりであった。しかしバイクには乗りたいので投げ出すわけにもいかず、ぽちぽちと通っていたのだった。

そんなわけで教習所で出会う顔ぶれはどんどん変わっていったのだが、先生だけは相変わらず教習所で見かけたので、この先生、一体どんだけここに詳しくなるつもりなんやろと自分のことは棚に上げて思っていたのである。

それから随分経ってようやく試験の日がやってきた。

教習所にはなんと先生がいるではないか!

「あ!unimamちゃん久しぶり!」

「あ、お久しぶりですねー。」

挨拶を交わし、まずは筆記試験を受けたのである。

その後は実技試験であった。

コースに出てバイクの前に並ぶ。
すると先生が隣にやってきて、ここのカーブは脱輪しないように一つ目のパイロンをスムーズに抜けるのがポイントだとか、一本橋は視線を遠くにおき、状態は真っすぐ保つのがコツだ、そうすれば落ちずに渡りきれるとか詳しくアドバイスしてくれるのである。

そのアドバイスをできるってことは初めての試験ではないんやなってことはわかったが、はい!ありがとうございます!と素直にアドバイスを聞いた。

先生のアドバイス通りにバイクを走らせると、なるほど、脱輪せずに無事試験は終了した。

次は先生の番である。

先生の試験がスタートした。S字コーナーに差しかかった。一つ目のパイロンが肝心やねんなと思いながら見ていた。

ところが。いきなり一つ目のパイロンをなぎ倒し真っすぐにコーナーを直進していったのであった。

え!先生!どないしたんや!?ビックリしたが、次に先生は一本橋の前にバイクを停車して準備段階に入っていた。

視線は遠く、状態は真っすぐやな!とまたアドバイスを思い出しながら見守っていた。

発進して橋に乗り上げた途端脱輪し、斜めにバイクは突き進んでいったのだ。

なぜや!?先生!

結局先生の実技はえらいこっちゃな状態が続き終了したのだった。

合格発表は昼食を挟んで午後からだと言われ、とうしようかと思っていたらちょっと落ち込んだ感じの先生に声をかけられた。

「unimamちゃん、一緒にご飯食べにいこう!」

一緒に教習所近くの喫茶青山に行き、サンドウィッチとアイスコーヒーを頼んだ。

なんか気まずいやん。思いっきりあかん感じの試験の後で、そんな親しくもない先生とランチすることになるなんて。

「私たぶんまたあかんわぁ」サンドウィッチを食べながら先生が呟いた。

大丈夫ですよ!なんて見え透いたウソは言えず、

「あー、私は筆記があかんかもしれませんわぁ。」と返事をしたのだった。

すると先生はこう答えたのである。

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