プロ野球のFA制度について考える

原監督が「FAの人的補償を撤廃しないといけない」と吠えております。

「なんのメリットもない。プロテクトは28人しかいない。これは、なくす必要ありますよ。暗いニュースになる。FAっていうのは明るいこと。それを暗いニュースにさせてしまう」


何を言ってるか、簡単に説明すると、

FAで広島カープから丸を獲ったら、巨人は広島に長野を獲られてしまいました。これを「人的補償」というのですが、人的補償として獲られる選手は「プロテクト枠28人」以外から選ばれます。28人というと一軍ベンチ入り人数25人、一軍登録人数29人ですので一軍だけ守ろうと思えば長野が獲られないようにできたわけですが、ドラフトで獲ったばかりの1年目や2年目の成長過程の選手も守らなくてはならないから、ベテランをプロテクト枠から外したわけです。「広島は貧乏だし若手育てるチームやから長野や内海を外しといても獲らんやろ。」と高を括っていたんですね。それで去年は長野と内海(炭谷の人的補償で西武へ)を見事に獲られちゃったわけです。過去には広島に一岡、ヤクルトに高卒2年目の奥村と若手がぶっこ抜かれているんです。

原監督はこれが暗いと言っているんです。

原監督はFAを獲る側なので、人的補償を撤廃して!と。もしくはプロテクトを増やせ!と言ってるんですね。わがままですよね。獲られる球団はどうしたらいいんですか?(長野、シーズン終盤四番打って、巨人広島お互いよかったじゃないですか。)


日本プロ野球のFAの場合、一流選手の権利です。一流選手が権利を行使して各球団と交渉できたらお金持ち球団が有利に決まっているんですよね。どう考えても。それで、人的補償がないとなると戦力が偏りすぎる。


偏らないように、今のプロ野球は「一流選手がFA権を行使する」から「若手の有望株を人的補償にして育ててね」と人的補償という制度を設けています。一岡がカープで活躍したり、奥村がヤクルトでショートで出ていたりするのを見ると本当に人的補償で行ってよかったね、と思います。だから決して暗いってわけじゃないと思うんですが。

どこが暗いことやねん。まぶしい。明るすぎる。



ちょっと脱線しますが、僕は元々「株式会社プロ野球」なのだからリーグ全体で儲かるようにしなきゃいけないという考えを持ってます。その大前提が戦力の均衡化なんです。オリックスのファン、ヤクルトのファン増えますか?勝たないと増えないんですよね。メジャーリーグは全然勝てない球団もあるけど、収益分配してるんですよね。利益の20%を課税してそれを低いところに分配する。あと、放映権も全国放送は分配するなどしてます。それと総年俸の高い球団にはぜいたく税を課すなど、戦力の均衡化を当たり前のように行っています。それで勝てるかはわからないけど球団は頭を使うようにはなる。


「SBOをBSO」「申告敬遠」「リプレー検証」などここんとこアメリカに倣ってる日本プロ野球ですが、「メジャーリーグのFA」を少し見てみてはどうか?メジャーリーグのFAはFA宣言とかありません。超簡単に説明すると

一軍に6年いると勝手にFA権取得者になります。FA権取得者になったらシーズンが終わってすぐに元球団と再契約しなければ自由契約。つまり他球団と自由に交渉できるようになります。FAで獲られちゃった球団は補償として移籍先の「ドラフト指名権」をもらえます。つまりドラフト一位指名が二回できたりするわけです。ヤンキースは有望選手獲れないから育たないですよね。ここ10年で生え抜きはガードナーしかいません。巨人も人的補償が嫌なんであればドラフト指名権を譲渡するやり方も一つあります。


ちなみに、よくシーズン途中に、最下位球団のメジャー6年目28歳、脂乗り切ったエース級の投手が、優勝争いしてる強豪球団に複数名の若手マイナー選手とトレードされたりします。一見、なんでやねん。と思うんですが、最下位球団としたら6年目のエースはシーズン終了後FAになるので「再契約するにも年俸が高騰する。だからトレードで高額年俸をカットして若手マイナー選手と交換して来季の戦力を育てよう。」という思惑があります。優勝争いしてるトレード先は「今年優勝や!優勝するにはもう一枚必要や!」とエース級は喉から手が出るほどほしいのでお互いいいトレードなんですよね。(数年前にダルビッシュがレンジャーズからマイナー3選手と交換トレードでドジャースに移籍したのはそういうことです。そのあとすぐFAになってカブスに移籍しました。)


いきなりシーズン途中でエースが移籍するんです。こういうのが日本で観られてもおもしろいですよね。


さらにメジャーリーグは普通のドラフトとは別に「ルール5ドラフト」というのがあります。「再分配ドラフト」と考えるとわかりやすいのですが、マイナー(2軍)に4.5年いるマイナーリーガーたちがこの再分配ドラフト対象選手になります。飼い殺しにならないように選手をシャッフルします。これも自動的に権利が発生して各球団プロテクト枠40人に入れとかないと再分配ドラフトで獲られちゃいます。プロテクト枠が多いように思えますが、メジャーリーグは5軍まであります。

このドラフト指名権譲渡、再分配ドラフトは、これが日本に馴染むんじゃないかと思います。(再分配ドラフトに関しては今選手会が動いているという噂を耳にしました。)


原監督がよくないという「人的補償」という言葉、たしかによくないですよね。そこだけはよくわかります。なのでドラフト指名権で補償するのであればその問題出てきません。プロテクト枠の少なさも新人を守りたいという思いからでしょうから「入団後〇年未満は指名できない」として、その分を再分配ドラフトで選手の流動化をはかるのがよいのかなと個人的には思います。


以上、ダラダラと書きましたが日米FAの違いと、戦力の均衡化が行われない日本プロ野球の話でした。



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