「川崎へはどっちだ」。

ずっと昔の朝、JR南武線の登戸駅上りホームに居たら、白い髭を蓄えた男性の外人さんが1人で周りをキョロキョロしていた。何か困っているようだが、どうしたものかな、と躊躇していると彼はサラリーマン風の日本人男性をつかまえて英語で質問していた。

簡単な英語だったので、質問の意図はそばで聴く自分にも判った。要は、「川崎へ行く電車はどっちだ?」。
登戸駅上り線ホームは、2本ある。中洲型で、右側には当駅始発の折り返し電車が停まるから、時間に余裕があればこちらで待つ方が座れてラクチンだ。左側には立川方面からの乗客を満載した電車が着くから、本数多いものの車両内は殺人的な混雑具合がこの先も続く(特に朝は)。そうした事情から、右側ホームに並ぶ人の列が長く、左側から右に乗り換える人も多いので、この景色がまた外人さんを不安にさせたらしかった。

さて、もし自分が尋ねられていたら、これだけの説明をできる英語力なんて、全くないぞ!自分だったら、えーと、えーと…。
なんて考え始めた刹那に、件のサラリーマン先輩はさらりと一言、「Both one.」とまずシンプルに答えてから、一呼吸置いてその後何か説明を付け加えてる様子だった。

私の思考は遮られた。何て鮮やかなんだ!「Both one.」!そうか、そんな簡単でいいのか。そうだよな、彼の外人さんはどっちかが川崎じゃない何処か別の目的地へ行ってしまうかも知れないと疑って、「どっちだ?」と訊くんだから、先ずは「どっちも」だよな。
「始発電車」は英語で何だっけ??とか考えようとしてた自分がバカみたいw。

勉強になった!知らない人だけどサラリーマン先輩、ありがとう!
…と思って今までずっと記憶に残ってる。でも「Both one.」ってフレーズに限って言えば、その後の20年で使う機会は1度もないww。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?