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仕事ができるほど見えなくなる=意識されなくなる障害

在職中のADHD(注意欠陥多動性障害)のAさんから「入社した当初、人事部と配属先の方々から『マルチタスクが苦手で、口頭で長い説明をされると抜け漏れることがあるという障害特性は理解したので業務は一つ一つ覚えると良い』と言われたけど、半年ぐらいが経過したあたりから『順調に仕事を覚えてきたから、もう少し担当を増やしますね』と苦手なマルチタスクでなければ対応できない業務範囲とボリュームを任されるようになりました。苦手な仕事が増えたことでミスも増えると『もっとミスをしないように注意して下さい』と指導されることが苦しいです」と相談がありました。

・障害者の受け入れ経験が少ない会社・職場
・そこに初めて、あるいは久しぶりに配属された障害者
・その障害者が、外見では障害が分からず、仕事も割とと出来る

こんな要素が重なると、別の障害を持った方…例えば軽度聴覚=難聴で「口話が出来る、1対1の日常会話は聞き取りにくいけれど、読唇も併用して普通に会話ができるが、会議では誰が発言しているか分からず参加は出来ないため議事録を後で配信して欲しい。また電話も聞き取りミスが多いので(プライベートであれば電話で話しているが)業務の電話は避けるように配慮を求めて、会社&職場も了承の上で入社したにもかかわらず、職場に慣れて仕事も割と任されるようになると、周囲の方々が、その聴覚障害者に対して「会議にも参加して下さい」(議事録は不要ですよね)とか「仕事の電話も出て下さい」(電話で話している時がありますよね)と要求されて「採用選考と入社配属の最初の時に、障害への配慮として会議と電話は避けることを了承されたのに、どうして・・・」と相談されたケースがあります。今回は精神障害(ASD)の方ですが類似したケースと言えます。

このような場合は、現場で障害者本人がひとりで頑張って「私は障害があるので出来ないことやミスが生じることもあります」と上司・先輩・同僚に訴求しても、「大丈夫、頑張ればできるよ!」と悪意なく励ましてくるケースが最悪のパターンで、人間関係の良い会社・職場ほど、この悪いパターンになることが多いです。この場合は、仮に障害への理解&配慮を周囲が(入社時を)思い出して対応が少し改まっても、時間の経過と共に、そして障害者が担当する仕事が順調である度に、何度も再発します。

従って、順調に働く障害者の周囲の方々が「そういえば、Aさんは障害者雇用で、配慮や理解が必要な方だったね」と定期的に再認識をして頂くことが大事であり、それを障害者本人が上司や人事に相談して「職場MTG」などを行い、関わる方々に自分の障害を理解し必要な配慮を繰り返し意識してもらうことができれば、ひとまずOKだと思います。、もし一人では無理だと思う場合はAさんが大畑に相談したように社外の支援者に協力してもらうことが大事です。

別件ですがASD(自閉症スペクトラム障害)の若い方から「先輩が優しく何度も注意をしてくれることが申し訳なく、今までの3倍も5倍も見直し・注意を払って、でも急いで仕事をして、毎日ヘトヘトに疲れてベッドに入るけど、ミスをしてるのでは?と心配で眠れなくなり、徐々に寝不足となり食欲も減退して…こんなに無理をして一生懸命に仕事をしても、それでもミスが発生することが悔しいです。どんなに努力してもミスをゼロにできないことが自分の障害特性であり、ミスが起きる前提で(障害理解をして頂き)発生したミスを周囲の方々が早めに発見・修正できる体制を整える(障害への配慮)と入社時に人事と配属部署の方々から言われたけど、それに甘えることなく自分も頑張ろうと必死に努力した結果が体調を崩して休職・退職となり…悲しさ、悔しさ、諦めなどグチャグチャな気持ちです」という振り返りをされたことがあります。

「どんなに努力しても、健常者とは違う障害の影響で治ること・改善することが困難なことがある」それを、健常者は悪気なく「努力すれば…」とか「頑張れば…」と言うことがあります。だから、障害を持つ方々も「そういうことは、どこの会社でも起こり得る」と理解したうえで、双方円満なコミュニケーションが継続する方法を「継続する」ことが大事であり、入社時だけの一時的な理解にならぬよう、必要であれば四半期毎など定期的に相互理解をする機会を作る、あるいは情報発信をすることが重要です。

仕事が順調にできていることは嬉しいことですが、順調にできるほど障害が意識され難くなるのは困ったことです。そして障害については無意識に、本人(障害者)の成長を期待して「やればできる!」と障害で出来ないことを求める悪意のない上司・先輩と、順調に仕事をしているように見えるけど他人には見えないところで健常者の何倍も努力し集中して疲れ切った障害者がいる場合、その職場の風通し・コミュニケーションは非常に悪いと言えます。悪い上司・先輩では無いから…と自分(障害者)だけが苦労するのはやめて、苦しい時・困った時は、遠慮なく相談して下さい。

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