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野外フェスでのトイレの混雑解消に挑戦

だれもが安心して外出できるようにするためには、どんなトイレ環境が必要なのかを日々考えているNPO法人日本トイレ研究所の加藤と申します。

今回は、apbankfesという野外フェスでのトイレの仕掛けについてお話します。
ap bank fesは、音楽プロデューサー小林武史氏と、Mr.Childrenの櫻井和寿氏を中心に結成したBankBandがゲストミュージシャンたちを迎え入れるスタイルをメインとした野外ライブです

フェス_看板の写真

では、本題に入ります。
野外フェスに限らず、屋外イベントのトイレって混みますよね。多くの人が短い休憩時間に一斉にトイレに行くわけですから、混むに決まっています...しかも、みんな一刻も早くライブエリアに戻りたいわけですから、トイレまでの道中も大混雑です。

日本トイレ研究所がap bank fesに参加しようと思い立ったのは、フェスでごみ問題に取り組む方の「野外フェスのトイレって混雑するんで大変なんですよー」という一言がきっかけでした。ap bank fesの会場では、ごみの分別やオーガニックな食事、グリーンエネルギーなど、さまざまな取り組みがされていると聞いていましたので、トイレという切り口からも何か協力したいと思い、「トイレナビゲーション」という活動を提案しました。

トイレナビゲーションとは?

トイレナビゲーションというのは、フェス会場で「トイレ混雑の解消」「トイレのマナーアップ」「トイレでメッセージを伝える」という3つの仕掛けを行うことです。
今回の記事では、「トイレ混雑の解消」と「トイレでメッセージを伝える」の取り組みについて説明します。

トイレの混雑解消

仮設トイレの混雑を解消するために行ったことは、「一か所にトイレを並べる数はだいたい10棟まで」「並び方はフォーク式」「空いたトイレに誘導」です。
仮設トイレって、一列にずらーっと並べて置かれることが多いですよね。でも、これがよくないのです。
待っている人がトイレを認識できるのって、多くても10棟ぐらいです。それ以上になると、奥の方のトイレは使っているのか空いているのか分からないという意味です。しかも、トイレを待つときは友達と話したり、スマホを見ていたりしているので、なおさらです。

そこで、仮設トイレを原則10棟以内にして配置することにしました。やむを得ず10棟以上並べる必要がある場合は、10棟と10棟の間にスペースをつくり、それぞれのかたまりごとに並んでもらうようにしました。
並び方は、フォーク式です。すべての仮設トイレの前にそれぞれ並ぶのではなく、一列に並び、空いたトイレに1人ずつアプローチする方法です。コンビニもATMも同じですね。この方が、整列しやすいのと、「なんで私の列は遅いの!」という苛立ちを減らすことができます。また、遠くからでも、子ども優先トイレがすぐに分かるように、トイレの屋根にフラッグを取りつけたりもしました。

そして、最後は「空いたトイレに誘導」です。1つ目で説明したとおり、待っている人の多くはトイレのことをしっかり見ていません。ですので、大雑把に言うとトイレの稼働率は半分くらいなんですよ(笑)。つまり、10棟のうち5棟は、使われていないことに気づかれていないのです。仮設トイレのドアは、常に閉まっている状態なので、気づきにくいということも原因です。
そこで、私たちはトイレナビゲーターという名のスタッフを配置しました。トイレが空いたと同時に「こちらのトイレ、空きましたよ、どうぞー!」と声掛けを行うのです。

トイレナビゲーター


するとどうでしょう、ものすごい勢いでトイレ待ちの列が解消しました。何もしないときに比べるとおそらく3倍ぐらいのスピードだったと思います。
来場者が「今年のフェスってトイレ混まないけど、何でだろう」と話しているのを現場で耳にしたときは、うれしくて涙が出そうでした。あと、ズボンの後ろポケットに携帯を入れている人が多いので、落とさないように声掛けすることも感謝されました。

トイレを案内するだけで、めちゃくちゃ感謝されるんです。なんだか素敵ですよね。

トイレでメッセージを伝える

フェスに来る人は、かならずトイレに行くと思いますので、トイレはとても大切なコミュニケーションの機会です。しかも、トイレ内は無機質な空間の場合が多いので、メッセージを読んでくれる可能性が高いと思います。
2018年は、トイレの大切さを知ってもらうことを目的として「健康」「マナー」「環境」に関する8 タイプのメッセージを作成しました。

ap bank_メッセージカード

日本全国では、お祭りや花火大会、マラソン大会など、たくさんのイベントが開催されていますが、トイレ不足な場合が多いと思います。トイレは来場者サービスの基本であり、みんなが安心して使えるキレイなトイレを提供することは主催者にとって大事なことです。
今は、新型コロナウイルス感染症の影響で、多くのイベントがやむなく中止となっている状況です。これからは、密集を避けるための混雑解消はもちろんのこと、トイレの衛生管理使用後の手洗いの徹底も重要になると思います。
安心して使えるトイレ環境づくりを目指して、トイレナビゲーションもアップデートしていく必要があります。トイレをキレイに保つためには、使うひと全員の協力が必要です。キレイのバトンをぜひ!

#イベントのトイレ #トイレの混雑 #混雑解消

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